今秋シーズン、最も大きな期待を背負って放送を開始したFOXの超話題作『Terra Nova(テラ・ノバ) ~未来創世記』。言わずと知れた、スティーブン・スピルバーグ製作総指揮のSFドラマである。
2149年の未来。全世界は人口過多と深刻な大気汚染により存亡の危機に直面している。人類は、8500万年前の地球で新たな社会を築き上げることに活路を見出す。ある者は、リスクを伴うタイム・トリップに抽選制度で選ばれ、またある者は優れた特殊技術を買われフロンティアとして指名され、過去に旅立つ。しかしその希望の地は、恐竜と背中合わせの深いジャングルの中だ...。
スピルバーグ×恐竜とくれば、『ジュラシック・パーク』をイメージせずにはいられないが、どうやら『テラ・ノバ』は、ジェットコースター・ムービーとは趣きが異なるようだ。この作品では、容赦なく襲いかかってくる恐竜たちは、ドラマのスパイスでしかない。恐竜のCGI(コンピューターによる特殊映像)も大作映画のクオリティーよりは少し落ちる。この物語の主人公は恐竜でもなければ、科学者や生物学者たちでもない、"新たな地球(テラ・ノバ)"に入植した一家族だ。人類の誤った運命を塗り替え、果たして未来を再度築くことができるのか、子供たちを生き延びさせることができるのか、という人間ドラマ、いや、ホームドラマと言ってもいいだろう。
恐竜とのアクションシーンの数々はかなりの迫力で撮られているが、描写そのものは目を覆うような生々しさはない。第4話までのところ、子供たちのキャラクターが物語を牽引することも多い。大人から子供まであらゆる世代が見られるように仕上げているのは製作者の狙いだろう。
『テラ・ノバ』の住人たちの敵として現れる"Sixers"と呼ばれる謎の集団も、完全な悪であるのか、その秘密はなかなか明かされず、『テラ・ノバ』の指揮官を演じるスティーヴン・ラングも『アバター』で見せた演技よりも深い人柄を本作では披露し、好感を抱かせる。おっと、その"好感"そのものが罠ではないのか!? そのような謎解きの楽しさを適度に散りばめている。
僕が一点、このドラマをお薦めするとすれば、夜の描写である。
『テラ・ノバ』は、夜がいい!! 受賞歴もある撮影監督ネルソン・クレイグ(『ブレイキング・バッド』『CSI』)が第1&2話で作り出す夜間の照明は、今シーズン、いや近年放送されたドラマの中でも最高峰の出来映えだ。闇の中で恐竜に襲撃されるクライマックスは映画に匹敵する怖さと迫力。今、これを書いていて気づいて驚いたが、ネルソンは『フラッシュフォワード』の第9話『ケイコ』(竹内結子さんと僕が初登場した回)も担当している。このような映像センスの持ち主と仕事が出来たことは幸せである♪
さて、この『テラ・ノバ』、製作予算は史上最高級だ。第1&2話に16億円前後、1エピソード平均3億円以上を注ぎ込む巨大生物のような番組は、激しい視聴率の気象の変化の中で生き延びることができるだろうか? 製作者がおそらく意図する"SFホームドラマ"は、ネット配信で小中学生が見ても良し、のちにDVDで発売された時に家族で一つの作品を楽しむこともできるだろう。ただその分、人物描写が大人向けのドラマより軽めであることは否めない。その賭けが吉と出るか、凶と出るか、その行方は今後の脚本にかかっている。
第1話の放送での視聴率は、予想をやや下回り、まあまあの船出となった本シリーズ。しかし2話以降では数字を上向かせ、業界を驚かせた。さらなる驚きを見せ続けて欲しいものだ。
『Terra Nova(テラ・ノバ)~未来創世記』はFOXチャンネルにて12/13(火) 23:00からスタート。
※初回は2時間スペシャル!
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