今年の話題作であり、全米2週連続No.1を記録した映画『ブレット・トレイン』が、本日9月1日(木)よりついに日本公開となる。先日、公開に先駆けて監督&キャストが来日。今回、殺し屋タンジェリン役のアーロン・テイラー=ジョンソンと、何かと“運命”を語りたがる剣の達人エルダー役の真田広之、そして監督のデヴィッド・リーチにインタビュー。
『ブレット・トレイン』あらすじ
伊坂幸太郎の小説「マリアビートル」を映像化した本作。世界一不運な殺し屋レディバグが請けたミッション、それは東京発の超高速列車でブリーフケースを盗み、次の駅で降りること。簡単な仕事のはずだったが、次から次へと乗ってくる身に覚えのない殺し屋たちに命を狙われ、降りたくても、降りられない! そして、乗り合わせた殺し屋はレディバグ合わせて10人。しかしそれは、偶然ではなく仕組まれた罠だった。
――本作はなんといっても、それぞれのキャラクターに魅力があると思うんですが、演じるにあたり、キャラクターを作るにあたり、力を入れた部分を教えてください。また、演じるキャラクターのファッションポイントを教えてください。
真田:エルダーは原作と少し違い、アレンジが入っています。復讐劇が加わっているんですけども、アクションとコメディ、そこに家族の人間ドラマが深く関わっており、その点を大事にしました。あとは監督の指導のもと、本能に従って演じました。衣装に関しては、和洋折衷というのがポイントです。ジャケットを日本の羽織風に作ってみたいと監督から話を聞き、衣装合わせで色々意見を交わしたりし、楽しい行程でしたね。
アーロン:演じていて、すごく楽しかったですね。まず脚本を読んで、キャラクターがその脚本から飛び出るような印象がありました。それぞれのキャラクターがド派手に描かれていて、リアルな世界よりすこし大袈裟にしたような感じになっているのが魅力だと思います。
僕が演じるタンジェリンと彼の相棒となるレモンはスーツを着ているキャラクターですが、タンジェリンの場合は、かなり派手に自己アピールするヤツなので、3ピーススーツは着ているんですけども、スタイリッシュだけでなく、お金を持っているけど使い方をわかっていない少し成金的な風貌となっています。
そういうふうに決め込んでいるタンジェリンだけど、ストーリーが進むにつれてどんどん闘いが増し、シャツもめちゃくちゃになったりして身体のタトゥーも露わになる。そこから彼の歴史も垣間見れたりするんです。キャラクターを語るには衣装だったり、小道具が欠かせない。スタッフが用意してくれたものを僕は使って、役に入り込む。そして、撮影が終わったら、役を脱ぎ捨てる感じです。脱ぎ捨てないと、奥さんが家の中に入れてくれないので(笑)、脱ぎ捨ててプライベートと切り替えています。
監督:僕は観客が作品を見た時に、現実逃避できるようなクレージーな旅を映画と共にできる作品にしたいと思い、こだわりました。
衣装とメイクに関しては、素晴らしい役者と一緒に考えながら、ちょっと誇張した形で作っていきました。それは世界観と同じですよね。楽しいんだけど、ちょっとポップなところもあって、衣装もアイコニックなものになってればと。コスプレとかしてもらえたら嬉しいなと思っています。キャラクターのメイクと衣装というのは、重要な部分だと思っているので、映画のスタイルを決める上でも、重要なものとなっていました。
――監督にお伺いします。超高速列車という狭い空間の中で、どのようにして迫力満点の画に仕上げたのでしょうか。過去のインタビューで「自分がそこにいたいと思うような世界観を作り上げることは楽しかった」とおっしゃっていましたが、それを叶えるためにご自身がスタントをされていたという経験から活かされた点などありますか。
監督:アクションということであれば、ヒロ(真田)も、アーロンも長くやってきているんですよね。だから、2人もよく知っていることではあると思うんですが、制限があるということは逆に強みなんです。今回は箱のような形のセットで、アクションをする場合はどういうふうに動けば良いのだろうか、この中でどうやったら良い画になるだろうかと解決策もクリエイティブに考えるんです。それは製作において楽しいところでもあって、そういう制限があったころからこそ、静かにしてなきゃいけない車両であったり、モモもんの車両が生まれました。
