キャプテン・アメリカとブラック・ウィドウが対談!マーベル映画論争についても語り合う

米Varietyの「Variety Studio: Actors on Actors」でスカーレット・ヨハンソンがクリス・エヴァンスと再会し、まるで彼女が長い間会っていなかった親戚か何かを見つけたかのような喜びの声を上げた。その対談の模様を紹介しよう。

スカーレットとクリスは、10代後半にコメディ映画『スカーレット・ヨハンソンの 百点満点大作戦』で初めて出会い、2007年公開の映画『私がクマにキレた理由(わけ)』では恋人同士を演じた。そして、今年の春に『アベンジャーズ/エンドゲーム』で最高潮に達したマーベル・シネマティック・ユニバースで主要キャラクターに扮し共演。

その後スカーレットは、ノア・バームバック監督による『マリッジ・ストーリー』で困難な離婚を経験。タイカ・ワイティティ監督の風刺映画『ジョジョ・ラビット』では、ホロコーストが起きたドイツで母親を演じている。一方のクリスは、高潔な『キャプテン・アメリカ』シリーズとはかけ離れたキャラクターとして、ライアン・ジョンソンがメガホンを取ったミステリー映画『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』に出演している。

クリス:『マリッジ・ストーリー』を観たばかりなんだけど素晴らしかったよ。もし、君が賞を受賞しまくらなかったら僕はショックを受けるだろうな。なぜ、その物語を伝えたいと思ったの? かなりヘヴィーでダークだよね。

スカーレット:多分10年くらい前にノアと私は一緒に何かをやろうとしてたの。少しの間プロジェクトを進めていたけど最終的に上手くいかなくて、撮影できる段階になるまでに私がパスしたの。その作品にしっくりこなくて。たぶんクリスも、以前に似たような経験をしたことがあるんじゃないかな。"まあ、立ち消えになってしまうプロジェクトもあるだろう"といったように、プロとして何かが上手くいかなかったと感じたことはなかった?

クリス:ないな。

スカーレット:そうなのね。その数年後にノアが何かについて話し合うために会いたいと、私に電話してきてすごく驚いたわ。不意打ちだったから。それで彼とニューヨークで会ったんだけど、まったく時間が経っていないようだった。すぐにノアが(映画の)物語を私に伝えて、私自身が離婚を経験している真っ只中だったから、なんだか不思議な偶然だった。

20191121_ChrisEvans-ScarlettJohansson_02.jpg<『マリッジ・ストーリー』12月6日(金)Netflixで配信>


クリス:参加する前に、どれぐらい脚本のページが存在していたの?

スカーレット:何もなかったわ。コンセプトだけだった。

クリス:そうなんだ! アイデアを出したの? というのも、こういう状況における悲劇の一つは、離婚のことを考えるとケンカ腰になったりトゲトゲしさを想像して、敵対心を出してしまうよね。でも多くの映画では、上手くやろうと努める二人の人間が描かれる。

スカーレット:脚本を受け取った時、私たちは人間関係や片親になるのとはどういうことなのか、そして家族とは何なのかとか、話題に上がったことすべてについて話したの。複雑よね?

クリス:胸が痛むね。

スカーレット:あなたの方は、『エンドゲーム』と『インフィニティ・ウォー』を撮影している時に、すでに『ナイブズ・アウト』の準備に取り掛かっていたのよね。

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<2020年1月31日(金)公開『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』>

クリス:そうなんだ。『エンドゲーム』の最後の2~3シーンは再撮影をやってたんだけど、そこに君がいたのかどうかはわからない。ブラック・ウィドウが死んだから、君は出入りが激しかったからね。もし見てないのなら......。

スカーレット:それはかなり残念ね! 『エンドゲーム』と『インフィニティ・ウォー』を撮影中に、ノアと話をしていたの。そのおかげで、退屈な日々を何とか耐えることができた。(映画って)わずかな時間の中で私たちが参加して、やらなくちゃいけないアクション・ストーリーテリングだもの。

クリス:実際に製作のプロセスだけじゃなく、映画には多くのことが絡んでくるからね。ほんの少し撮影を開始しては停止し、スタートしてはストップする。それに、自分たちが長いこと演じて親しみがある役だし、マーベル映画には敬意を払うばかりだ。シリーズが大好きだよ。でもキャプテン・アメリカから卒業して、(新しい)キャラクターを見つけて他のアーティストとコラボするために異なるアプローチを取り、マーベル映画から離れて未踏の水域にやって来て、ペースの変化にただワクワクしてるよ。

スカーレット:ライアンとの仕事はどうだった?

