シーズン7第12話で150話を迎える『クリミナル・マインド FBI行動分析課』。それを記念して、レギュラーキャストの吹替えを担当する森田順平さん(ホッチ)、小川真司さん(ロッシ)、深見梨加さん(プレンティス)、咲野俊介さん(モーガン)、森久保祥太郎さん(リード)、園崎未恵さん(J・J)、斉藤貴美子さん(ガルシア)のBAUチーム座談会を敢行! 総勢7名による『クリミナル・マインド』談義、ドラマの魅力から吹替え収録現場の裏側まで、大いに語ってもらいました!
――シーズン7で『クリミナル・マインド』も150回目を迎えるということで、まずはおめでとうございます。という事で、記念すべきシーズンを迎えてのお気持ちをお聞かせ下さい。
森田 あっという間といえばあっという間だし、長かったといえば長かったし...。特に最初の頃は実話をベースに作ったエピソードも多かった事もあって、正直こんなに長く続くとは思ってなかったんですよ。ネタもそんなにたくさんあると思ってなかったんですけど、まぁ、あるわ、あるわ(笑)しかも凄味もどんどん増してくるし。こうやって続く事は僕らにとってもすごく嬉しいし、シーズンを重ねてより面白くなってきているとつくづく思いますね。吹替えメンバーも出入りはあるんだけど、ほぼずっと同じメンバーでやってきているので、もう家族のような感じになってますね。ここにいる事がすごく自然なんです。
園崎 私はあわや降板か!?という時期もあったんですけど(笑)、彼女がお休みしている期間はとっても寂しい思いをしていたんです。海外ドラマの吹替えはいろいろやらせて頂いているんですけど、シーズン1からずっと通して出ていて、こんなに長く続いている作品は初めてだったので...。吹替えはシーズン1、2同時に収録していたので、実質6年なんですけど、これだけ長く続いていると、演じているA.J.クックさんにもいろんな変化があって、私自身もこの6年の間にいろんな事があったので、そういう変化を一緒に過ごしてきた6年だったな、と強く感じているんです。
それと、順平さんも仰ってましたけど、吹替えメンバー全員家族的なんですよね。作品の陰惨さとは本当に真逆で(笑) 内容がダークだからこそ、収録している時以外はあたたかい気持ちでいたいというのがあるのかもしれないですね。ドラマも年々メンバーの一体感が増しているので、これで10年行きたいなぁって思ってます。
咲野 こうして6年間やってきてるわけですけど、このドラマは何年やってもまったく慣れないというね(全員爆笑) それがとっても不思議なドラマですね。ホント、何でなんでしょう? 普通は何年かやってればたいがい「こうだろう」というものが出てくるものなんですけどね、『クリミナル・マインド』はまぁ、リハーサルに時間がかかる(笑) 基本的にこのドラマって、あんまりプライベートな部分を話さないんですよね。素の部分が見えにくい分、いくら家でいろんなパターンを準備してきても、現場で全然違う事があるんですよ。多分それがいつまで経っても慣れない一因なんだと思うんですけど、だから収録が終わるとすごく疲れる(笑) だから僕は10年続いたら持たないな~、と思います。
全員 ええええ~っっ!!!!
森久保 なんちゅーことを!(笑)
―― でもシェマーが降板しない限り、咲野さんも降りられませんよ(笑)
咲野 そりゃぁ、向こうの俳優さんは肉体派だもんなぁ。
―― でもモーガンとガルシアの絡みを楽しみにしているファンの方もたくさんいますよ!
斉藤 楽しいんですけど、最近咲野さんが...何というか...
深見 収録の裏側ではかなり突っ込んで、突っ込まれてという感じで。
斉藤 かなりいじられてます。なんかいつも食いしん坊キャラな扱いで、ジャレてくるんですよ。
森田 モーガンとは違う愛の形だよね。
咲野 愛かどうかは俺には分からないけどね。
園崎 (笑)傍から見れば愛ですよ。
斉藤 それに乗っかって、森久保さんとか、最近は小川さんまで一緒になって私をイジッて来るんですよ。
深見 すごくガルシアと似てるんですよ、立ち位置的に(笑)
斉藤 収録の現場でもみなさんに本当に可愛がっていて頂いてて、咲野さんも私が着てくる服に対して、パイナップルみたいだとか、苦瓜みたいだとか言ってくるんです。
深見 黒電話ってのもあったよね(笑)
斉藤 そう、黒電話とか。なんかシルエットの丸いものにばっかり例えるんですよ。私が気に入って着てきたセーターをにこごりみたいとか言うし。そしたら小川さんまでそれに乗っかって、「未恵ちゃんがカラータイツを履くとちゃんと色が出てるけど、貴美ちゃんが履くとなんか色が薄いね」とか言うんですよ(笑)
小川 言ったっけ?
