妻が主役な"妻系"海外ドラマに注目!

ファイナルシーズンが日本に上陸した『デスパレートな妻たち』、犯罪に関する予知夢を見る主婦がその能力で犯罪事件を解決する『ミディアム』、社会的成功者であるアラフォー&アラフィフ妻たちのオトナな恋愛事情を描いた『ミストレス』というように、海外ドラマには、女性は女性でも「妻である女性」をメインにした"妻系"ドラマが数多く存在する。そんな中、2013年5月に、「軍人の妻」にフォーカスした『アーミー・ワイフ』というまた新たな"妻系"ドラマが日本に上陸する。これらの"妻系"ドラマというのは「早く次が観たくなる」という中毒症状を引き起こす傾向があり、根強いファンも多い。超人気作でも打ち切り続出な厳しい海外ドラマ業界で、順調に放送シーズンを重ねているのもまさに"妻系"ドラマ。今回はそんな根強いファンを抱え、中毒症状を引き起こさせる"妻系"ドラマに注目したい。

まず紹介したいのは、"妻系"ドラマのテッパンとも言える『デスパレートな妻たち』シリーズ。自己愛の強い妻「イーディ」を演じたニコレット・シェリダンが起こした裁判で最終シーズンのネタバレがあるなど放送までに紆余曲折の多かった本作だが、さすがは全世界にファンを抱える「超ド級」ヒット作。大きなネタばれがあっても視聴率に全く影響はなく、海外ドラマの歴史に名を刻む名作として2012年にその幕を閉じた。

本作の面白さはなんといっても、主格となる4人の妻たちのとんでもないタフさだろう。彼女たちの詳細なプロフィールについては『デス妻』のコラムを参考にしていただくとして、キャラの濃い「妻」4人は、「ツライこともみっともないこともすべてシェアして分かち合う」という友情では結ばれていない。すべてを分かち合わないし、秘密も多い。大切なのは友達よりも家族。こんな薄情な関係で結ばれた4人の友情は、薄っぺらいのかって? いやいや、決してそういうことはないのだ。誰もが友達に依存しないだけ。とんでもない事件が数々と起こっても、皆、友達には愚痴を言うけど、解決は委ねない。自分自身で解決していくのだ。その妻たちのタフさといったらもうアッパレ。ゴシップ好き、見栄っ張りという女性ならではの要素満載な"妻系"ドラマだけれど、昼ドラのような胸やけするドロドロ感ではなく、基本的に強くて気持ちいい妻たちのお話なので、そのドロドロは非常に小気味よいもの。どんな事件でも彼女たちなら面白く解決していくだろうという、わくわくさえ覚える。

次に、特殊能力を持つ"妻"が主人公の『ミディアム』。本作は実在する霊能者アリソン・デュボアを題材とした作品で、アリゾナ州に住む平凡な主婦アリソンが、自身のもつ霊能力を活かして警察の捜査に協力し、迷宮事件を解決に導くというストーリーだ。アリソンの霊能力は残虐な犯罪の予知夢を見るというもの。与えられた能力を誰かを助ける使命として受け止め、献身的に警察の捜査に協力するアリソンだが、現実は甘くない。彼女の霊能力をうさんくさいとバカにする捜査官も多く、彼らを納得させるためにもアリソンの発言が間違っていないと証明し、何としてでも犯人のしっぽをつかまなければならない。そのために深夜まで働くこともざらにあるのだが、家庭を守る夫は毎晩遅く帰る妻が気に入らない様子。そんな夫の顔色をうかがいながら、幼い3人の娘たちに後ろめたさを感じながら、主婦という道ではなく自身の任務を遂行する道を選ぶアリソン。確実に犯人に近づく証拠をつかみ、霊能力をバカにした捜査官をあっと言わせるアリソンは本当にかっこいいし、観ていてスカっとする。職場でも家庭でも気を使いながら働く現代の「妻」は共感する部分があるのでは?

