――レイというキャラクターの役作りのために、どのようなリサーチをしたのか教えてください。
リーヴ:正直言うと、リサーチというほどのものはしてないんだ...。ただ、ハリウッドの最盛期にはレイのような男たちが存在していて、そういう人たちが色々な意味でモデルになっていると思う。それに、最近のハリウッドのセレブたちは法律事務所との結びつきがより強くなっている。私立探偵のような役割も担っている法律事務所は多いし、事務所が探偵を雇っているってこともあるだろう。だからきっと、レイは色んな要素を取り入れたオリジナルのキャラクターなんだと思う。今ので答えになったかな。
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――レイの好きな所を教えて下さい。
リーヴ:そうだな。この象徴的なアンチヒーローの、主人公っぽくない所がすごく面白いし、魅力的だと思った。アン・ビダーマンがすごく細かく分析してるんだ。キャラクターとしてすごく興味深いし、レイのようなキャラクターは男の夢だよね。広い世界のどこかで起こっている事だろうけど、誰にでも起きる訳ではではない。だからハリウッドという場所でレイに家族を持たせることで、男の夢だけじゃなく男としてのアイディンティティも追及できていたと思う。レイのようなやり手の主人公に家族がいて、家の中のゴタゴタにも巻き込まれるっていうのは珍しいけど、それがこのドラマでは多く描かれていたからね。まさにそこが面白いんだと思う。それに、レイは根底には強いモラルを持った男だから、そういう所が好きだな。
――レイの原動力は何だと思いますか?
リーヴ:家族だと思う。レイのすごく情に厚い部分も好きな所なんだ。だから、子供たちへの愛情や彼らにかける期待、今の生活に対する思いがレイを突き動かしているんだと思う。
――レイは良い人間なのか、それとも悪人なのか、どちらだと思いますか?
リーヴ:レイはShowtime の典型的なアンチヒーローだと思う。だからこそ、このドラマの放送局はShowtime しかないってこと。今の質問にはっきりと答えられないっていうのが、実は僕が気に入っている所でもあるんだ。複雑で二面性があるドラマはいつでも面白いし、その複雑さこそがキャラクターの魅力でもあるんだと思う。言葉にするのが難しいんだけど、良い人間もいないし、悪い人間もいない、それが僕にとってはとてもリアルなんだ。
――このドラマに出演されて、ハリウッドやハリウッドに住む人々に対する考え方は変わりましたか? ドラマではセレブたちがパパラッチやゴシップを恐れ、真実を隠そうとしますが、実際もそうだと思いますか?
リーヴ:この業界のセレブという文化は、1つの大きなビジネスでもあるんだと思う。だから、ビジネスと私生活をきっちり区別してプライバシーが欲しいと思うのなら、それはすごく大変な事なんだ。その辺は、すごくリアルだし真実に近い。でもそれが良いことなのか悪いことなのかは、分からない。ただ、僕は長いことこの世界にいるから多分レイよりハリウッドには慣れているし、レイほどこの世界のことをシニカルな視点で、うんざりしながら見てはいないとは思う。
――今やテレビの人気は絶大ですよね。映画はテレビの勢いに押されていると思いますか?
リーヴ:それは一概には言えないかな。今は映画のまた違う黄金時代が来ていると思うしね。iPhoneを使って子供たちが映画を作ったり、パソコンのプログラムを使ってノンリニア編集ができるようになった。だから、近い未来に本当にワクワクするような映画が作られるんじゃないかと思うんだ。そうは言っても、映画作りは比較的制限が多くて、2時間でなきゃいけなかったり、宣伝が必要だったりする。映画館での上映やDVD を発売することも考えるから、スパンも長い。ただ、そういう事を考えずに作られた映画もたくさん存在すると思うんだ。テレビもそう。特にケーブルテレビは、すごく面白くて視聴者も満足できる作品が多い。それに映画ほどお金をかけずに済む分、才能のある人たちに仕事が回る。一定の期間続く仕事がね。だからたくさんの素晴らしい脚本家や監督、才能ある役者たちがテレビ、特にケーブルに出演するようになってきていると思う。
――「レイ・ドノヴァンザ・フィクサー」の魅力は何だと思いますか?
リーヴ:そうだな。様々な要素が混在しているところかな。例えば、レイのような"男の中の男"みたいな人間が、トランスジェンダーの人たちに対して意外に優しい面を見せたりする。そういう部分がすごく面白い。調和しなさそうなものが組み合わさっているのがこのドラマだと思う。人や文化や様々なものがうまくぶつかり合って良い化学変化が起きてる。
――最近『Clear History(原題)』を観ました。ラリー・デヴィッドからかなりアドリブが多い作品だと伺いましたが、いかがでしたか? 今後コメディ作品にもどんどん参加していくのでしょうか。このドラマのダークな部分とのバランスを取るためにもコメディが必要だった、ということもありますか?
リーヴ:今このドラマで1年の半分はダークな演技をしてるから、そのバランスを取るためにも確かに必要だったね。でもこのドラマにも明るい部分もあって、その部分がずっとあるといいなとは思ってるよ。『Clear History(原題)』は親友が監督をしていたこともあって、とても楽しかった。それにラリー・デヴィッドと一緒に仕事ができたからね。アドリブでの演技も好きだし、コメディもすごく好きなんだ。今はなかなかコメディをやるタイミングがないんだけど、将来的にいつかはやりたいなっていう気持ちがある。ただ、あの映画のアドリブはちょっと怖かったな。だって、チェチェン人のアクセントで話さなきゃいけなかったからね。でもすごく楽しくできたよ。
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――レイは人を雇って殺そうとすることにためらいがありませんでしたよね。どういう考えがあると思いましたか? それと、レイというダークなキャラを演じることで、オンとオフの切り替えが難しいということはありましたか?
