大人気ドラマシリーズ『トム・クランシー/CIA分析官 ジャック・ライアン』初のスピンオフ作品となる映画『ウィズアウト・リモース』がAmazon Prime Videoにて4月30日より配信開始した。原作シリーズの中で最も人気のあるキャラクターの一人、ジョン・クラークが米海軍特殊部隊からCIA秘密工作員になるまでの死闘を描いた本作。主演を務めるマイケル・B・ジョーダン(『ブラックパンサー』『クリード チャンプを継ぐ男』)がニュー・アクションスターとしてのカリスマ性を爆発させる。【映画レビュー】
これまで、ウィレム・デフォー(『今、そこにある危機』)やリーヴ・シュレイバー(『ト―タル・フィアーズ』)らクセ強めの俳優がクラーク役を担ってきたが、製作も務めるマイケルが大胆に物語をアップデートし、新たな正統派ヒーローとして昇華させた。
特に大きく書き換えられた点は、対テロ組織"レインボー"の創始者になるまでのプロセス。暗殺された妻への"復讐"という極めて感情的な部分を起点に、いったん自暴自棄な暴走野郎に落ちぶれたクラークが、戦いを重ねていくうちに仲間と共闘する兵士としての使命感を取り戻し、やがてテロに立ち向かうリーダーとして覚醒していく姿をダイナミックに描いている。
言い方を変えれば、マイケルがクラーク役を務めるためにシンプルなストーリーに改変されたと言っても過言ではないが、ウィレムやリーヴらの一筋縄ではいかない怪しさ、複雑さを封印し、B級ライン(スパイもの特有の小難しさを緩和した、という意味)のサスペンス・アクションとして潔く振り切ったところは大きな見どころ。マイケルといえば、ドウェイン・ジョンソンの強靭さとチャドウィック・ボーズマンの人間味を併せ持ったバランスのいい稀有な俳優だが、今回は妻を亡くした悲哀をまといながらも、新たなアクションスターとしての道を拓こうとする強い意欲が感じられる。
公式のインタビューでは、「元陸軍、海軍、ネイビーシールズ、デルタ隊員やダイバーたちと一緒にトレーニングし、至近距離での実弾訓練も行った。映画の中で行ったアクションシーンについては、それぞれ特別な訓練を受けているんだ」と語っているが、その壮絶な戦闘シーンでは、さも現場にいるかのような恐怖、殺気、痛み、怒りが、マイケルの肉体や表情を通してリアルに伝わってくる。ラストに魅せる絶体絶命からの漢気ったらもう...男同士でも、惚れてまうやろー! これは淡い期待だが、『トム・クランシー/CIA分析官 ジャック・ライアン』シーズン3以降、ライアンと組んでぜひ共闘してもらいたい。
ちなみに、映画『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』のステファノ・ソリマ監督がメガホンを執り、『リトル・ダンサー』で脚光を浴びたジェイミー・ベルがCIA局員ロバート・リター役で出演。最後まで敵か味方かわからない彼の存在にも注目だ。
(文/坂田正樹)
★『ウィズアウト・リモース』を今すぐ視聴する★
Photo:
『ウィズアウト・リモース』© 2020 Paramount Pictures