次に、アラフォー&アラフィフという少しオトナな妻たちの恋愛模様を描いた英ドラマ『ミストレス』。これは・・・もう・・・"ザッツオトナの肉欲的な恋愛"というイメージ。主格は4人の妻たちで、医師のケイティに弁護士のシボーン、イベントプランナーのジェシカと9.11のテロで夫を亡くした未亡人のトルーディ。ケイティは不倫に超歳の差恋愛、シボーンは同僚との不倫、レズビアンでパートナーのいるジェシカは会社の上司(男性)と不倫、未亡人トルーディは妻のいる男性と不倫。不倫に年下ボーイに浮気に同性愛。「恋愛」という「恋愛」が満載な本作だが、ただの恋愛ドラマではない。登場人物みんなが、浮気、不倫といったアウトな恋愛をしているのだ。社会と欲望の狭間で悩み、欲望のほうに転落していく"妻"たち。このアウトでオトナの色気たっぷりな恋愛にぐいぐいひきつけられていく。また英ドラマということもあって、奇をてらわずリアルな展開が多い。アウトな恋のお相手が会社の上司や同僚だったり、子供の友達の親だったりと身近で現実的。ゆえに、自身のケースにあてはめながら見てしまう妻もいるのでは?

そして、新たな"妻系"ドラマとしてキャッチアップしたいのが2013年春に日本初上陸する『アーミー・ワイフ』だ。タイトル通り、アメリカ軍人の妻たちをメインとした作品で、四面楚歌とも言えるアメリカ軍事基地内の人間ドラマをクラシカルに描いている。主格となるのは4人の軍人の妻たちと軍人を妻にもつ1人の夫。バーで働きながら2人の息子を育てるシングルマザーのロキシーはバーの客だった軍人トレバーに出会って4日でプロポーズされる。突然、軍人の妻になったロキシーの軍事基地内での生活は驚きの連続だった。夫の軍での地位で左右される「軍人カースト制度」とも言える家庭階級、そのカースト制度の上位に存在する家庭の妻が開催するガーデンパーティー、夫の出世を巡る足のひっぱりあいなど、そこには上品に気取った妻たちの見栄っぱりリレーと昇進サバイバルがもりだくさん!こんな環境の中でロキシーは周囲に流されることなく、マイペースを貫く。食べていくために基地内のバーで働き始め、ガーデンパーティーにもキャミソールとホットパンツという独自のスタイルで参加。このマイペースっぷりが周囲にもやがてよい影響を与える...はず!?
その他の妻たちもなかなか魅力的。まずはロキシーと同じくこの見栄社会に慣れず、出来の悪い夫の借金を返すために周囲には秘密で代理出産に挑むパメラ。次に、軍人カースト制度上位に位置するクラウディア、そしてデニス。一見、環境に恵まれている2人だが、クラウディアは夫の昇進を妨害した他の妻を許せない! など夫のキャリアに固執しているし、デニスは厳格で誠実な夫と優秀な息子に囲まれる「幸せな妻」...の裏で実は息子の家庭内暴力に悩んでいる。
複雑な事情を抱える上流家庭の妻たちとは少し立ち位置が異なるが、軍人のパートナーゆえの悩みを抱える人もいる。それが、アフガニスタンから帰国したばかりの軍人妻をもつ精神科医の夫ローランド。現地で経験した悲惨な光景が目に焼き付いて離れない妻の荒れ様に頭を悩ませている。
閉鎖された社会での妻同士の建前や夫の昇進争い、勤務先=戦地である夫を持つ妻が常に抱く死への恐怖。本作はこんな基地内での人間模様が複雑かつタフに描かれている。まさに"妻系"ヒューマンドラマだ。

まだまだ存在する"妻系"海外ドラマだが、なぜ"妻"を主格にしたドラマが続々とヒットするのか?視聴者を惹きつけるその魅力は、まさに"妻"たちの「タフさ」にあるように思う。『デスパレートな妻たち』の周囲に頼らず、一人で家族を守りぬこうとする底力、『ミディアム』の身近にある幸せを捨て使命を貫こうとする信念、『ミストレス』の一触即発な肉欲的恋愛、『アーミー・ワイフ』のパートナーの死が隣りあわせの人生。"妻系"ドラマには女性が妻として、母として生きていくために必要な頭脳とパワーがたんとつめられている。どんなピンチに陥っても他人に依存しない妻たちは非常に好感を持てるし、どんな事件でも彼女たちなら解決できるという安定感がある。むしろ、何をしでかしてくれるのか、というわくわく感さえある。それがなんともすがすがしくってクセになるのだ。今後も新たに登場する"妻系"ドラマが楽しみだ!

(海外ドラマNAVI)

Photo:『アーミー・ワイフ』(c)2006 American Broadcasting Companies, Inc. 『ミディアム』(c)2010 CBS Broadcasting Inc. All Rights Reserved. 『デスパレートな妻たち』(c) ABC Studios 『ミストレス』(c)ABC Studios