『24時間365日、作り続ける男』J・J・エイブラムスに突撃インタビュー!(前編)

20121020_s01.jpg海外ドラマ界でもっとも有名な人物と言えば誰を思い出しますか!? 俳優? 女優? いやいや、 『LOST』『FRINGE/フリンジ』そして最新作『パーソン・オブ・インタレスト』の産みの親、ヒットメーカー、J・J・・エイブラムスその人ではないでしょうか。
年中多忙なJ・J・がなんとインタビューを受けてくれることになり、急きょ駆け付けたNAVI編集部。J・J・が今何を考えているのか。ドラマに対する思いなど、時間の許す限り胸の内と頭の中身をのぞいてきました!<前編>ではこれまでにJ・J・がこれまでに手がけた作品について、<後編>では、新作『パーソン・オブ・インタレスト』を中心にお届けします!

――早速ですが、(ご自身が製作された)TVシリーズの中で、一番気に入っている作品は何ですか?

どの企画も参加できてラッキーだと思っているよ。とりわけ好きなのは『フェリシティの青春』かな。何せTVシリーズを手掛けるのが初めてだったから、多くを学ばせてもらったし、とてもハートウォーミングな楽しいシリーズだ。そうはいっても、『エイリアス』も『LOST』も『FRINGE/フリンジ』も『パーソン・オブ・インタレスト』も好きだし、それぞれも魅力があると思うけどね。どれか一つに絞るのは難しいね。

――シーズンを重ねることが難しく、シビアな業界にも関わらず、最近ではスピルバーグなど映画監督もTVシリーズに本格参戦する人が増えているように思えるのですが、そんな現在のTV業界の現状、またはJ・J・.が感じることを教えてください。

常にチャレンジングだよ。持ち出される企画でパイロットにこぎ着けられるのはごくわずかだし、パイロットのなかでも放映されるのはごくわずかだし、放映されても1シーズン以上続くのもごくわずかだ。だから常に闘いだ。そうはいっても、今はTVの黄金期だと思っているよ。長編映画はマーケティングに左右されることが多いし、スタジオは常にマーケティングできるか否かということを視野に映画作りを決めている。だから映画ではリスクに挑むことが少なくなってきているが、その分TVではリスクを厭わない企画が増えてきている。その結果アメリカのTVや海外のTVでも、ワクワクするような面白いシリーズがどんどん出てきているんだ。

映画ファンにとっては残念なことだが、今は映画よりもTVでのほうが面白いものが見られる。映画でもオリジナリティを打ち出したいところだが、最近のトップ10リストを見ても、10年前やそれ以前と比べると続編、リメイク、リブートではない映画の数が格段に減っているだろう? だから今はTVのほうが面白い。TVがメディアとして(映画よりも)劣等であるという偏見もなくなってきているので脚本家や監督や俳優達がTVに流れ込んできているし、結果、独創性に富んだ、エッジの利いた、キャラクターもストーリーも面白いものがどんどん出てきているよ。
20121020_s05.jpg

――TVシリーズの面白さはなんですか?

TVシリーズは運が良ければ数年間続くロングランになって、映画では到底できないような、ニュアンスを追求出来たり、バックグラウンドを丹念に描き込めたりする。うまくいけば何十時間にもなるから、キャラクター達が何を考えているのか、何に突き動かされるのか、何が気に食わないのかなどいろいろと描きこむことができる。つまりキャラクター描写の土台となる部分をもっと丹念に描ける。映画だとほのめかす程度に終わるでしょ。それはそれでチャレンジングだからいいけど、TVではそこで思い切ったことができるからいいね。そうやってキャラクターに生命が吹き込まれるのはワクワクするね。

――ご自身が手掛けた『ALCATRAZ / アルカトラズ』 の見どころを教えてください

20121020_s02.jpg『アルカトラズ』のアイデアを最初に教えてもらった時、すごく気に入ったんだ。つまり、アルカトラズは凶悪犯罪者達が入所するカリフォルニアの刑務所なんだけど、語られてきた史実は実は虚構であり、移送されたはずの数百人の囚人たちはどこかへ消えてしまっている、そしてその事実が隠ぺいされたという設定だ。その囚人たちが現代に甦るというアイデアがとても魅力的で、キャンプファイアを囲んで語れるような面白い話だと思い、この企画を追うことにしたんだ。

――では、『FRINGE/フリンジ<フォース・シーズン>』 の見どころは?

『FRINGE/フリンジ』をあそこまで面白くしている要素の一つは二つの世界が描かれているという点にあると思う。フォース・シーズンの大部分はパラレル・ワールドで展開されるという大胆な設定だ。それとピーターとオリビアのラブストーリーも注目ポイント。今までは何となくほのめかしていた程度だったが、フォース・シーズンでははっきりと二人の関係を描いていき、それがフィフス・シーズンのドラマチックな展開につながっていく。このシリーズの何が素晴らしいかというと、この世界においてはあり得ないようなストーリーでありながらも、徹底的に感情に訴えかけるような作りになっているという点。展開や設定だけではなく、登場人物達の気持ちが大きな柱になっている。フォース・シーズンはこの部分において特に秀でていると思う。

――今回、とうとう『FRINGE/フリンジ』 ファイナルを迎えることになりましたが、今のお気持ちはいかがですか?

20121020_s03.jpg『FRINGE/フリンジ』は大好きなシリーズだ。今まで見てきた中でも最も奇妙なシリーズの一つに入るね。人の心情をしっかりと描きつつもあれほどユニークな設定をベースにしたシリーズに関わることができて本当に嬉しいと思っているよ。ファイナル・シーズンは13エピソードで放映されるので、フィナーレに向けてストーリー展開のペースをしっかりと作りこむことができた。ファイナル・シーズンは感情に訴えかけつつも、ハラハラする展開だよ。それとびっくりするようなエンディングになっているよ。

――ご自身で映画やドラマをプロデュースする際に、特に気をつけている点などを教えてください。

今の社会を反映しつつも、新鮮で、皆がびっくりするようなものを作りたいと常に思っている。毎回上手く行くわけではないけどね。もちろんプロデューサーとしての責任もあるので、スケジュールや予算など、気をつかわないといけないことも沢山ある。それと、毎回人々をインスパイアできるような、作品をより良いものにしてくれるような人を登用するようにしているよ。

そういう意味では『パーソン・オブ・インタレスト』はすごくラッキーだった。たまたま入ってきた話で、ジョナサン・ノーランのアイデアだ。今回はグレッグ・プレイグマンも製作陣に加わってもらっているけれど、彼も素晴らしい仕事をしてくれている。彼らのような秀才や、素晴らしい俳優達と組めると、僕はプロデューサーとしてサポートしていればいいという状況になるしね。

<後編>につづく。