【映画レビュー】『ラ・ラ・ランド』のタッグが贈る『ファースト・マン』 人類で初めて月に降り立った男の素顔

初めて人類を月面に立たせたアポロ11号。ミッション成功の陰には、船長であるニール・アームストロングの並々ならぬ努力があった。技術的課題、冷笑するマスコミ、そして困惑を隠さない家族たち。そういった困難をすべて乗り越えて月に立った男の挑戦の軌跡を、『ラ・ラ・ランド』のデイミアン・チャゼル監督とライアン・ゴズリングが再びコラボして贈る『ファースト・マン』。日本では2月8日(金)から全国の劇場で公開。

テストパイロットから宇宙飛行士に

1969年7月21日、パウダー状の月面に人類初の足跡を刻んだニール。歴史的瞬間が訪れるまでには、長い忍耐と挑戦の日々があった。

作品は月面着陸の8年前、ニールのテストパイロット時代にまで遡る。超音速実験機X-15でカリフォルニア付近のモハベ砂漠を飛行中、ニール(ライアン)はコントロールを失うが、落ち着き払って緊急事態を乗り切る。そういった優秀な飛行士としての腕を買われ、後年、NASAの有人飛行計画「ジェミニ計画」に抜擢される。過酷な訓練をこなし、アポロ計画の前段階であるジェミニ8号のフライトに危険を承知で参加する。

実直で控えめなヒーローとして知られるニールだが、家庭では不和も。妻ジャネット(クレア・フォイ『ザ・クラウン』)は、幼くして亡くした愛娘カレンを忘れることができない。ミッションの失敗で今度はニールすら失うのではないかという不安を拭えず、思わず夫に辛くあたってしまう。映画『ファースト・マン』は、ミッション経緯のほか、人間模様までも克明に再現した一本だ。

控え目な演出に真実味

米Los Angeles Times紙は本作を、米ソ宇宙開発競争時代のNASAの取り組みの舞台裏に迫る映画だ、と表する。プロジェクトは必ずしも毎回成功には至らず、政府と世論の風当たりは強くなってゆく。そんななか、確固たる信念を胸に突き進むニールは、まさに寡黙な英雄といったところ。

そんなニールが挑むのは、人類がまだ到達したことのない世界。一大プロジェクトを追った本作を、米Washington Post紙は「荘厳かつ夢中にさせる作品」と評価している。わざとらしい演出や感情的な描写を注意深く避けることで、信頼感に満ち、没入できる作品となった。

ノスタルジー溢れる作品だと見るのは米New York Times紙。郊外に暮らすアームストロング家、ライトバンにタバコ、そして潤沢な予算の国家プロジェクトといった描写が、70年当時の時代背景を饒舌に語る。主人公ニールについては、チームワークを重視する人物だと同メディアは評価。他の乗組員やNASA職員との連帯感は、まるでチームスポーツの映画を観ているような感覚すらもたらしてくれるだろう。

ヴェネチア・オープニング作品

本作は昨年のヴェネチア国際映画祭でオープニング作品としてワールドプレミア上映され、会場を大いに沸かせた。昨年10月12日に全米公開されると、公開初週に全米ボックスオフィス第3位と良好な位置に付けた。アカデミー賞には視覚効果賞をはじめ4部門にノミネートされ、ゴールデングローブ賞では作曲賞を受賞するなど、実績も豊富だ。

人類初の偉業を遂げた男の物語『ファースト・マン』は、2月8日(金)より東宝東和配給にて全国ロードショー。(海外ドラマNAVI)

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映画『ファースト・マン』
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