『スタートレック:ヴォイジャー』に登場する緊急用医療ホログラム、通称"ドクター"は、セブン・オブ・ナインと人気を二分するキャラクター。そんなドクター役を演じたロバート・ピカードは、当初は「最悪の役をもらった」と思っていたとか。スタートレック(以下、ST)公式サイトのインタビューで本人が明かした。

本作のパイロット製作時、ロバートの配役が決まったのはずいぶんあとのほうだった。スタジオ入りした時点で、他の共演者たちはお互いに顔見知りになっていたため、ロバートは自分の存在をアピールしなければいけないと思ったという。

「ところが、パイロットではほとんどやることがなかった。だから当初は周囲にこう漏らしていたんだよ――"新しいSTのパイロットに出ることになった。きっと成功する。子供たちを大学に行かせてやることができるだろう。でも、僕がもらったのは最悪の役だ"とね」

ところが、出演を重ねるうちに印象は変わっていった。「皮肉な話だよ。一番つまらない役だと思っていたのに、こんなに楽しい体験ができたんだから。STに出ることでSFというジャンルがよく理解できた。以前にも同系統の作品をやったことがあるけれど、ちょっとだけだったからね。STに出ることで、内輪の人間としてSFを学ぶことができた。ファンをこんなに魅了するのはなぜなのか、SFやSTがなぜそんなに大きな意味をもつのか、といったことが理解できたんだ」

『宇宙大作戦/スタートレック』のスポックや、『新スタートレック』のデータのように、ST作品では人間社会の"アウトサイダー"ともいえるキャラクターが重要な位置を占めることが多い。『ヴォイジャー』においては、ドクターがそのひとりだったというロバート。

「知らないうちに手にした自分の役こそが"アウトサイダー"だったことを思い知らされた。最初のうちは、スポックに相当するのはティム・ラスが演じるバルカン人トゥヴォックだと思いこんでいたんだ。でも、少なくとも『ヴォイジャー』においては、人工知能のドクターこそがスポックの後継者だった」

たしかに、ドクターははじめこそは人間味を欠いたホログラムにすぎなかったが、STの得意とする人間性の探求をテーマとしたエピソードで主要な役割を演じることで、著しい成長をとげていった。しかし演じる本人でさえ、当初はそこまで予想していなかったというのは興味深い話だ。(海外ドラマNAVI)