斉藤 覚えてないんですかーー!!
全員爆笑
森久保 もう全然『クリミナル』関係ないし(笑) お前の身の上話じゃねーかっ!(笑)
斉藤 そうでした(笑) それくらいみんなに可愛がって頂いて、楽しく過ごしているので、はい、ありがとうございます。
咲野 あ、感謝なのね(笑)
斉藤 だからきっとガルシアも向こうの現場ですごく愛されている人なんだと思います。私自身はメカがまったくダメなので、最初彼女が何を言っているのかまったく分からなくて、その都度PCに詳しい人に意味を聞いたり、最近は自分でググるという事を覚えたので、そうやって調べるようにして少しずつ覚えて、出来た気になってます(笑) ガルシアはいろいろ掛け合いはあるんですけど、いつも一人別の場所にいるので、たまにBAUのメンバーにくっついて出張に行くエピソードなんかでは、私自身もテンションが上がっちゃうくらい、実質6年間ガルシアの声を演じてきて、私の中にガルシアがいるような気持ちになってますね。
森久保 僕もみんなが言うように、こんなに長くお付き合いさせてもらえる作品になるとは思ってなかったんですけど、でも陰惨なテーマの中にもちょっとクスっと笑えるようなシーンがあったり、それぞれにもいろんなドラマがちょこっとあったり、そういうところがみんなから長く愛されている理由なのかな、と思ってます。個人的な話をすると、『クリミナル』に会うまで、僕はシリーズものの吹替えの仕事をする機会というのがほとんどなくて、初めて長く担当する事になった外画の作品という事でもすごく思い入れがあるんです。僕が担当しているリードを演じるマシューも同じように、この作品が初めてのレギュラー作品だったりして、すごく似てるんですよね。だから彼が1話の頃からお芝居がどんどん変わってきているのもよく分かるし、僕自身も吹替えの仕事に対して少しずつ変わってきてて、ちょっとおこがましいけど、マシューと一緒に僕も成長しているという気がしてます。
深見 私はシーズン1の最後からなので途中参加なんですけど、ま、このように(笑) あっという間に親戚付き合いさせて頂いてます(笑)
咲野 なんで親戚なのよ。家族でしょ?
深見 家族というにはキャラがバラバラかな、と思って(笑) ともかく、すごく入りやすくて、内容は凄惨でも現場はアットホームっていうのは、多分本国のメンバーもそうなんじゃないかな、と思うんです。すごく仲が良くて、私、ツイッターとかもチェックしてたりするんですけど、良い雰囲気が伝わってくるので、そういうチームワークがあってこその『クリミナル・マインド』なんだと思うんです。長いシリーズをいくつかやってて思うんですけど、不思議なもので実際に向こうとこっちの雰囲気がリンクしてくるんですよ。特に良い作品になればなるほど、そういう空気が出てくるので、このドラマももっともっと良い雰囲気が出てくるんじゃないかと思いますね。
小川 ロッシはシーズン3の途中からの登場だったんですけど、それでももう5年なんですよね。最初は後から登場した事もあって訳が分からなかったんですけど、みんなに読み方を教えてもらったりして、ここまでやってこれましたね。難しい言い回しが結構あるんですよ。秩序型と無秩序型とか、思わず舌を噛みそうなものが。
森田 でも文字だけで見るとその苦労が分らないという(笑)
小川 (笑)本当にあっという間に5年が経ったような感じなんですけど、まぁ、ロッシはメンバーの中で最年長だったり、すぐカッカするところなんかも僕と似ているし、みなさんに助けてもらいながら楽しくやってます。
斉藤 そんな事仰ってますけど、すごく穏やかですよ!
―― 150回を迎えるほど長く続いているシリーズだけにいろんなエピソードがありましたけど、印象深く覚えているのはどんなエピソードですか?
咲野 150回の話が出たところで言うと、やっぱり100話目でしょう。
森田 あれはね、やっぱ辛かったよね。ほら、ホッチの奥さんが...