というのは、モモもん自体がどんな車両があったら面白いのかって考えた時に、マスコットキャラクターを作ったら面白いんじゃないかというところから生まれてきてるんです。そして、そのキャラクターで誰かが誰かを殺したら面白いんじゃないかって。
なので、制限されているからこそ、面白いコレオグラフィーがあの生まれ、そしてベターなものも作れたんです。それを実用的にどうやって作り出すかっていうことに関しては、スタッフが天才です。しっかりと1つの電車であるとし、その中で幻想的な空間をキープしながら作り上げました。
――出演しているお二人にお聞きします。狭い空間だったからこそ大変だったことや意識した点があれば教えてください。
アーロン:今回は限界を意識するというよりも、そこに用意された環境を使って、思いっきり演じてやろうという気持ちで臨みました。閉所恐怖症的な恐怖感を煽ったり、スピード感を出すということが大事だと思ったから、セリフも素早く発するようにしました。そして、いつもアドレナリン全開の状態。そういったものが観客に伝わるようにと思いながら演じました。
また、モモもんデザインのようないろんな種類の車両があって、それぞれの車両によって態度を変えるようにも意識しました。例えば、静かにしなければいけない車両では、いかに相手に音を出させるか、声を出させるかってところが肝になる。そういうところが笑いを誘うんです。
ブラッド・ピットとの共演シーンでは、色んなアイデアを出して、アドリブを利かせるように試行錯誤しました。お菓子などを積んだカートを挟んでのアクションでは、わさびを相手の目にこすりつけたらどうだろうかとか、お箸を鼻の穴の中に突っ込んだらどうだろうかとか、ハンドタオルを相手に向かって投げたりとか、アイテムを使ったかと思えば、相手に平手打ちを食らわせたらどうだろうかってね。アイデアを出しながら作り上げていきました。それ以外にも車外へ蹴り飛ばされるシーンもあって、送風機を回しながらものすごい風を受けながら演じていました。どれも楽しい思い出だ(笑)
ただ、アクションを意識しながらも、なぜバラバラな人たちがこの新幹線に集まったのか、一緒に乗っているかという物語の大きなテーマも意識していました。どういった運命のいたずらが働いてのことなのか考えながら演じていたよ。そうやって、アクションシーン1つをとっても、いくつもの要素が組み合わさった作品だと思います。
真田:もう、言い尽くされてしまったような気がするんですけど(笑) やはりアクションというのは、ドラマの沸騰点で生まれるもので、その後にどういう感情が生まれ、 またドラマにいかに着地するか、というのが一番大事なんです。時として、そのアクションを理解していない監督がコレオグラフィー(アクションなどの振り付け)をやったときに、ストーリーと分離してしまうということが1番避けなければいけないことだと思います。
その点、デヴィッドは理解してるので、現場で出てきたアイデアをうまくまとめて、良い振付とバランスで物語に着地できています。信頼感がデヴィッドにはあったので、狭ければ狭いほどその空間をいかに武器として使うのか、浮かんだアイデアを出しました。相手が座席の後ろに隠れたら、じゃあ座席ごと切っちゃえとかね(笑) 各キャラクターのバックグラウンドや感情、その結果として観客がエキサイトして、次の感情に移っていく、全部が積み重なって、掛け算になっていくというのが、本作で実現できたのではと思います。アクションを理解した監督が撮ってくれるということは、役者にとっては非常に心強いし、すべての努力が無にならないであろうと信じられる。そうやって仕事ができるというのは、俳優にとって幸せだなと思いました。
――真田さんに質問です。今回、脚が不自由な役柄ですが、2021年公開の『モータルコンバット』などではキレッキレのアクションを見せていましたね。アクションのイメージも強い真田さんですが、日頃から鍛えていたりするのでしょうか。ルーティンとかありますか?
真田:昔のようにやっていると身体がもたないので(笑)、普段は最低限の歩く、走る、ストレッチ、軽い筋トレとか健康を保つものにとどまっていますね。役によってファイティングスタイルが変わってくるので、求められる訓練とか体力はその都度、構築していく感じです。その役が終わったとき、まっさらに戻して、次の役へと変えていくような感じです。
――今回はどういうトレーニングをされましたか?
