「映画祭のためには作るべきでない」熱く、真摯に応えてくれた『パピヨン』マイケル・ノアー監督

映画史に残る脱獄映画の金字塔を、『サン・オブ・アナーキー』のチャーリー・ハナムと『ボヘミアン・ラプソディ』のラミ・マレックで製作された映画『パピヨン』。45年の時を経て蘇らせた本作の監督マイケル・ノアーに独占インタビュー! さらに、先月行われた東京国際映画祭の審査員で来日したノアー監督の要望で実施されたミート&グリートイベントにも潜入。熱く、真摯に応えてくださりました。

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すべてを失っても、希望だけは奪えない―。作家アンリ・シャリエールの壮絶な実体験を基にした、終身刑囚"パピヨン"の13年に及ぶ命をかけた脱獄劇。周囲を海に囲まれたフランス史上最悪と呼ばれた南米の流刑地<悪魔島>で、無罪の罪で終身刑を言い渡されたパピヨンと紙幣偽造の天才ドガの冒険活劇を壮大なスケールで描いた本作。実に13年の間で9回もの脱獄に挑んだパピヨン役にチャーリー、紙幣偽造の天才ドガ役にはラミが扮し、今アツい俳優が自由と希望を諦めない男を演じている。脚本は、映画『プリズナーズ』のアーロン・グジコウスキが務め、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』のジョーイ・マクファーランドがプロデューサーに名を連ねる。

そんな注目の本作でメガホンを執ったのが、原作と1973年に公開された映画のダルトン・トランボよる脚本にインスパイアされたデンマーク出身のノアー監督。第31回東京国際映画祭のコンペティションに出品され、審査員特別賞&最優秀男優賞を受賞した『氷の季節』の監督だ。

――原作があり、スティーヴ・マックィーンとダスティン・ホフマンが共演した名作と呼ばれる1973年の映画があった中で、製作された本作。初めて本作の脚本を読んだときの感想を教えて下さい。

今は亡き父親がオリジナル版のファンだった。映画は特殊効果に頼らず、キャラクターベースだった頃のことを思い出させてくれた。最初、本作の脚本を読んだとき、キャラクターにフォーカスしたアクションドラマを作れる可能性があると思い、とても惹かれたんだ。チャーリーもこのプロジェクトに興味を持ったので、彼にぜひ演じて欲しいと説得した。これまでの私の作品はすべて、自分で考えたアイデアやコンセプトに基づいている。今回はどれだけ原作に誠実に描けるかが興味深かった。そしてパピヨンとドガの関係に対して、独創性に富んだスピリチュアルでオープンな描き方になるよう心掛けた。

この作品に限らず、どんな作品を撮るにしても、プレッシャーはある程度感じるべきだと思う。そうでなければ、その作品はあなたには、十分ではないということだと思う。ただ、プレッシャーを感じる理由は正しくあるべき。私は"良い映画を作らなきゃ"というプレッシャーではなく、原作が本当に好きなので、"最高なパフォーマンスを引き出せるか"ということにプレッシャーを感じた。(スタッフやキャスト)彼らが私のことを信頼してくれたことはとても光栄だったし、彼らを裏切りたくはなかったから最善を尽くした。

これは本当に俳優たちの作品だと思う。特にチャーリーとラミの功績による部分が大きい。特にチャーリーは独房シーンの時間の分、自分を閉じ込めていたりしていたしね。

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――本作でさらに名を上げたパピヨン役のチャーリー・ハナムと、『ボヘミアン・ラプソディ』でアカデミー賞主演男優賞を受賞したドガ役のラミ・マレック。監督からみて二人の魅力とはなんでしょうか?