女性陣 ああ~!
森田 多分後にも先にもあそこまですごい話はないと思う。
深見 200話目になったらどうなっちゃうんだろう...。
咲野 (深見さんに)あと、1回死んだよね?
深見 あ、そうだ。私は1回死にました(笑) あれもビックリしました。J・Jと同じく降板か!?と思ってたら戻ってくるって言われて、どうやって?って思いましたよ(笑)
斉藤 でも最後にちょっとプレンティスっぽい人のシーンが入ってましたよね。
深見 あれって、復帰が決まって後から足したのかな?(笑)
森田 ホッチとJ・Jの意味深なシーンも後付けとか?(笑)
園崎 爪とかも、今までやった事ないのにいきなり出てきたりとか。
森久保 そういうの結構あるんですよ。いきなり偏頭痛持ちになってたり(笑) そうするとこれは降板の伏線か? ってヒヤヒヤする(笑)
深見 長くやってると、そういう向こうの製作側の事情が見え隠れするのも、それはそれで面白いですよね。
―― 確かにこれだけ長く同じ役者さんで続いていると、降板は気になりますよね。しかも犯罪ドラマだから、いつ死んでもおかしくないですし。
森田 ホッチだってありえるもんね。そういえばいきなり難聴が治ってた(笑)
深見 また何かあったら難聴が復活するんじゃないですか?(笑)
森田 忘れた頃に(笑)
森久保 でもホッチは今シーズンはちょっとロマンスの香りが...。
森田 たまにはね~。いっつも怖い顔してるから(笑)
斉藤 でもあの回は久しぶりにホッチの笑顔を見た気がします(笑)
森田 ジャック(息子)といる時ですら、最近はあんまり笑顔を見せないですからね。
深見 最近、向こうの役者さんも痩せてきちゃって。
森田 シーズン明け、かなりガリガリだったよね。あれ、そうとう鍛えたせいなんだろうね。鍛えると顔が痩せちゃうから。
深見 同じように森田さんもかなり鍛えて痩せたんで、やっぱりリンクしてますよね(笑) 私が演じているプレンティスのキャラも最初は育ちの良いエリートな設定だったんですけど、最近はそういうのあんまり感じられなくなりましたよ。
森田 お母さんも出てこなくなったよね。この間ちょっと話には出たけど...。
深見 それでなんというかだんだんSっぽくなってきたというか...。あっちに引っ張られて私までちょっとSっぽくなってきました(笑)
森田 向こうがこっちにリンクしたんだよ(笑)
森久保 何かオーラみたいなものが向こうに伝わってるんじゃないですか?(笑)
小川 こっちについて来い! って言ってるような気がするよ(笑)
斉藤 容疑者を追い詰めるシーンとか、梨加姉がやってるの見てるともう怖くて!(笑) 「ごめんなさいっ」ってやってもないのに白状したくなる(笑)
咲野 演出からもちょっと抑えてとか言われてる(笑)
園崎 ちょっとSっ気が強くなると、プレンティ"S(エス)"が入ったとか言って(笑)
咲野 お母さんと言えばリードのお母さんも出てこなくなったね。
全員 あぁ、そういえば!
咲野 なんかジャージはいて他の番組で忙しいみたいだね(笑)
―― ちなみにみなさんの中で自分以外のキャラクターでお気に入りは誰なんでしょう?
園崎 私はやっぱりガルシアが大好きです!
森田 多分、みんなそうなんじゃないかな。彼女が毎回どんな格好をしてくるのか、もう楽しみで(笑) ひとつのエピソードの中でメガネ3回くらい替えてる時あるもんね(笑)
園崎 今私、シーズン1から見直しているんですけど、ガルシア地味なの! 当時はあれでも派手だと思ってたのに、今見るとシンプルなんですよ!(笑)
斉藤 最初の頃はもっと普通というか大人しい感じだったんだけど、どんどん華やかになっていってて。体が大きくてもああやって好きな服を着ていいんだ、って勇気をもらいます。
園崎 逆にあの体格だから、ああいう柄が映えるんだな、って思います。
深見 でもこのドラマって、みんなどこかに自分と似ている人を見つけられる気がする。渋い2枚目とか、可愛らしい子とか、ロマンス・グレーとか、知性派、肉体派、金髪、黒髪...
