【お先見!】『Justified 俺の正義』悪党すらイカしてる現代の西部劇的クライム・サスペンス

「なんだか暗くて取っ付きにくそうなヤツだなぁ」と思っていたら、話してみると実は面白い人で、すぐにうちとけて仲良くなった、なんてことがたまにある。ドラマとの出会いでも似たようなケースがあり、現在FXでシーズン3を放映中の『Justified 俺の正義』がまさにそれ。パッと見ダークで地味だから、ついチャンネルを替えたくなるんだけど、いったん腰を落ち着けて見始めると、終わるまで席を立てなくなるほど面白い。今回はそんな『Justified 俺の正義』の魅力を、4つのイカした理由と共にご紹介したい。

舞台が田舎でイカしてる

犯罪ドラマといえば、舞台を大都市に設定するのが一般的。中には同じタイトルでおしりに「ニューヨーク」だの「マイアミ」だのをくっ付けるだけのスピンオフもあったりして、「お前は『地球の歩き方』か!」とツッコミたくなる。どうせオフるんならそんな都会ばっかじゃなく、いっそのこと「アーカンソー」とか「サウス・ダコタ」とかにしてくれれば、珍しくて興味もわいてきそうなもんだけど、そんな地方が舞台になることは殆どない。

ところがこの『Justified 俺の正義』、舞台がケンタッキー州東部の町ハーラン。何それ? どこにあるの? と思わず地図を見てしまうほど馴染みがない。そして人口が2千人ほどのこの小さな町に忍び寄る犯罪は、実に怖い。周囲がのどかで静かなだけに、その中で起こる狂気が際立つのだ。雑踏や騒音にかき消されることなく、静けさの中でジンジンと肌に沁み入る恐怖を体感できる。

主役がSEXYでイカしてる

そんな田舎な土地柄と関係あるのかないのか、『Justified 俺の正義』の主人公レイラン(ティモシー・オリファント『デッドウッド~銃とSEXとワイルドタウン』)は刑事ではなく、保安官である。映画『逃亡者』でトミー・リー・ジョーンズが演じた、サミュエル・ジェラード捜査官と同じ役職だ。でも、レイラン役のティモシーはカッコいいよ。トミー・リーより若いし、マスクも甘い。足も長いから、ジーンズがよく似合う。口調や物腰はソフトで穏やかだが、拳銃を抜けば誰よりも速い。まるで西部劇の『シェーン』。そう、レイランは現代のカウボーイなのだ。彼が常にカウボーイ・ハットを身につけていることからも、それがわかる。そして我々は思うのだ。カウボーイって刑事よりセクシーだなぁ、と。

悪党が憎々しくてイカしてる

魅力的なのはレイランばかりではない。『Justified 俺の正義』では悪役もイカしてる。都会の犯罪者のような線の細さはなく、どっしり構え、昼間っから堂々と悪事に取り組む。「悪いことをして何が悪い?」と言わんばかりのふてぶてしさが彼らにはある。レイランの幼なじみで、どっから見ても悪党のボイド役を演じて何の違和感もないウォルトン・ゴギンズ『ザ・シールド ~ルール無用の警察バッジ~』)や、シーズン2で悪党の元締め役に扮して見事エミー賞を獲得したマーゴ・マーティンデイル(『ミリオンダラー・ベイビー』)など、このドラマでは悪党が輝いている。1話や2話ですぐに捕まってしまうその辺の刑事ドラマと違い、シーズンを通してレイランと睨み合い、雌雄を決する骨太な悪党たち。単に事件を捜査して犯人が判明しただけでは終わらない、強烈なキャラの魅力で成り立つ西部劇の醍醐味がここにある。

原作を書いた小説家がイカしてる

これまで述べてきたように、『Justified 俺の正義』には西部劇のテイストが色濃く反映されている。それもそのはず、このドラマの原作となった小説を書いたのは、西部劇ノベルの名手として名高いエルモア・レナード。彼の短編小説を映画化した『3時10分、決断のとき』が、数年前に全米興行収入の1位を獲得したのはまだ記憶に新しい。その他にも『ゲット・ショーティ』『アウト・オブ・サイト』『ジャッキー・ブラウン』など、映画化された作品多数の彼をして、「(自分の小説が)映像化された作品の中で、ベストのうちのひとつ」と言わしめた『Justified 俺の正義』の面白さは、推して知るべし、なのだ。

以上のように、『Justified 俺の正義』は相当イカしたドラマだし、批評家たちからも高い評価を得ているのだが、その地味でダークな印象のせいか、そんなに話題になることもなく、私の周囲でも観ている人は少ないようだ。一ドラマファンとして、この良質なドラマがこの先も末永く続き、やがて日本でも放映されることを願っている。

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