夏も終わりに近づいてきた去る24日、あの長寿バラエティ番組『開運! なんでも鑑定団』のアメリカ版ともいえるリアリティーショーがシリーズデビューしました。その名も『Buried Treasure』(埋もれた宝)。でも、『鑑定団』のように主にスタジオで収録されるのではなく、アンティークのエキスパートである双子のキーノ兄弟が、依頼に応じて米国内の一般の家庭を訪ね、家のなかに埋もれているお宝をハントして鑑定するというロケ番組です。

番組のホストを務めるキーノ兄弟は、PBSの人気番組『Antique Roadshow』にも鑑定士として出演したこともある、その道では有名な存在。兄リー・キーノは自身のオークションハウスを運営し、弟のレスリーはサザビーズの上級副社長兼アメリカンファーニチャー・デコラティブアート部門のディレクターを務めています。年の頃は50代前半、そのルックスはロッド・スチュワートからワイルドさをとっておだやかにした感じ。ジェントルマンなのだけど、あまり堅気には見えない独特の雰囲気を持っています。

そんな彼らが最初に訪れたのは、NY州東端のロングアイランドで隠居生活をする母娘。母親はなんでも貯め込むタイプの人で、親から引き継いだ立派な家の中は、モノ、モノ、モノの山。ごみ溜めみたいな部屋に入るなり、ドン引きしていたキーノ兄弟でしたが、どうにかいくつかの価値がありそうな代物を見つけ出し、最新のテクノロジーを駆使して鑑定します。

チャールズ・ディケンズのサイン入り写真やマヤ文明のものらしい花瓶、青銅器(なんとフェレットのえさ入れにされていた!)などが、精密な鑑定の結果、ミュージアム級のお宝であることが判明。その額は2万~6万ドルに。「ウソでしょ~?」とにわかに信じられず狂喜する娘と、最初は売るのをためらっていた母親は娘の迫力に圧されて喜びのハグを交わしたのです。

一方、狭いスペースにぎっしりとフィギュアやコミックが並ぶアメコミのコレクターのアパートにキーノ兄弟は赴き、『Incredible Hulk』のレア本や1940年代のアニメ『スーパーマン』のオリジナルのセル画を見せられます。アメコミは門外漢なので、知り合いのコミックディーラーのところへ依頼人を連れていき鑑定してもらいますが、依頼人が期待したほどの鑑定額には至らず、商談は不成立に。お金は欲しいけど、コレクションを手放すのは惜しい。私は何かのコレクターでありませんが、納得できる額でないと...という気持ちは痛いほどわかります。

さらには、ロングアイランドのワインメーカーに引き継がれた、17世紀の名器かもしれないバイオリンを鑑定します。もし本物なら3ミリオンドルは下らない。しかし、結果は20世紀に作られた、良くできたイミテーションでその価値は300ドルでした。期待に胸を膨らませていた持ち主はガッカリ。

それにしてもリアリティーショーでは今や常套手段となってしまった、CM前に「coming up next」と、次にくる映像をチラ見させるのはいただけません。なぜなら番組冒頭のチラ見せとCM前のチラ見せと本編の中で、われわれ視聴者は同じシーンを3回以上観ることになり、それは決してエキサイティングではないからです。

ただ、たとえアンティークやコレクティブルに特に思い入れがなくても、一攫千金を夢見る人々の裕福とはいえない暮らしぶりや、その鑑定結果に驚喜したり落胆したりする姿を見るのは、なかなかのギルティ・プレジャーです。またキーノ兄弟は今のところ、ナイスな感じのオジサマですが、今後それぞれがキャラ立ちして、顔はうり二つだけど、はっきり見分けがつくようになったら面白いでしょうね。たとえば、お兄さんは実は女装癖があるとか、弟はオネエキャラに変貌したりとか...。あくまでも依頼人の人選がキーですが、このホストの双子にもう少しインパクトがあると、番組への吸引力が違ってくるのでは、と思う次第です。