『キャッスル』に見る男女バディ・ドラマの魅力

2012年8月8日 2012年8月8日 ※本ページにはアフィリエイト広告が含まれます

昔から捜査モノのひとつの形態として人気があるバディもの。特に男女のコンビは、上手くケミストリーが発揮されると、ドラマの強力な武器になるもの。そのケミストリーが最強に発揮されているのが『キャッスル／ミステリー作家のNY事件簿』だと、私はここで宣言してしまおう！

男女バディの魅力はなんといってもくっつきそうでくっつかない、そのじれったさ！人気がある限り何年でも続くアメリカン・ドラマでそんなに簡単に主人公がくっつくわけがないのは分かっちゃいるけど、それでもやっぱり気になるの！という気持ちを上手く引き出すのが良い男女バディ・ドラマ。これが『キャッスル』はとにかく上手い！

セレブ作家でノリは軽いがその知性とウィットが魅力のキャッスルと、美貌といい、その有能さといい、誰が見てもいい女のベケット。一見すれば恋愛に発展するのに障害などなさそうな二人の恋愛ケミストリーを、ドラマの中にどう組み込むか。『キャッスル』は"気持ちに素直になれない自分"という障害を置く事で、コミカルな作風の中に良質な恋愛ドラマを見るような切なさやトキメキを提供することに成功しているのだ。若い頃と違ってガツンと恋愛に突っ走れない大人の恋。一緒に仕事をしている以上、気まずくなって仕事に支障をきたしてはいけないと、なかなか簡単に恋愛に突っ走る事ができないのが大人の事情というもの。キャッスルとベケットが仕事を通じて信頼関係を築けば築くほど、この障害も大きくなり、「やー、それ分かる！分かるよ～!!」と、TVの前で全力で頷く女性ファン多し。（ええ、もちろん私もそうですが、なにか？）ようやく意を決しても、タイミングが合わずにその想いを飲み込んでしまう。それがまた切なくて悶絶！大人なら誰もが感じた事があるであろう、この普遍的なジレンマの取り入れ方が絶妙すぎて、まんまと『キャッスル』の魅力にハマってしまう。この作風を見ると、往年の傑作『こちらブルームーン探偵社』を思い出すが、ブルース・ウィリスとシビル・シェパードのカップリングは、今も男女バディのドラマを語る上で必ず名前が挙がる名カップル。『キャッスル』はまさにこの名カップルのDNAを引き継いでいると言えるだろう。

その『キャッスル』のライバルとして真っ先に思いつくのが『BONES－骨は語る－』だ。『キャッスル』よりも4年ほど早く番組がスタートした『BONES』は、その分、主人公のブレナンとブースの関係も進化しているが、恋愛に発展する障害となっているのは、ブレナンの変わり者すぎる性格によるところが大きい。なにぶんブレナンは対人スキルに著しく問題があるので、その彼女を常にフォローする常識人のブースとブレナンの関係は、時に恋愛というよりも、まるでブースが保護者に見える事がある。それではそう簡単に恋愛に発展しない（できない）のも頷けるというもので、これもまた上手い作り方だ。この変わり者と常識人の組み合わせで思い浮かべる作品と言えば、『Xファイル』だろう。こちらでは変人なのはモルダーの方だったが、その立場を逆転させた上で、『Xファイル』とはまた違った恋愛ケミストリーを発揮させたのが『BONES』なのだ。

でも『キャッスル』には『BONES』にはない秘密兵器があるのを忘れちゃならない。そう、サブ・キャラクターであるライアンとエスポジートのブロマンス（＝「男同士の美しい友情」）ですよ！　男女の主人公に恋愛ケミストリーを発揮させるのは、ある意味王道であり、ドラマを見ている方もある程度折込済みなところがある。『キャッスル』でも、最初は二人の主人公の関係に目が行きがちだけど、気が付けばあれれ？と気になってくる存在がライアンとエスポジートなのだ。エスポジートに対する信頼やバディ愛を割と素直に口にするライアンと、そんな彼を適当にあしらいながらも実はまんざらでもなさそうなエスポジートのやりとりは微笑ましく、しかもストーリーが進めば進むほどこの萌えポイントが増えてくるのだからもうキュン死寸前！　の女性ファンまたも続出。（ええ、もちろんこれも私のことですが、なにか？）キャッスルと3人で警察署内でバカ騒ぎをしているこの3人のシーンは、ドラマの中でもかなりの萌え要素だと、これまた断言してしまおう！