米クリエイターも要注目! 北欧ドラマとアメリカン・ドラマの相性

脚本不足と言われて久しいハリウッド。そんな中でもアメリカン・ドラマはハイ・クオリティな作品を次々と送り出し、今や映画スターもドラマ市場を無視できなくなっている。そのTV界ではネットワーク局、ケーブル局に続き、ネットフリックスを始めとするオンデマンドの台頭により、新たな時代に突入しようとしている。そんな時代を反映してか、ここ数年、海外のドラマのリメイクが急激に増えてきた。

もともと同じ英語圏である英国のドラマなどは古くからリメイクされてきたものだが、イスラエルのドラマをリメイクした『HOMELAND』がヒットした事がきっかけとなり、言語圏の違うドラマをリメイクするのが最近の流行りになりつつある。その中でも注目されているのが北欧産のドラマだ。『キリング/26日間』や『ブリッジ~国境に潜む闇』、『ゾウズ・フー・キル』など、北欧ドラマのリメイクは急激に増えている。一体北欧ドラマの何がそれほどアメリカのクリエイターたちを惹きつけるのか。

北欧はそもそもミステリー大国で、ハリウッドで映画化もされた『ミレニアム ドラゴンタトゥーの女』に代表される北欧ミステリー小説は世界中で人気を集めている。さらに小説の分野で優れたミステリーを数多く生んでいるだけに、ドラマの分野でもその土台がしっかりしているのが北欧ドラマの特徴だ。そしてアメリカは言わずと知れた犯罪ドラマ大国。現在アメリカで放送されているドラマの半数は犯罪ドラマ、もしくは犯罪が絡むサスペンスだ。そんなアメリカが北欧産ミステリーに目を付けるのは当然と言えば当然の成り行き。

でも何故リメイク? そんなに本家が優れているなら、オリジナル版をそのまま放送すればいいじゃない、と思う方もいるかもしれない。たくさんの北欧ドラマを字幕なり吹替えなりで見られる日本からしたら、そう感じるのも不思議ではないが、そこは文化の違い。アメリカ人は字幕を嫌う。そして吹替えは主にアニメ作品のもので、実写にはまず使用しない。どちらも楽しめる日本はある意味恵まれているのだ。

と、話は逸れたが有能なクリエイターや脚本家が揃うアメリカで、優れた海外作品があればリメイクしようと考えるのはいたって自然な事なのだ。そして実際、自国の風土に合わせながら本家のテイストを維持するのがアメリカの脚本家たちは非常に上手い。

例えば『キリング/26日間』では、デンマーク版のあの寒々しい空気感を演出するために、舞台を雨の多い冬のシアトルに設定した。実際に撮影しているのはさらに寒いカナダのバンクーバーだが、ただ寒いだけでなく、雨の多いシアトルを舞台に設定した事で、オリジナル版の鬱々としたダークな空気を捉えようとしているのが分かる。(さらにヒロインのトレードマークであるセーターも着せられる)『ブリッジ~』ではオリジナル版で描かれていたスウェーデンとデンマークの国境を、アメリカとメキシコの国境に置き換える事で、その設定をスムーズに取り入れている。

もちろん設定を上手く移せればそれだけで良しというものでもない。ドラマを見るのはあくまでもアメリカの視聴者。その視聴者がドラマの世界にすんなりと入れるよう、細かい調整が必要だ。『キリング』にしても『ブリッジ』にしても、アメリカの土地勘を上手く生かした上で、オリジナル版のポイントを押さえつつ、アメリカ独自の社会問題を取り入れてその世界観を作り上げている。この辺りは広大な土地と多様な文化を持つアメリカだからこそ、海外作品もリメイクしやすいところはあるだろう。だがそれだけじゃない。本家とアメリカ版、両方見た方ならご存知だと思うが、『キリング/26日間』は中盤までほぼ完璧なまでにオリジナル版に忠実にストーリーを描いている。劇中使用している音楽まで同じだったのには驚いたが、本領を発揮するのはその中盤以降。本家では1シーズンを20話で完結させていたが、アメリカ版では2シーズンかけて完結。そして中盤以降は完全にアメリカ版独自のストーリーに転換しているのだ。同じストーリーを描いていたはずが、全く違う結末へと導いていくその繋ぎの自然さは、まさにハリウッドの脚本力の高さを証明している。

そして『キリング』も『ブリッジ』もひとつの事件の解決をじっくりと描いていくシリアル型。その点も事件が速攻解決される1話完結型が主流の犯罪ドラマに慣れているアメリカの視聴者に(そしてクリエイターにも)新鮮に思えただろう。ドラマの多様化が進む現在のアメリカにとって、独自の切り口を持った優れた北欧ミステリーは、犯罪ドラマ好きなアメリカ人とまさに好相性な組み合わせ。ミステリーだけでなく、政治ドラマ『コペンハーゲン』のリメイクも進められていると言うし、北欧ドラマリメイクブームの勢いはしばらく衰えそうもない。

『キリング/26日間』
発売:20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン

■2014年4月2日発売
『キリング/26日間』Vol.1
『キリング/26日間』DVDコレクターズBOX1
同日『キリング/26日間 Vol.1~6 レンタルスタート

■2014年6月4日(水)発売
『キリング/26日間』DVDコレクターズBOX2
同日『キリング/26日間 Vol.7~13 レンタルスタート

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