私はこれまで多くのドキュメンタリー作品の監督を務め、バックグランドがあるが、チャーリーは私のそのできる限りリアルに撮るアプローチの仕方に惹かれて興味を持ってくれた。私たちは友だちになっただけでなく、原作に立ち戻り、私たちの中の創造性と可能性を探った結果、肉体的な作品に仕上げることができた。

チャーリーはとてもフィジカルな役者だ。彼は肉体的にも精神的にも挑戦に向き合うことが好きで、チャレンジのたびに成長する。この作品は彼にその肉体を使うチャンスを与えたと思う。減量に挑戦する彼のスタミナのおかげで、とてもリアルに仕上げることができた。彼はアスリートのようだね。

チャーリーをキャストしたあとは、"陰陽"のような関係性を築ける俳優が必要だった。表面上はまったく違うけれど、芯の部分では似ている、というキャラクターだ。パピヨンは承認と絆と愛を求める。だから私はこの作品をラブストーリーとして見た。私にとってチャーリーとラミのような、とても明確なケミストリーのある二人の俳優をキャストすることが大事だったんだ。全く違う二人が"意外な"友だち同士になれるだけでなく、スピリチュアルレベルで繋がれることが大事だった。多くの意味で『プリティ・ウーマン』のような感じだ。まったく異なる人間がその違いを通して繋がり、お互いから学んでいくストーリーだから。

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だからこの二人の俳優に全く違う人物を生き映す上で、ラブストーリーのように繋がれることが大事だった。そういう映画を作りたくて、二人にもそのように演じてほしかった。彼らが出演にOKしてくれてすごく嬉しかったし、彼らの成功には我々みんなが驚いているし、喜んでいる。ここ2年、チャーリーはたくさんのCMや映画に出ているし、ラミはスターダムを駆け上っている。ラミの才能は最初から誰の目にも明らかだったと思う。

――以前インタビューの中で、チャーリー・ハナムとラミ・マレックと「また、一緒にお仕事がしたい」とおっしゃっていました。どんな作品を撮りたいですか?

ジャンル映画が大好きだから、二人同時でも別々でも、感情に訴えるようなジャンル作品ができたらいいな。今現在、話が進んでいるプロジェクトがたくさんあるからあまり詳細はお話できないけど、ジャンル映画ができたら嬉しい。

――主演のお二人はもちろんですが、脇を固めるキャストたちが演じるキャラクターにも惹かれました。生き残るためにドガを殺そうとするセリエ役のローラン・モラー、刑務所長役のヨリック・ヴァン・ヴァーヘニンゲン。実在人物を演じていることですが、監督として彼らに求めたものはなんですか?

ローランとは、これが3度目になるのでとても親しい関係だよ。(2010年製作のクライム映画)『R(原題)』という作品で初めて一緒に仕事をしたとき、彼は演技の経験がなかった。でも、今では『ヒトラーの忘れもの』というアカデミー賞外国語映画賞にもノミネートされた作品に出演するなど、世界的に活躍する俳優になった。私たちが最初に出会った時、彼は刑務所で数年の刑期を過ごしているところだったと考えると凄いことだ。彼は、私とチャーリーに「実際の刑務所では生き残るために常に演じてなければならない。みんな強そうなフリをする」と言った。だから彼は刑務所で培ったその"演技力"を映画界でも活かしていると言えるのではないのかな。とても面白いと思う。

ヨリックも本作に大きく貢献してくれた。彼のことはほかの作品を見て知っていたので、参加してくれて嬉しかった。新しい友だちと出会い作品を作ることは、いつでも嬉しいことだ。

20191203_Papillon-MichaelNoerINT_05.jpg一番右:セリエ役のローラン・モラー

――2017年9月のトロント国際映画祭で初お見えされてから、2年が経ちました。日本ではまだ劇場公開されており、大ヒットしております。今振り返り、周囲の反響はいかがですか?