リーヴ:人を殺すことの本質と関係があるんだと思う。でも、レイがどんな人間なのかまだはっきりと分からない部分があるからね。ただ、役作りをする上で、あの表情のない冷たそうな部分は気に入ってる。あれほど用心深くてクールな男だと、役作りにも無限の可能性がある。高まった緊張を出さないようにする演技とかは難しいけど。とにかくまだ彼に関する情報が少ないんだ。少しずつ増えてはいるけどね。言葉を発することもなく、体を動かすこともなく、心の中に秘めた感情を表現するのは役者としてすごくやりがいがあった。
リーヴ:オンとオフの切り替えか...。これまでは、ドラマのタイトルになるような人物を演じるタイプの役者じゃなかった。だからレイを5,6カ月間演じてみて、こんなに休みが必要だと思ったのは初めてだよ。台本を読んだ時は、このダークな役を長時間演じたいかどうか正直分からないってアンには話した。でも、家に帰れば4歳と6歳の息子たちの相手を全力でしないといけないから、きっと気持ちも素早く切り替えられると思ったんだ。
――先ほどレイというキャラクターがアンチヒーローだというお話をされていましたが、キャラクターを作り上げたのは女性であるアン・ビダーマンですよね。すごく珍しいなと思いました。女性の視点が入ることで、他のアンチヒーローたちとは一線を画していると思いますか?
リーヴ:「どうして女性なのに、男の性や本性がよく分かるんだろう?」って僕もずっと思ってたんだ。それで、そのことを友達に話すと、彼女はそれを当然だって言う。「男のことを、一番理解してるのは女よ。だから面白いんじゃない」ってね。女性の視点で描かれた男が、ドラマの説得力のある部分。皮肉にもね。少なくともそれが僕にとってはユニークで面白い部分なんだ。
――先ほど、レイがトランスジェンダーの女性を助ける部分と彼の男らしさのコントラストについてお話されていましたが、それはアン・ビダーマンの女性の視点が働いているからだと思いますか? それと、レイの息子がゲイのスターと仲良くなったりもしますよね。逆に、ハリウッドのリベラルなプロデューサーの息子が、フィクサーの息子よりゲイに対して偏見があるようだったので不思議な気がしました。
リーヴ:価値観の違いはあるだろうね。その質問の意味はすごく分かる。ブルーカラーの労働者の家庭と、ハリウッドのすごく裕福なプロデューサーの家庭の価値観は全く違うっていうのはストーリーから感じられる。ただ、どんな家庭であれ、イデオロギーや愛情を持って誠実に子供を育てれば、より思いやりのある人間が育つんじゃないかな。そんな事言うと、女性的な考え方だって男の友人とは揉めそうだけど。
――ジョン・ヴォイトやエリオット・グールド、ジェームズ・ウッズなど、レイの脇を固めるキャストの選別にも関わったとアンから聞きました。
リーヴ:3人のキャスティングはすごく難しかったよ。でもきっと自分にもこの作品にも必ずたくさんのものを与えてくれると思った。3人とも皆並外れて素晴らしい役者だし、このドラマには確実にプラスになる。それに彼らと共演できるって考えただけでものすごくスリルを感じてワクワクした。3人は、誰もが見たくなるような、そして見ている者を圧倒できる役者だと思う。それに、ジョンとは『クライシス・オブ・アメリカ』で共演していたから、きっと上手く行くと思ってた。ジェームズ・ウッズとエリオット・グールドは、ずっと大ファンでね。長時間に渡るドラマの撮影を、この人たちとだったら楽しみながら仕事ができるだろうな、と思える人たちを集めただけなんだ。だから、この3人のキャスティングに関われたことが、自分にとって一番の成果なのかもしれない。
――ジョン・ヴォイト演じるミッキーは、男らしい強さと人としてのもろさを併せ持っている人物だと思いますが、どう思いますか?
リーヴ:それがアン・ビダーマンの成せる業なんだろうね。その部分こそ、僕がこの脚本に惹かれた部分でもある。これはずっと感じていたことなんだけど、強さや暴力がある所には、同じくらいのもろさがあるんだと思う。ジョンもエリオットもジェームズも、すごく男らしい人たち。そこにアンがすごく細かく分析してキャラクターを設定している。だからその2つの要素を自然に表現できる人たちを探すことに意味があった。この3人なら大丈夫だと確信があったし、彼らなら、人間の裏側の深みも出してくれると思った。それぞれのキャラクターたちには表に見せている顔とは正反対の、アン・ビダーマンだから出せる裏側が存在するんだ。僕にとってはその部分こそがこのドラマのワクワクする部分だよ。
――テレビドラマに出演する利点は何だと思いますか?半年ぐらい仕事が続くテレビと、撮影で海外に行くことがある映画――これまでを振り返ってみて、どちらが好きですか?
リーヴ:まだテレビの仕事は始めたばかりだから、はっきりと答えは出せないかな。それにこれからの自分の人生がどうなっていくか、何も分からないんだ。でも自分や子供たちにとって、テレビの仕事をする上で確実に利点だと思えるのは、しばらく仕事があるってこと。来年も仕事があるといいんだけどね。収入が安定するのは間違いなく良いことだし。それに、役者を始めた頃は移動の多いライフスタイルが好きだったけど、年を取って子供たちが大きくなってくると、安定したいと思えるようになってきた。安定した家庭生活を送れるのは良い事だよね。
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【放送情報】
『レイ・ドノヴァン ザ・フィクサー』
海外ドラマ専門チャンネル スーパー!ドラマTVにて
【二カ国語版】毎週金曜22:00~23:00、日曜15:00、火曜23:00
【字幕版】毎週金曜24:00~25:00、日曜24:00、火曜10:30