咲野 ドSとか。
小川 よりどりみどりだよね。
―― まだまだいろんな話が飛び出してきそうですが、ここで最後にドラマのここに注目してほしいというポイントを教えて下さい。
咲野 たいがいは事件が起こってそれを捜査していくのが犯罪ドラマだけど、『クリミナル・マインド』は一人でも助けるために捜査していくんですよね。もちろんダメな時もあるんだけど、基本として人を助ける事がテーマになっているのがいいなと思うんです。まぁ、物語が始まる前に一人か二人、犠牲者がいるから、その人たちが助かればもっといいだろうけど(笑)、そうすると番組が2分くらいで終わっちゃうから仕方ないとして、あくまでシリアル・キラーの最終目的を阻止して、人を助ける事を主眼にしているのは他のドラマにはない魅力だと思いますね。
深見 このドラマに出てくる事件が結構究極的なものも多いし、捜査官や事件の犯人の心理面にかなり深く迫っているところが面白いですよね。お芝居の面でもすごくやりがいがあって、日本語版で言うと、ゲストキャラクターの吹替えもかなり豪華なんですね。ちゃんとお芝居ができる声優さんをキャスティングしていて、かなり深いところまで表現しているので、吹替え版ではそういう部分も見て欲しいですね。
小川 ディレクターさんがかなり粘って、細かく演出してくれるんですよ。犯人の心理を推理していく作品なので、僕たちのセリフも難しいものが多いんだけど、肝心なところが見ている人にフっと自然に聞こえるように、すごく気を使って聞きやすいように心がけて作ってるんです。現場の僕たちは大変なんだけど(笑)、でも本当にすごいと思うんですよ。粘って、粘って一番いいところをとってやろうっていう意気込みがあって、僕たちもそのエネルギーに引きずられて、いいものを作ろうっていう心地良い刺激を受けてるんです。
園崎 収録が終わった時に達成感がありますよね。
斉藤 通常の他の作品より収録時間が圧倒的に長いですもんね。
小川 見ている方はちゃんと内容を理解してるもんね。それは日本語版の出来が良いからだと思うんですよ。
―― 声のイメージが合っていたり、細かい演出が良かったりというのもそうですけど、さらに吹替えは情報量も多いですからね。『クリミナル・マインド』のような作品は吹替えの方がより理解しやすい気がします。
斉藤 吹替えの方が絶対ドラマを楽しめると思います。細かい部分まで伝わるし、私たちも伝えられるようにこれからも10年、20年がんばりたいと思います。
森田 20年!(笑)
園崎 私、これだけはこの番組で言いたいと思ってた事があって、このドラマって犯人の気持ちをどんどん掘り下げていくんですけど、今まで普通の人だったのに、どうしてシリアル・キラーになってしまったんだろう、ってドラマを見て考えさせられる事が多かったんです。回を重ねて見れば見るほど、だんだん自分が信じられなくなってきたというか、何かのきっかけで自分も罪を犯してしまうんじゃないかっていう、自分自身に対する疑いが芽生えてきたんですよね。私たちは普段気軽に海外ドラマを見ているわけですけど、このドラマで描かれている事はというのはそんなに遠くの話ではなくて、意外と自分の身近でも起こりえるんじゃないかな、って。『クリミナル・マインド』は、誰でもそうなってしまう可能性はある、それを心のどこかに置いておくべきなのかな、って思わせてくれるドラマなんだと思うんです。
森久保 最初に犯罪心理の本をもらったんですけど、その本もそうだし、このドラマでも犯罪者の心理を掘り下げていけばいくほど、その先にある「人間って何だろう?」ってところに行き着くんですよ。その心理が面白いというのは語弊があるかもしれないけど、何か惹きつけられるものはありますよね。人ってこういう生き物なんだって。
森田 それぞれのキャラクターがそれぞれ違う発想でプロファイリングしていって、それをひとつの意見にまとめていく、その流れがすごく面白いんですよね。だからこのドラマは一人じゃ絶対成立しない。それぞれの考え方が合致してひとつの意見を導き出して、そこからまたヒントが生まれたり。一人、一人がものすごい才能の持ち主なわけで、その知恵が集結する醍醐味は大きな見どころだと思いますね。
小川 あの才能は日本の警察に連れてきたいよね(笑)
Photo:『クリミナル・マインド FBI行動分析課』(c)ABC Studios.