"今度こそは自分で監督をしたい" 震撼スリラー『マローボーン家の掟』セルヒオ・G・サンチェス監督にインタビュー

『ジュラシック・ワールド/炎の王国』のJ・A・バヨナ監督が初の製作総指揮を務め、謎、恐怖、衝撃が渦巻くスパニッシュ・スリラー映画『マローボーン家の掟』が、いよいよ4月12日(金)より公開となる。本作が劇場映画初監督作品となるセルヒオ・G・サンチェスに電話インタビューを実施。これまで『永遠のこどもたち』や『インポッシブル』などの脚本を手掛けてきた彼だからこそ監督としての本作への思いや、また苦労したという若手俳優のキャスティングについて語ってくれた。

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まずは本作のストーリーを紹介をしよう。舞台は、1960年代末の米メイン州。海沿いの森の中にひっそりとたたずむ大きな屋敷に引っ越してきたマローボーン家の4人兄妹と母親は、祖国英国での悲惨な過去を捨てて、この人里離れた屋敷で新しい人生を踏み出そうとしていた。責任感の強い長男ジャック(ジョージ・マッケイ)、家族思いの長女ジェーン(ミア・ゴス)、頭に血がのぼりやすい次男ビリー(チャーリー・ヒートン)、まだ幼くて天真爛漫な末っ子サム(マシュー・スタッグ)の兄弟。

しかしその矢先、心優しい母親(ニコラ・ハリソン)が病に倒れ、この世を去ってしまう。そして間もなく、突然の銃声によって兄妹は恐怖のどん底に突き落とされる。英国で悪名を轟かせた凶悪殺人鬼の父親(トム・フィッシャー)が脱獄し、執念深く彼らを追ってきたのだった。4人の希望に満ちた日々はもろく崩れ出す...。彼らは平穏を保つため"5つの掟"に従いながら屋敷で過ごすが、屋根裏部屋から響いてくる不気味な物音、天井ににじみ出す異様な黒い染み、鏡の中にうごめく怪しい影、何かがおかしい...。

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マローボーン家の5つの掟:1.成人になるまでは、屋敷を離れてはならない

――本作でメガホンを取ることになった経緯を教えていただけますか? 念願の監督業とお聞きしたのですが、脚本を書かれている時点で監督を務めると決められていたのでしょうか?

「私は一度も脚本家になりたいと思ったことはなく、常に監督をやりたいと思っていました。ニューヨークの映画学校を出た時にすでに『永遠のこどもたち』の元になる短編の脚本を書いていました。それを読んだJ・A・バヨナとギレルモ・デル・トロがすごく気に入って、結局彼(デルトロ)が『永遠のこどもたち』を監督することになりました。『永遠のこどもたち』から『インポッシブル』『ヤシの木に降る雪』と3本続けて自分が書いた脚本がヒットを飛ばしたので、"今度こそは自分で監督をしたい"と思っていました。ロケ場所は一つで、登場人物が5人という低予算で実現できると思ったので自分で監督したいと思ってこの企画を始めました」

――ゴヤ賞(スペインのアカデミー賞)の新人監督賞にノミネートされましたね。すでに脚本家として『永遠の子どもたち』で同賞を受賞されていますが、監督としてノミネートされたと知った時はいかがでしたか?

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マローボーン家の5つの掟:2.鏡を覗いてはならない

「とても嬉しかったです。これまでは『永遠のこどもたち』でゴヤ賞を受賞して、そのほか3回ノミネートされていて、監督としてノミネートされるのは初めてだったんですが、嬉しいとともにすこし寂しい気がしました。というのも、私の中では『マローボーン家の掟』は撮影も撮影監督もよかったし、俳優たちもみんなすごく頑張ってくれて、非常に高いレベルの仕事ができたと思っていたので、監督の自分だけがノミネートされたというのはなんだかとても寂しい気持ちがしました。でも私にとっては非常に飛躍の一歩となって、このおかげでその当時公開していたスペインではゴヤ賞受賞に関して、みんなが口コミをしてくれたので、観客動員数が10倍になりました」

――製作総指揮を務めているJ・A・バヨナ(『ジュラシック・ワールド/炎の王国』)とはこれまで『永遠のこどもたち』『インポッシブル』と、監督と脚本家という立場で関係を築かれてきたと思います。彼から本作を製作されるにあたり、アドバイスをもらったとお伺いしました。具体的なその内容をお伺いできますでしょうか?