真田:今回は特別にということはしなかったですが、小道具さんが用意してくれた武器をいかに有効に使うかを考えました。今回でいえば、ダックヘッドの仕込み勢がきたら、ヘッドをフックとして使ったり、鞘も武器として使ったり、いかにコレオグラフィーに反映できるか、オリジナルの動きをつけていく。
なので、見せるためにアクションをしているわけではないので、役柄とその時の感情に沿った動きにしていくのか、時には少ない動きのなかでも、純粋な演技の延長としてファイティングします。
アーロン:その通りだね。
――本作の主人公レディバグは、とても不運な男です。皆さんは自分では運がいい方ですか? それとも悪い方ですか?
3人:(笑)
真田:ここにいるという時点で、たぶん運は良いほうだと思います。これまでの作品がなければここにはいなかったと思いますし、人との出会いがなければここにはいられなかったので、すべての出会いに感謝したいですね。これまで関わった人と出会えたというのは本当に運が良かったと思います。
アーロン:僕もヒロと似たような見方をしていて、自分はすごく運がいい人だと思っています。まずこの役を勝ち取れたこと。オーディションを受けての役だったので幸運に思っていますし、パンデミックの最中でもちゃんと撮影をできました。そして、素晴らしいブラッド・ピットと共演できたことを本当にラッキーだと思っています。
また、何よりもこの作品を携えて、ずっと来たいと思っていた日本に来れたことは嬉しかったですね(笑) この誇りに思える作品を、日本の観客にお届けできることはとても嬉しいです。
僕も運命だとか定めだとか、自分が経てきた道についてよく考えるますけど、自分の人生を捉える上でまず生きる目的は何なのかって。そして、それは何よりも家族のために生きているんだなって。4人の娘を今育てていますけど、まさに僕の情熱が注がれる先はそこであり、俳優の仕事に注がれるのはアーティストとしての情熱。こういった職業で生計を立てることができるっていうのは滅多にないことで、そう考えると、とても幸運なんだと思います。
定めについてもう1つよく考えるテーマがあり、自分の夢を具現化していくことについて考えることが多いです。夢を持っている人ならば、叶えたいことをどのようにして達成させるのか考えたことあるじゃないかな。僕はどちらかというと、余裕綽々のプリンスちゃんよりも、レディバグのような生き物だと思っていて(笑)、 あれこれ失敗したり、それこそ幸運でないことが身に起きたりする。けれども、あくさくしながらも、結果往来的なことになっているのかなとも思います。でも、そうやって色々失敗を重ねてこその学びと成長もあると思っています。
監督:ラッキーだと思いますね。あることを叶えるために色々準備するわけですけども、そこに機会を加えると、叶えることができる、具現化することに繋がると思っています。
その機会がやってくるかっていうのが、運の部分かもしれないんだけれども、そこまでやっぱり長年努力しているのか、していないのかでそういう機会が巡ってきた時に、対応の違いがでてくる。運を幸運に具現化することができないと。
僕はすごく運が良かったけれども、それと同時に人生の25年をこの映画業界でスタントマンから始めていろんな形で頑張ってきました。映画というものを理解しようと、ストーリーというものを理解しようと、映画作りを理解しようと、自分のところに巡ってくるかもしれない機会のために準備をしていて、ある日、その機会がやってきたわけです。それが僕の世界観であり、世界に対する視点であったりします。今こうやってインタビューを受けることができていて、本当に心から感謝しています。
――真田さんにご質問です。今回日本が舞台ということで、日本人や日本文化がどう描かれるのかにおいて、意識したことや挑戦したことがあれば教えてください。
真田:超高速列車のセットを見た時から、ポップでスタイリッシュな世界観というのが見えていたので、妙にリアルを追及はしませんでした。日本の原作から国際的なキャストに適応されて、そこで唯一日本人として残ったパートを任されたので、その部分において日本語でも動きでも、ちゃんと日本人らしく見えるようにしました。そして、国際的なキャストのなかで浮かないように、いかにバランスをとるかというのをテーマとしていました。
――アンドリューさんとなにかお話とかされましたでしょうか。
真田:彼とはリハーサルの初日から初めて一緒に仕事するとは思えないケミストリーを感じました。お互いに普段からオヤジ、息子と呼び合う関係が築けたので(笑)、その関係性が映画に反映されていれば良いなと思います。
映画『ブレット・トレイン』は9月1日(木)より全国の映画館で公開。
(海外ドラマNAVI)
Photo:アーロン・テイラー=ジョンソン&真田広之&デヴィッド・リーチ監督 映画『ブレット・トレイン』