見たもの全てを記憶できる超記憶症候群であるヒロイン、キャリー(ポピー・モンゴメリー)の姿を描いた新感覚の犯罪ドラマ『アンフォゲッタブル 完全記憶捜査』。このドラマで主人公キャリーの声を担当する甲斐田裕子さんと、彼女の元恋人で捜査のパートナーとなる刑事アル(ディラン・ウォルシュ)の声を担当するてらそままさきさん。海外ドラマの吹替えでお馴染みのお二人に『アンフォゲッタブル』の魅力を直撃! 過去に何度も共演しているお二人だけに、和気あいあいのムードでドラマについて大いに語ってくれました。
―― お二人は『ER 緊急救命室』でも共演されているので、今回の『アンフォゲッタブル』でパートナーを演じるのも息がピッタリでしたね。
てらそま え、そうですか?(笑)
甲斐田 ひどーい!(笑)。
てらそま (笑)いやー、『ER』でも共演は長かったね!
甲斐田 『ER』では数少ないカップルにならなかったキャラクターだったんですけどね。
―― すっかり気心が知れている感じですね(笑)
てらそま 知りすぎてるかも! だから今日は何の打ち合わせもしてないのに、二人ともオレンジ色の服だし(笑)。
甲斐田 もう、朝来てビックリ!まさかのペアルック!
てらそま でも確かに余計な事を考えなくてもやりとりできるって感じはありますね。
甲斐田 特にこのドラマはセリフ回しが早いので、あれこれ考えている余裕がないんです。
―― 確かにドラマ全体としてはせかせかした印象は全くないのに、実は情報量が多い作品ですよね。
甲斐田 多いですね。1時間じゃ絶対入りきらないような事をやってるんですよ。
てらそま だからこの情報量の多さをこなすために家で少し早めに話す練習をしたりもするんですけど、いざとなると、それほど早口では話してなかったりもするんですよね(苦笑) やっぱり相手とのやりとりな部分があるから。彼女のフォローもしなきゃいけないしね(笑)。
甲斐田 そう。私、セリフこぼしちゃうことがあるので、いつもフォローしてもらってます(笑)。
てらそま そこはもうチームですからね。みんなで上手くバランス取りながら演じて、そういう空気がちゃんと吹替にも反映されるといいなと思ってます。
―― 本当は最初にこの作品を見た印象をお聞きしようと思っていたのですが、ペアルックに気を取られて話がソレてしまいました(笑)。
甲斐田 すごく面白いと思いました。実は私、最初この作品って映画だと思って見てたんです。
てらそま そうそう! 分からなかったよね、最初。
甲斐田 そうなんです。映画だと思って見てたら45分で終わってビックリしたんです(笑) 記憶を辿る時の映像での見せ方とか本当にカッコよくて、すごく丁寧に作ってありますよね。
てらそま 今、捜査モノって本当に多いじゃないですか。その中でこういう形のドラマがみなさんの中でどう受け止められるんだろうって思いましたね。他の作品との差別化として、記憶を再現して捜査するっていう方法で来たか、と思って。本当にいろいろ考えて作り出してくるよね(笑)。
―― キャリーとアルの言動を見て、お二人が共感を覚えるポイントはどこでしょう?
甲斐田 キャリーは、自分一人で頑張っちゃうところかな。なんて(笑)。
てらそま がんばってらっしゃるらしいですよー(笑)。
―― でも分かる気はします。今はキャリアを持っている女性も多いし、頑張りたくないと思っても頑張らざるを得ない時ってありますもんね。逆にてらそまさんはいかがですか?
てらそま んー、どうなんでしょうね。分からなくはないんですけどね。チームリーダーとして捜査の指揮を執る責任も重いだろうし。アルは案外その辺の熱い部分を出してるので、僕もどちらかというと熱いタイプだから、共感する部分はありますね。
―― 捜査モノって捜査に主眼を置いていると、キャラクターが置いてきぼりになりがちなんですけど、このドラマはキャラクターの個性がよく出てますよね。
てらそま そうなんですよね。僕らだけじゃなくて、マークやローといったサブキャラもいい味出してるんですよね。
甲斐田 吹替え版はオリジナルよりもっとキャラ立ちさせようとみんなで頑張ってるんです。
―― その辺も吹替え版の魅力になってきそうですね!
てらそま 出来るといいんですけどね。何せ早いんですよ、ホント。余裕かましてキャラをもっと立たせようという域までなかなか行かなくて(苦笑) 伝える事がこのドラマは本当に多い!
甲斐田 キャリーの話に重きを置いている分、捜査関係の描写はスピードアップされてるし。
てらそま 本来ならもっとじっくり描くんだろうけど、次の情報が出てくるのが早いことといったら!
―― そういう展開が早いという部分も分かって見ると、より面白くなりそうですね。でもその分キャリーの人間性を深く掘り下げているので、その切替は大変じゃないですか?
甲斐田 突然シーンがパっと変わりますからね。でも楽しいですよ!
―― 割と切替は早い方なんですか?
