【お先見】マーティン・フリーマン&ビリー・ボブ・ソーントンの異色コンビが異彩を放つスリリングな犯罪ドラマ『FARGO/ファーゴ』!

製作段階から何かと話題に挙がっていた『FARGO/ファーゴ』。ブラック・ユーモアあふれるダークな犯罪ドラマがいよいよ米FXにて放送を開始した!

ノア・ハウリー『BONES』)がクリエイターとして指揮するこのドラマは、ジョエル&イーサン・コーエン兄弟が製作・監督・脚本を手掛けた1996年公開の映画『ファーゴ』をもとに製作。ドラマ版にもコーエン兄弟も製作者として名を連ねているが...しかし実際に観始めてみると...登場人物の名前も職業も異なり、ストーリーもかなりアレンジされている。同時にオリジナルに対してのオマージュも込められて、単なる"リメイク"とは全く違う作品だ。

ところでドラマ・タイトルの"ファーゴ"は、ミネソタ州との州境にあるノースダコタ州の町だが、物語はミネソタ州ベメジーおよびダルースでの出来事が中心だ。『Fargo』で描かれるシーズンは雪深い冬。私も冬にミネソタ州を訪れたことがあるが、とにかく極寒地域だ。耳が引きちぎれるかと思うくらい風も冷たいし、バナナでクギを打ててしまうかと思うくらい寒いかも!? 美しい雪景色の中、このドラマでも警官たちも皆、耳までスッポリ覆うフカフカの帽子や分厚い手袋をして、白い息を吐きながら屋外捜査に挑む様子が良く描かれている。ちなみに実際のロケ地はさらに北に位置するカナダ・カルガリーである。

主役の一人であるマーティン・フリーマン『SHERLOCK シャーロック』のワトソン役や『ホビット』シリーズのビルボ役で現在、実力・人気ともに絶好調の俳優の一人ではないだろうか? マーティン・ファンの皆さん! このドラマでは上記二役とも違った彼の新たな一面を見ることができますよ~♪

マーティン演じる生命保険セールスマンのレスター・ナイガードは冴えない、うだつの上がらない、保険のセールス・トークも下手な男性。口うるさい妻パール(ケリー・ホルデン・バッシャー)には「もっと真剣に働いて、セールスマンなら微笑んで! もっと趣味の良いネクタイすれば!」と言われ、「だってこのネクタイはキミがくれたんじゃないか...」とブツブツ。「あなたが優秀なセールスマンならば、もっとステキなネクタイを買っていたわよ!」と、さらに追い討ちをかける妻。妻に嫌気がさしているが何も言いかえせないレスターなのだ。

そしてもう一人! 重要な役を演じるのがビリー・ボブ・ソーントン。ビリー・ボブは『スリング・ブレイド』『アルマゲドン』などの映画出演で有名だが、私が強く印象に残っている彼の出演作品は、ハル・ベリーがアカデミー賞主演女優賞を受賞した『チョコレート』。この作品でビリー・ボブは、有色人種差別主義者でありながらも黒人女性と関係を持ち、心に葛藤を持つ非常に複雑な性格の刑務所の看守役を見事に演じていている。

今回ビリー・ボブが演じる役は放浪ヒットマンのローン・マルヴォ。まず髪型が一度見たら忘れられないほど強烈! 短い前髪をまゆ毛の上でパッツン揃え、口の回りには360度のヒゲをたくわえ、獲物に食いついたら二度と離れなさそうなネットリ爬虫類系の彼の眼つきとその表情、さらに落ち着きのある堂々とした態度が余計に不気味度を増す。冷酷非情で殺人に対する良心の呵責が微塵も感じられないマルヴォ。おまけにどんな生活を送っているか全くミステリアス。今後"TVドラマ史上記憶に残る悪役の一人"となること間違いナシだ!

では気になるストーリーを少し紹介しよう。 
ある日、高校時代のイジメっ子サム・ヘス(ケヴィン・オグラディ)と町でバッタリ会い、昔と同様に馬鹿にされ、からかわれるレスター。サムがパンチを浴びせようと冗談で拳を振るった瞬間、レスターは反射的に避けて自分から勝手に窓ガラスにぶつかって鼻を骨折してしまう。 その関係はまるで『ドラえもん』ののび太とジャイアンのよう! 治療のために訪れた病院の待合室で偶然隣り合わせたレスターとマルヴォ。「鼻どうしたんだい?」とマルヴォに聞かれ、何気に話し始めるレスター。「私の経験から言えば、このままサムを放っておいたら鼻の次は脊椎をやられるよ。私だったらサムを殺すね」とマルヴォ。「だったらキミが彼を殺してくれよ(笑)」と冗談っぽく言うレスター。「それは殺しの依頼だね」と不気味に微笑むマルヴォ。「冗談だよ!」と慌てるが、ハッキリとマルヴォに殺人依頼の肯定も否定もしていないうちに、看護師に呼ばれて席を離れるレスター。しかしその後、ストリップ・クラブにて楽しむサムを狙うマルヴォの姿が...!

さらにある日、レスターは自宅の洗濯機の修理に失敗して、「アンタなんて男じゃないわ! なんでアンタと結婚したのか分からない。"負け犬人生を送るような男と結婚するな"って母親にも結婚を反対されていたけどその通りね!」と、いつものごとく妻に罵倒される。いい加減、堪忍袋の緒が切れたレスターは近くにあった工具を手にする。「それで私を殴るつもりなの?」とケラケラ笑う妻の頭上には、レスターが持つ金槌が激しく振りかかるが...!?
実は上記のストーリーは第1話の中のごく一部の内容なのだ! サスペンスなので、これ以上のネタバレは実際に日本で放送されるときのお楽しみに♪ ということで控えるが、とにかくヒネリも多く、予想できない展開が盛り沢山のサスペンスだ。

今後、鋭い洞察力を持つ若い女性警官モリー(アリソン・トールマン)を中心に、チーフのビル(ボブ・オデンカーク)、別の警察署勤務の警官グリムリー(コリン・ハンクス)などが、どのように事件を解決していくのか楽しみだし、マルヴォを追跡する別の悪者グループの存在も気になる。

映画版を観たことがある人は比較して楽しめるか? ドラマ版で初めて『Fargo』を観る人は新鮮な気持ちで楽しめるか? 答えは...ドラマにも出て来るミネソタ訛りのフレーズで「Yah, you betcha!」(=「Yes, you bet!」もちろん、その通り!)と断言しちゃいます!

Photo:コーエン兄弟(ジョエル・コーエン、 イーサン・コーエン)Ima Kuroda/www.HollywoodNewsWire.net マーティン・フリーマン、ビリー・ボブ・ソーントン、コリン・ハンクスIzumi Hasegawa/www.HollywoodNewsWire.net