クリス:彼は素晴らしいし、自分が何を望んでいるのか知っている。監督が脚本を兼任するアイデアが大好きなんだ。だって、人が寄ってたかって一本の脚本を読んだら、全員がどう解釈するべきか主観的な意見を持つことになるからね。でも脚本家兼監督なら、"いいや。これは、まさに私が意図したことだ"って言えるし、ライアンはマルチタスクに長けている。2テイクで終わりなんだ。

スカーレット:ホントに?

クリス:俳優としては恐ろしいよ。だって監督に50テイクを命じられたら、俳優ならやるからね。

スカーレット:どうして自分でもっと要求しないの?

クリス:そうしたくても撮影セットに慣れるのに数日かかるし、自分がもっと求めて状況が良くならないなら、将来的にもっと要求しづらくなるからね。

スカーレット:それは面白い見方よね。

クリス:そうだね。すごく不安定で利己的な見方だな。

スカーレット:何かについてアイデアを持っているなら別のテイクを求めることは、映画に出演し始めたばかりの俳優にとっては良いアドバイスになるんじゃないかしら。もしくは、自分が気になっていることが他にもあると感じている場合は、別のテイクを頼むべきじゃないかな。そうじゃないと、そのことでずっと悩まされちゃうから。

クリス:そうだね。

スカーレット:ノアはライアンとはまったく対照的だわ。彼は容赦ないし、あなたなら50テイク出来るわよ。彼はカメラを1台だけ使用して、言葉についてすごく具体的なの。すべてのためらいや未完成のセリフ、キャラクター全員の会話がすべて完全に脚本化されているの。

クリス:その映画に即興はないの?

スカーレット:一言もないわ。

クリス:どちらもオスカーが必要だね。だって僕は、"ああ、これは即興なのかな"って思ったから。まるで演劇だね。

スカーレット:本当に演劇みたいだったわ。あなたには舞台の経験も聞きたかったの。すごく素晴らしかったから。

クリス:君は、僕の演劇(2018年にブロードウェイで公演された「ロビー・ヒーロー」のリバイバル)を実際に観に来てくれた唯一の俳優の友だちみたいだね。

スカーレット:(ジョークで)お金を貰ったもの。

クリス:だろうね。

スカーレット:出演する前は緊張した?

クリス:怖かったよ。しばらくすると映画製作のプロセスに新鮮味を感じなくなって、慣れ親しんだことに新しい方法を見つけて試したくなるんだ。自分が探していたのは、"この解放感が可能になる"とシーンの中で長いこと考える時間だったと思う。その逆にはなり得なかっただろう。ステージに立つと覚えておくべきことが山ほどあるから、圧倒されてしまうんだ。

スカーレット:あなたを観ている時にそうは感じなかったけどな。

クリス:オリジナルのコンテンツはあまりない。『ナイブズ・アウト』については、それが最高だと感じたポイントの一つなんだ。脚本を読んで肉付けがあって新しいと思ったし、"鶏が先か、卵が先か"っていう奇妙な因果関係を思い出したよ。誰が言い出したんだろうね? 観客が低俗な作品だけを求め始めたのは、業界が作り始めたからなのか? それとも最初に製作したから、観客に提供する作品が全部そうなってしまったのか?ってね。

スカーレット:えっと、私は一緒にしないでね。興味深いのは、ここ数日ですごく尊敬されている2~3人の監督が、マーベル・シネマティック・ユニバースの大作映画について"バカバカしい"とか"映画の死"だと言っていたと聞いたの。最初は、その意見が少し時代遅れのように思えて、誰かに説明してほしかったわ。だって、ある意味ですごく残念で悲しく思えたから。私は彼らが言っていることは、劇場で様々な種類の映画や小規模の映画を実際に上映する余地があまりないと言ってるんだと思ったの。だって映画館は大作映画に占領されてしまっているから。これでは人々がどのようにコンテンツを消費するか、いかに幅広いプラットフォームにおける観客の視聴体験を変えたかについて考えさせられた。

クリス:オリジナル・コンテンツがクリエイティブなコンテンツを刺激するんだと思う。新しいものこそが、クリエイティブな車輪を動かし続けるんじゃないかな。業界には、そのすべてを受け入れる器があると信じてる。ある種の音楽は音楽じゃないと言っているようなものだよね。誰がそう言ってた?