どのプレミアでも、裸でステージに立っている感覚になる。いつもとても脆い気分になるけど、この作品では特にそうだった。なぜならこの作品は、複数のメディアからはリメイクと言われていたから。新しい「ハムレット」を撮るとしたら、昔のものとどのように比べられるのかと考えてしまう。しかし私とチャーリー、そして製作陣にとって、原作にインスパイアされた作品を撮ることが重要だった。チャーリーとラミと素敵なコラボレーションができたことで、緊張は和らいだ。私たちが作り上げたものに満足だったし、彼ら二人のケミストリーは素晴らしかった。

私としては、もっと二人のシーンを入れたかった。日本でこの作品がヒットしているのはとても嬉しいし、光栄だ。多くの未公開シーンがあるから、DVDとBlu-rayが発売されたらぜひ見て欲しい。とにかく日本でこの作品が良く受け入れられているのはとても誇りだし、幸せだ。刑務所を舞台にした作品はこれで2つ目。最初の刑務所を舞台にした作品『R』も含めて、これまでの監督作品も記事に入れてくれると嬉しいよ。刑務所のジャンルは大好きだから、ぜひ最初のも見て欲しい。

2010年公開の『R』は、ノアー監督初の長編作品

キャスト・スタッフ含め、みんな『パピヨン』を若者向け映画だと思っていた。だから若い観客から反応があったことはすごく嬉しかった。これはパピヨンが大人になっていく映画だから。年齢が上の観客たちはオリジナル版と比べるけど、若者たちが新鮮な目で見てくれたのは本当に嬉しかった。

トロントではレッドカーペットとシャンパンがすべてかと思うけど、いつも覚えておくべきなのは、シャンパンのために映画を作っているのではないということ。観客がいてこそ作る価値がある。もちろんシャンパンを貰えるのは嬉しいけどね(笑) でも本当に、映画祭は年に1回出席するかしないかの中で、映画を作る側からすると、いつもは泥にまみれて寝不足な日々が続くから大変。映画製作をしたい人がいたら映画祭のためには作るべきでない、ということを知っておいてほしい。とにかくみんなの反応はとても嬉しかった。


そして、東京国際映画祭の合間を縫って、本作のファン10人とミート&グリートを行ったノアー監督。なんと、集まったファンに個別で対応!

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ファンからのプレゼントに喜ぶノアー監督に、プレミア上映されたトロントでは会えず2年越しに会いに来た人や、監督の言葉を書きとめる人などそれぞれの想いを伝えていました。また、映画監督を目指しているという高校生からの「今、学んでおくべきことはなんですか?」との質問に、自身のこれまでを例に挙げ、「夢のために一つのことだけに集中しすぎないように。才能よりも努力が大事です」と真摯に答えていた。さらに、本編でピエロが登場するシーンについて、自身がスタントダブルをやっていたという撮影の舞台裏を明かす一幕も。

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#papillonmovie GO FREDAG!!! Go weekend #standin #standup

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――今回のミート&グリートについて、日本のファンの方と直接お話されていかがでしたか?

最高だった。文化の違う国のファンと交流できてとても感動した。ヨーロッパのファンはそんなにシャイではないけど、熱狂的でもない。今回、日本のファンの方と直接お会いして気づいたのは、シャイだけどとても熱があるということ。みなさんから頂いたプレゼントは、とても嬉しかった。靴下もフェイスマスクも大事に使っている。プレゼントを見て日本を思い出しているよ。すでに日本が恋しい。

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富士山グラスをもらい、笑顔のノアー監督「これで日本酒をのむよ」

――最後にファンの方へメッセージをお願いします。

また僕のことを日本に招待してくれる人がいれば、絶対に行くよ。すぐにでも飛行機に飛び乗る。日本は大好きな国で、東京は大好きな都市。日本の服のブランドも素晴らしいし、日本が大好き。ファンのみなさん、日本で『パピヨン』がヒットしてくれて嬉しいです。また別の作品で日本に行きたいと思います。もしそれまで待てなくて、興味があれば私の過去の作品をぜひ見てください。

映画『パピヨン』は、12月4日(水)に貴重な特典映像を収録したBlu-ray&DVD発売。また、同日レンタル開始。
発売元・販売元:ポニーキャニオン
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Photo:マイケル・ノアー監督『パピヨン』 (C) 2017 Papillon Movie Finance LLC. ALL RIGHTS RESERVED.