毎年5月前後に到来する、米TVドラマ界のパイロット・シーズン。この期間に秋からのオンエアを目指すパイロット版を一気に放送し、シリーズ化を決定する仕組みだが、このほど米FOXがこのシステムを廃止することを明らかにした。
これは13日、テレビ批評家協会（TCA）冬のプレスツアーでFOXエンターテイメント社長のケヴィン・ライリー氏が発表したもの。ライリー氏は、1986年の導入以来、採用されているパイロット・シーズンを「遠い時代に作られたもので、非効率的なこと極まりない」とバッサリ。「この仕組みの中で良質な番組が今も作られていること自体、奇跡といえるでしょう」と述べ、今後はパイロット・シーズンをスキップすることを明言した。
さらにライリーは米Deadlineに対して、廃止の意図と今後の方針について明らかにした。「パイロット・シーズンは廃止しても、パイロット版を撤廃するわけではなく、これからはシリーズ化を前提にパイロット版をオーダーする」という。具体的には、「これまで例えば10本のパイロット版を製作し、そのうち1本をシリーズ化してきたが、今後はその割合を1対1に近づけていきたい」とのこと。つまり、シリーズ化がほぼ確約される方向へとシフトするわけだ。その分、パイロットの本数は少なくなるが、「関係者は（パイロット・シーズンに関わりなく）年間を通してドラマが製作できるため、はるかにやりやすい。FOX側にとっても、より柔軟なスケジュール調整とマーケティングが可能になる」と、そのメリットを強調した。
この方式は、主にケーブル局で用いられているメソッドだ。ライリーはFOX傘下のケーブル局、FXのトップを務めた経験から、かねてよりネットワーク局の現状に危機感を募らせている。ケーブルに押され気味のネットワーク局にとって、今回の決定が再生のカンフル剤となるかが注目される。
ちなみにFOXは、すでにパイロット製作が進行している2本のコメディ『Fatrick』と『Cabot College』、ドラマ『Gotham』を来月にもシリーズオーダーする予定。そのほかにもコメディ『Mulaney』、ベン・アフレック監督による『The Middle Man』と『Hieroglyph』を抱えている。（海外ドラマNAVI）