スカーレット:今は何を求めているの?

クリス:2~3カ月ごとに、もう演技はたくさんだと思うんだ。ここ10年ぐらいこんな感じで、いつも自分は抜け道を見つけようとしているんだけど、やっぱり演技が好きなんだよね。TV業界は今、クリエイターにもっと自由が与えられていると思うけど、映画界は時々スタジオのメモであふれているように感じる。そして突然、かつてオリジナルだったアイデアが、限りなくありきたりなものに煮詰められてしまう。そして、"誰かのお気に入りの映画"ではなく、みんなのための生ぬるい映画しか残らなくなる。だから人々が背を向け、革新的な配信サービスの作品に目を向けているんじゃないかな。

スカーレット:『ジョジョ・ラビット』の脚本を読んだ時に、こういった作品を目にしたことがなかったと思った。この映画は、FOXサーチライトを介して映画化への道を見つけたの。スタジオは型破りな作品を恐れず、劇場で公開することを喜んでいる。

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<2020年1月17日(金)公開『ジョジョ・ラビット』>

間違いなく、インディペンデント映画を上映する余地はあるし、人々は多様性を求めていて変わった作品を観たいのよ。私が実際に興味を持っているのは、あなたがそういった点を監督として見ているかっていうことなの。あなたの興味を引き続ける何かがある? そのことについて考えているの?

クリス:監督をしようとしているけど、脚本を書く勇気も集中力もない。一番難しいのは題材を見つけることなんだ。良い題材はそこら辺に手付かずのまま転がってはないから、見つけるのが難しい。自分が監督を務めた時に厄介だったことの一つが、少し手直しが必要な脚本を見つけて、"手を加えれば良い作品になる"と思ったことだったんだ。振り返ってみると、自分で監督した映画の最高のバージョンでさえ、基にした題材に限界があったのかもしれないと思った。ナイーブなことは言いたくないけど、脚本に書かれていない秘められた可能性を引き出して、作品を高められるかもしれないと期待していたのかもしれない。僕が何に興味を持っているかわかる? スカーレット、初めて僕と会った時にどうだった? 僕と仕事をするのはどんな感じだった? お手柔らかにね。

スカーレット:どうだったかしら。『スカーレット・ヨハンソンの 百点満点大作戦』のリハーサルのある時点で、撮影セットにいた時じゃないかしら。SAT(大学進学適性試験)について描いた当時のティーン・コメディで、その内容は最近起きた出来事(フェリシティ・ハフマンらが起こした不正大学入学スキャンダル)に関係あると言えるかもしれないけど。

クリス:『スカーレット・ヨハンソンの 百点満点大作戦』ってほぼ20年前だよね。

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<2004年公開『スカーレット・ヨハンソンの 百点満点大作戦』>

スカーレット:そうね。すごく昔に感じるわ。その時はただの子どもだった。

クリス:ある夜、みんなで出かけたのに君はクラブには入らなかったと思う。

スカーレット:だって17歳だったから。そうね。そういう時代もあった。あなたは常に抜きん出た俳優で、当時も素晴らしかった。信じられないぐらいカメラ映りが良くて、すごく稀な感じでスクリーンで生き生きしていた。私たちには俳優として素晴らしいケミストリーがあると思うし、ナチュラリスト的なアプローチがあると感じていたから、あなたと一緒に仕事が出来て良かったわ。それから、『私がクマにキレた理由(わけ)』でも共演したのよね。

クリス:それから、史上最大の映画『アベンジャーズ』だ。

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スカーレット:史上最大の映画なの? ワオ。じゃあバケーションに行く必要があるわね。

