あの伝説のドラマ『俺がハマーだ!』復活! ハマー役・羽佐間道夫に突撃インタビュー!

20121102_s01.jpgTV放送から25年...あの伝説のコメディ・ドラマ『俺がハマーだ!』『新・俺がハマーだ!』が再び登場すると聞いて、いてもたってもいられなくなった海外ドラマNAVI編集部は、刑事スレッジ・ハマーを演じた羽佐間道夫に突撃取材を決行!

世界中を爆笑の渦に巻き込んだ、世界一凶暴で、宇宙一おバカな刑事ハマーと、ドロー、そしてトランク署長が巻き起こすスーパー・ナンセンス・ギャグ炸裂の作品についてたっぷりと語ってもらった。

――久しぶりの『俺はハマーだ!』ですが、今の心境はいかがですか?

ハマーって、一定の周期で盛り上がっている気がしますね。今回、8年ぶりなんですけど、なんだか墓を掘り返されて蘇ってくる気分で、時々ゾンビみたいにお棺から出てくるって感じでずっと続けているんですよね。自分たちの意識では、そんなに続くとは思っていなくて。よっぽど周り(ほかの作品)がつまらなかったんでしょうね(笑)。

――『俺はハマーだ!』が面白いから続いてるんですよ

この作品は、吹き替えることによって蘇った作品の一つです。高橋和枝さんがやった『ルーシー・ショー』なんかもそうですけど、とんでもなく面白くて、それと同列の作品だと思うんですよね。それまでの作品は、新劇の役者みたいな人たちが吹き替えることが多かったもんだから、コメディに慣れてないんですよね。この作品の役者の小宮和枝さんは劇団エコーにいたし、それから内海賢二さんはコメディタッチの劇団にいたし、僕だけクラシックなんですよね。でも若いころ寄席でアルバイトしていたので、そこで培われた感覚がうまく合体してコメディっぽくなったんじゃないかな。

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――作品同様、笑いが絶えないアフレコ現場だったんですか?

すごく家庭的な雰囲気でしたね。内海さんと小宮さんと僕と、とても仲が良くて、今でも仲いいけど、なんか長屋の会話みたいなね。あんまり真面目な話しはなかったね。みんな冗談ばっかりでね、とても面白い雰囲気をもっていましたよ。
みんなでキャッキャ言いながらやってるって感じ、これって大切なことなんですよね。こういうスタジオの現場は閉じられた世界の中でやるわけだから、すごくみんなで和気あいあいとやるっていうことを、いつも意識していたと思います。

――三人の関係性が作品に出ていますね

三人がレギュラーで、あとはみんなゲストなんですよ。来る人はみんなその雰囲気に飲まれるんですよね。だからそういうスタジオの雰囲気作りっていうのは、ほんとはコメディの前にものすごく大切なの。大抵、吹き替えの現場って、シーズンものだと核になる先輩が必ずいるものなんですよね、席も決まっているんです。だけど新人で入ってきた人は、どこに座っていいのかわからない。うっかり主役の座るところに座っちゃったりすると周りから白い目でジーッと見られてしまいます。そういう雰囲気の場だから、やっぱりコアになる人がどんな雰囲気を持っているかによって、それが作品の出来にも反映していくっていうことがあると思いますね。

――ハプニングや収録秘話はありますか?

作家と翻訳家とディレクターと僕っていうのは、比較的「あんまり真面目にやるのはやめようぜ」って雰囲気があったと思いますね。みんな面白がってやっていたことは事実ですよ。

――どこまでがアドリブでどこからアドリブじゃないのかがわからないくらいですね

"どこまでがアドリブでどこからアドリブじゃないのか"。まさにそこが狙いなんですね。本当にその人が生きているんじゃないかって感じさせるためには、全部こいつが喋ってるんじゃないかな?っていうふうに思わせたいんです。「ああ、台本を読んでるな」っていうのは面白くないもの。そういうのをすごく意識していました。

――当時の台本には(修正の)赤字がいっぱい入ってたりしたんですか?

だからみんな切っちゃたんですよ。バレないように。(笑)
それを見せちゃって、こっちの方が面白かったじゃないかって言われたら嫌だからね。(笑)

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――羽佐間さんからみて"ハマー"というキャラクターはどうですか?

僕はそれまでに、ディーン・マーティンなどの二枚目半的な役者をずいぶん吹き替えていますから、彼はその中の一人です。ハマーのキャラクターは『裸の銃を持つ男』や『ピンクパンサー』などのコメディをやってきた意味での延長線上のもの。『裸の銃を持つ男』なんてすごく似ていると思うね。
逆に、僕にとってロッキー(あの有名なシルヴェスター・スタローンの!)なんてとんでもないキャスティングだったんですよ。

――海外ドラマNAVIをご覧になっている方って、吹き替えファンがすごく多いんです。そのファンに向けてオススメのコメントを。

私がずっと演じてきたライトコメディ映画のディーン・マーティン、その元はダニー・ケイって人がいたんですよ...。今ではディーン・マーティンって言ってもわからないかもね。「ジンマシンですか?」なんて言われちゃいそう(笑)。ハマーはそういう人たちの延長線上にあると思うんです。ある意味、喜劇の集大成。シリーズものとして。
面白い作品はいっぱいあるんですよ。例えば『SOAP』っていう作品があって、三ツ矢雄二さんがデビューしてきたんですけど、スタジオの中で異彩を放っていましたよね。いきなりオカマだからさ。その当時から人を惹きつけていました。そういう人たちが集まってやった『SOAP』は良かったね。挙げればたくさんあります。他には戦争映画なんですけどコメディの『M*A*S*H(マッシュ)』。ものすごい緊迫感のあふれる所にコメディがあるというね。『俺はハマーだ!』のように、一生懸命自分たちでジョークを言いながらやりあった作品がいまだに残っているということは、とてもありがたいことです。

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――羽佐間さんからみてこの作品の魅力というのはどんなところですか?

この手の作品が少なくなりましたね、今のテレビは。とにかく拳銃撃って...。このドラマは人を殺してないと思うんですよ。血を流すシーンも無いです。そこに作品の意図がありました。泥棒がまぬけだったり、捕まえたらオカマだったりとかいろんなことがありました。作品自体がとてもヒューマンな作品なんだと思いますね。ものすごい強盗みたいなのが出てきても、どこか可愛さなんかが残っているみたいな。
『特攻野郎Aチーム』もそう。爆破シーンがたくさんあるんですけど、具体的に撃って血を流してどうしたっていうのがないんですよ。それがアメリカの一時的な文化だったんだと思います。今はもう映画館に行くと全部首が飛んじゃうとか、バイオレンスばっかりになりました。きっとみんながバイオレンスじゃないと承知しなくなっちゃったんですね。そこにエクスタシーを感じているのかもしれないけど、どうも今の作品はつまんないですよね。それからモンスターが出てくるとか、想像の世界のものばかりが登場していて、『俺はハマーだ!』のようなリアルな、しかもユーモアがある作品をぜひ観て欲しいですね。

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20121102_s06.jpg『俺がハマーだ!』『新・俺がハマーだ!』DVD-BOXは、ポニーキャニオンから2012年11月2日発売。いずれも12,600円(税込)

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