ホラー作品常連のケイト・シーゲルがドラマシリーズ『真夜中のミサ』に続き、Netflixオリジナル映画『意のままに』で、再び謎めく猛者に翻弄される! 今度の敵は催眠暗示を巧みに操る、いかにも怪しい精神科医だ。視聴者を震撼させたドラマ『瞳の奥に』や映画『透明人間』『ミッドサマー』など、ヒロインを思惑通りに追い込んでいくサイコパス作品が注目を集める中、ついにやって来ました、催眠術男! 彼の本当の目的とは何なのか?【映画レビュー】
ある悲しい出来事から婚約者と別れ、心に傷を負った女性ジェン(ケイト)は、生きる気力を失い、引きこもりの生活を送っていた。そんなある日、親友の紹介で精神科医のミード博士(ジェイソン・オマラ『Terra Nova ~未来創世記』『エージェント・オブ・シールド』)と出会い、催眠療法を受けることになる。だがそれは、感情も行動も彼の"意のままに"操られてしまう危険なマインドコントロールの始まりだった...。
精神的に弱った女性がセラピーに頼り、やがてサイコパスの餌食になる...シノプシスを読めば、おおよその展開が想像できる題材だが、この映画が秀逸なのは驚くべき催眠療法にある。その進化したテクニックは、患者の心に自分の思い通りになる安全装置(表現上のもので機械ではない)を埋め込み、催眠暗示を発動したり、解除したり、ある時は幻覚を生み出し、恐怖症を植え付けるという邪悪なもの。まるで外付けのコントローラーで患者を遠隔操作しているようだ。
こんなとんでもない催眠療法、実際にあるのかないのかは不明だが、あくまでも映画としてサスペンスを盛り上げる仕掛けとしては実に申し分ない。しかも、ケイト演じるジェンも、ただ震え怯えるだけでなく、『透明人間』でエリザベス・モス(『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』)が見せたファイティングポーズさながら、持てる知恵と強靭な意志で抵抗するところも「屈しない女性像」として時代に合っている。ただ、この辺りの攻防をもうあと10分上乗せして激写してくれたら...というのは、欲深すぎるだろうか。
ところで、ジェイソンがミステリアスに演じたミード博士は、複数の女性、しかも同じようなタイプで美女ばかりを狙って催眠暗示をかけまくるが、「とんだ変態野郎だ!」と思いきや、その目的が意外すぎる点も見どころの一つとして挙げておきたい。
さらに、彼の餌食になるジェンに扮したケイトの緩急をつけた恐怖演技も必見だ。ちなみに彼女の夫は、映画『サイレンス』でタッグを組んだホラー映画の旗手マイク・フラナガン監督だが、日頃からホラーについて何か伝授されていることがあるのだろうか? それくらい彼女の存在は大きく、本作をワンランクアップさせていると言っても過言ではない。
(文/坂田正樹)
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Netflix『意のままに』