クリス:『アベンジャーズ』のバケーションを計画しようとしてるんだ。少しはヴィクトリー・ラップに値するだろ。『スター・ウォーズ』が僕に影響を与えたように、ポップカルチャー現象の一部になれたから素晴らしいというわけじゃない。自分にとって心に残っているのは、一緒に仕事をした人たちだ。その中に"腐ったリンゴ"は本当にいなかったからね。

スカーレット:面白いわね。『アイアンマン2』(※スカーレットが最初に出演したマーベル・シネマティック・ユニバース作品)を振り返ったら、あなたはちょうど『キャプテン・アメリカ』シリーズの1作目の撮影を終えたばかりだったと思う。また私たちが再会することに興味を覚えたわ。何を撮影するのか知らなかったし、マーベル・シネマティック・ユニバースや『アベンジャーズ』が巻き起こす現象を予想するなんて不可能だったもの。そのチャンスに飛びついたけど、当時は同じくアイコン的なスーパーヒーローに取り組んでいたパートナー(DC映画『グリーン・ランタン』に主演したライアン・レイノルズのこと)とその経験を共有したからプレッシャーだった。どうなるかなんてわからないもの。今ではあり得なかったと知っているけど、その時はキャリアが終わる可能性だってあったんだから。

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クリス:そうだね。このシリーズの一部になれたことを信じられないぐらいラッキーだと感じている。自分の人生において掛け替えのない想い出の一つになるだろう。『アベンジャーズ』1作目を続けている時も、そのコンセプトについてみんなが不安に感じていたと思うんだ。尋常じゃなかったし、とてつもない努力を費やした。それで上手くいかないなら、よく言う"夢のような夢"は瞬く間に崩れ去っていただろうな。

スカーレット:最初の『アベンジャーズ』の成功に驚いた?

クリス:その後は、これが何か大きなものになるかもしれないとわかったよ。

スカーレット:戻って来るの?

クリス:マーベルに? ワオ。目覚めたらすべてが噛み合っていたりして。でも復活は同じじゃないだろう。"絶対ない"とは絶対に言わない。あのキャラクターが好きだし、わからないよ。

スカーレット:頑ななNOじゃないのね。

クリス:確実な"NO"じゃないけど、積極的な"YES"でもない。今は自分が取り組んでいる他のことがあるし、キャプテンはミッションを成功させるために危うい行動を取ったけど、製作チームは彼の旅を終わらせる素晴らしい仕事をしたと思う。もし戻るとしたら、その作品は高価な粗悪品じゃダメだし、ファンを興奮させるためだけでもいけない。何を明かして何を物語に加えるのか、多くのことがまとまらなくちゃいけないからね。

スカーレット:確かじゃないんだ。

クリス:現時点はそう感じてないけど、先はそうなるかもしれない。

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スカーレット:私は映画の最後の3分の1はいなかったでしょ。だから、何が起きるのかまったくわからなかったの。脚本に書かれているのかどうかも、実際にどう描かれるかも知らなかった。美しいカタシス的なエンディングで、スティーブ(キャプテン・アメリカのこと)にとって最高だし相応しいと思った。それが彼の幸せのすべてだったから。

クリス:それをダメにしたら残念だからね。その点については守りの姿勢なんだ。すごく貴重な展開だったから、僕としては再びキャプテンを演じることはかなり怖い。何度も"NO"と言ったし、数え切れないほど間違った方向へ進む可能性もあった。だから、(キャプテンの物語は)そっとしておいた方がいいかもしれないと感じてるよ。

(翻訳/Nami)

Photo:クリス・エヴァンス (c)SF/Famous/スカーレット・ヨハンソン (c)NYKC/Netflixオリジナル映画『マリッジ・ストーリー』/『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』Photo Credit: Claire Folger/Motion Picture Artwork (c) 2019 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved./『ジョジョ・ラビット』(c) 2019 Twentieth Century Fox&TSG Entertainment/『スカーレット・ヨハンソンの 百点満点大作戦』(c) Everett Collection/amanaimages/『アベンジャーズ』TM & (C) 2012 Marvel & Subs./『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(c) 2014 Marvel/『アベンジャーズ/エンドゲーム』(c) 2019 MARVEL