甲斐田 そうですね、どうかな(笑)。でも、うん、好きですよ。何かひとつを突き詰めていくよりは、いろいろやっている方が変化が出ておもしろいんです。
てらそま 例えば過去と現在みたいにガラリとシーンが変わる時は、監督さんが「一度止めますか?」って聞いてくれたりするんだけど、結構そのままで大丈夫って言って続けちゃうよね。
甲斐田 (過去のシーンは)9年前っていう設定ですが、そんなに年取ってないですからね。
てらそま 9年っていうのもなんかちょっと中途半端だよね。
甲斐田 でも女の9年は大きいはずなんだけどな。彼女はあんまり変わらない(笑)
―― キャリーの持つ超記憶症候群についてはいかがですか? 主演のポピー・モンゴメリーも「1日くらいならなってもいいわ」なんて言ってましたが、実際自分がそんな能力を持ってたらどうします?
てらそま それは困るよね。もう忘れたいことだらけですから、人生は。やっかいな能力ですよね。
―― でもきっとセリフ覚えは超ラクチンになりますよ!
甲斐田 それは大きい!(笑)
てらそま そういう事ができる役者さんは実際いますよね。慣れというのもあるんだろうけど。
甲斐田 でもどうなんだろう。セリフ覚えは楽になるかもしれないけど、役者としての面白味はなくなっちゃうのかな。舞台でもセリフは覚えても、最後に1度忘れないと新鮮味が出せなくなるって言うじゃないですか。全部覚えちゃってると、頭の中にある台本を読んでるだけになっちゃう気がする。そうはならないんですかね?
てらそま うーん。でもその能力は記憶するってだけだから、表出する事とはまた違ってくるのなか、って思うけど。
甲斐田 なるほど。
―― 男女のコンビものって、通常はコンビを組んでからお互いが気になる存在になっていくものですけど、このドラマは最初から元カレ、元カノの関係ってところが新鮮ですよね。でもお二人なら実際に元恋人と一緒にお仕事出来ますか?
甲斐田 出来ますか?
てらそま うん、まぁ、そこは僕らは恥をさらしてなんぼな職業だから(笑) 例えばそういう役をやったりすると、やっぱりなんとも言えない空気が出たりするでしょうしね。それは作ったものとは違うものがあるだろうし、面白いんじゃないかな、と。
―― もう割とその状況を楽しめるというか、面白い作品が出来るなら、ってプラス思考で捉える感じですか。
てらそま 意外とそういう時ってね、身につまされるような事も多いんですけどね。夫婦役とかやってたら、「あ、痛い」って思うようなセリフがあったりね。「なんでこんなにダイレクトに来るんだ、なんてタイムリーな話なんだ」って思うような事が不思議と来るんですよ。そんなの家で練習してたらもう大変!(笑)
甲斐田 私はどうなんだろう? やってみたい気もするけど...。経験はないから(笑) どういう別れ方したかにもよるとは思うんですけどね。
―― 別れ方は結構重要ですよね。でもこのドラマの二人はそんなにいい別れ方したようには思えないんですけど...。
てらそま お姉さんの事件の捜査を打ち切ったりしたことが影を落としていますしね。キャリーが大きく引きずっているよね。
甲斐田 アルには彼女がいるし。ドラマには最近出て来ないけど(笑)
てらそま 出て来ないね。ま、キャリーとアルはくっつきそうでくっつかない方がいいんでしょうけどね。
―― そこは男女のコンビものとしては宿命ですからね。
甲斐田 やっぱり微妙な距離感が一番楽しい(笑)。
てらそま とは言えいつまでも回想で引っ張るのも難しいし、現実でも何らかの動きは欲しいよね。
―― 海外ドラマファンの人にはこのドラマのどんなところに注目して欲しいと思いますか?
甲斐田 このドラマって実はあまり捜査モノって感じがしないんです。半分くらいキャリーの話になっていて、回想があったり、お母さんとの話があったり。捜査だけに主眼を置いてないんですよね。だから捜査モノだと思って見ると、ちょっと違う印象を覚えるかもしれない。
てらそま そうだね。捜査の部分については意外と表層で収まっているところもあったりして。
甲斐田 本当に描きたいのはキャリーの超記憶症候群の事だと思うんですよね。キャリーの記憶の再現をしていく映像はすごく凝っているのでぜひ見て欲しいです!
てらそま その超記憶症候群とお姉さんの事件がどうリンクしていくのかが、シーズン1での大きなポイントになると思うので、そこはぜひ見て欲しいですね。
甲斐田 全てを覚えているキャリーと、全てを忘れていく認知症のお母さんとか、"記憶"にまつわるキーワードがいろいろ散りばめられていて、そこがすごく面白い。
てらそま これを見ると幸せとは何なのか考えさせられるよね。記憶する事が幸せなのか、忘れていく事が幸せなのか。記憶することで何かに縛られているのかもしれないし、その束縛から解放される幸せもあるな、などと考えると、記憶というのは深いテーマだなーと思いますね。
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