「バヨナとは、かなり以前からの友だちです。今回バヨナは私の自由を守るために非常に手助けしてくれました。バヨナが映画を撮るときに、ギレルモ・デル・トロが製作総指揮でいたような関係とちょうど同じようなものです。ですので、技術的なこととか美術的なこと、やりたいことをできるだけ叶えられるようにと、他からの介入から私を守ってくれた。そういう関係でした。「監督としての自由」というのを守ってくれました」

「そしてどちらかというと、撮影の時よりは編集の時にいろいろアドバイスをもらいました。本作は非常にバランスが必要な映画なので、ジャンル映画にならないようにと気配りしてくれました。バヨナには"観客を二度三度驚かすようなところを作ったら、そのあとはドラマに重きを置くように"というふうに教えてもらいました。この作品はサスペンスですが、「サスペンスのフェアリーテイル(おとぎ話)」のようにしたいというところがあったので、そのバランスに関していろいろとアドバイスをしてくれました」

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マローボーン家の5つの掟:3.屋根裏部屋に近づいてはならない

――本作では主に若手俳優を起用されています。キャスティングには苦労されたとおしゃっていましたが、どのような基準で彼らを起用されたのですか? そして実際に彼らと一緒に仕事をしてみていかがでしたか?

「『ハリー・ポッター』のキャスティングディレクターが、英国人俳優のカタログをたくさん持っていたので、その中からあまり知られていない俳優を選びたいと思っていました。みんな1本か2本しか出演していない、そんなに有名ではない俳優を選ぼうと思いました。今回の撮影が終わってキャストの彼らとはすごく仲良くなったので、"もう一度このキャストで何か全然違うものを作りたい"という話もしています」

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マローボーン家の5つの掟:4.血で汚された箱に触れてはならない

「実は撮影を始める前に、(スペインの)アストゥリアスの撮影現場で2週間ほどみんな家族と離れて一緒に過ごしたのですが、一人一人どのように役作りをしていくのか、別々の演出の仕方をしなければいけなかったというところが少し難しかったかもしれません。撮影前のこの2週間は、一度も映画のリハーサルをせずに、「マローボーン家」になる前の兄弟はどうだったのか、母親とはどんな人物だったのか即興を演じさせました。いつニューイングランドに移り住もうとしたのか、それを決心した時の家族というテーマをつくり即興を演じました。それによってこの2週間の間で関係が形成されたことで、無理なく兄妹として撮影に入ることが出来たと思います」

――『永遠のこどもたち』や『インポッシブル』、そして本作と、一つのテーマとして「家族」があると思いました。サンチェス監督にとって、「家族」を取り上げる意味はなんでしょうか?

「本作では、「家族」もそうですけど「家」そのものについても描きました。はじめは、みんなであるところから逃げるために家を捨て、次は「ここは安全だ」と思った家にたどり着くんですけど、そこでも家の中に「家」という"砦"を作らなければいけなくなってしまう。みんなが「安心できる場所」を探しているということを描きたかったのです。そしてそこが安全でないとわかったら、今度はジャック自身の中に自分の物語ができてしまうというですね。自分の頭の中に安全な場所を作るという。常に人は安全な場所に帰りたいと思っているんじゃないかと思います。私としてはそうなので、家族というのは大きいテーマでした」

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マローボーン家の5つの掟:5."何か"に見つかったら砦に避難しなくてはならない

――サンチェス監督ご自身のことをお伺いしたいのですが、あなたの人生において、影響を受けた作品はなんでしょうか?

「『E.T.』と『ローズマリーの赤ちゃん』です」

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物語が進むにつれ、明らかになっていく事実―。いったいこの屋敷には、いかなる秘密が隠されているのか。やがて平穏を保つための"掟"が次々と破られ、心身共に追いつめられた長男ジャックが、最愛の妹と弟たちを守るために決断を下す―。サンチェス監督にとって、初の劇場映画監督作品『マローボーン家の掟』は、4月12日(金)より新宿バルト9 ほか全国ロードショー。

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セルヒオ・G・サンチェス監督『マローボーン家の掟』
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