『エレメンタリー ホームズ&ワトソンin NY』のDVDが7月9日(水)にリリースされることになりました!
...ということで、シーズンを通してホームズ&ワトソンの声を任せられてきたボイスキャストの三木眞一郎さんと田中敦子さんにたっぷり話を伺ってきました。ぜひお楽しみください。
――このドラマは舞台がニューヨークだったり、ワトソンが女性だったり、誰もが知っている"シャーロック・ホームズ"という物語の新解釈が特徴となっている作品ですが、最初に台本を読んだ時の印象はいかがでしたか?
田中 「どうなっちゃうんだろう?」っていうところからですよね。ロンドンのビッグ・ベンが背景にある重厚なイメージの中で活躍するホームズが一般的なのに、ニューヨークはもっとライトなイメージがある。それだけでも印象が変わり、さらにワトソンが女性になって...。「どんな展開になっていくんだろう?」っていう期待と、ちょっと不安も(苦笑)
――『エレメンタリー』のキャラクター設定にはしっくりはきましたか?
三木 うん!
田中 意外と...
三木 最初に台本を読んだときは、特に"ホームズ"っていうものを意識しないで読めました。
田中 普通のミステリーというか、探偵物としての面白さがすごく詰まっているから、"ホームズ"を意識しなくても十分に楽しめる...。でもその中にオリジナルの"ホームズ"の要素がいっぱい盛り込まれているのが、シャーロキアンにとっては、たまらないところなのかなって。
三木 ここまで良い意味で設定とかがいじってあったら(ワトソンの)性別が変わっていることによって、役同士の見え方も、今までと違う受け取り方もできるだろうし、「逆に広がりがあっていいんじゃないかな?」って言うのも含めて、第1話をとり終わった時には全く何の違和感もなかったかな?
田中 大変そうだなと思いましたけど(笑)
三木 俺、本当に「終わらなかったらどうしよう!」と思って(笑)
田中 そんなことない(笑)終わらない作品はない!
三木 「終わらない仕事はないからね」と思いながらやっていたんだけど、そういう意味では、「これは面白くなるな」と思いましたね!
――先程、大変だというお話にもあったんですが、三木さんが声を任せられているシャーロックという役柄は、とにかくたくさん"しゃべる"という印象なのですが...。セリフも多い上に、話す内容も難しいですし、原音だとかなりの早口ですが、コツや気を付けていることなどはありますか?
三木 気を付けていることはたくさんあるんだけど、コツは誰か教えてくれないかな(笑)?
田中 「エラが欲しい」って言ってたよね(笑)! 「エラ呼吸できるようになりたい」「しゃべりながら酸素を吸収できればずっとしゃべり続けていられるのに」って、ずっと言ってて...。
三木 意外とブレス(息継ぎ)をとらないんだよね!
田中 でも向こうは、やっぱり編集だと思うよ...
三木 トリッキーなブレスの入り方や彼の表情の変化があったりする部分を、やっぱりマッチさせていかないと日本語とホームズの表情がはがれてしまう。「吹替えってやっぱり...。原音のほうがいいよ」って言われないように意識しています
田中 私も結構、緊張しますし...。ジョーンもしゃべるときはしゃべるけど、ほとんどはホームズがしゃべってジョーンが1行、また1ページくらいホームズがしゃべって(ジョーンが)2、3行とか...。よく「私は餅の返し手ですから」っていうんです。三木君がこうやって(餅を杵でついているふり)ついているところに、手でお餅を返し、「早く手をどかさなきゃ!」という感じです(笑)
――では、そういった意味ではプレッシャーのようなものもあるのでしょうか?
田中 緊張しますよね! ホームズの長台詞の中に入ってくるジョーンの1行って、意外と緊張する...。
三木 そうだねー! どっちも嫌だね!
――「ここでもし失敗してしまったら」とか思ってしまいそうですね...。
田中 そうそう! やっぱり「ここで流れを止めちゃいけない」というのがあるので(笑)
――本作の吹替えをする上で、苦労したこと、チャレンジしたことなどはありますか?
三木 チャレンジは毎回ですよ(笑)
田中 (笑)
三木 毎回何かしらチャレンジしないと先に進めないもんね。
田中 うん。
三木 先週できたら今週できて当たり前なわけで...。そういう意味ではね。
田中 でも人間だから、やっぱり体調の良い時もあれば悪い時もあるし、バイオリズムでノッて行きやすい時と意外とノリ切れない時があるからね。そこを、いかにコントロールして、毎回ペースを保っていくかっていうのが大変だよね。
三木 そう! だから長いセリフの時に、最初の方でブレスが合わない時があったりすると、もうテンパっちゃうもん。「なんで合わないんだ!?」って...。「あれ!? どこ間違えた!?」って思いながら、(ブレスが)ズレたまま長いセリフをずっとしゃべっていって、自分にどんどん落ち込んでいったりするので...。「そういうところを無くすようにしなきゃな」とかね。そうそういっぱいあるわけじゃないんだけど、そういうときのメンタルって...。
田中 (三木に)だから、言っているでしょう? 「こんなにしゃべっているんだから、落ち込む必要ない」って。誰もできない事をやってるんだから、全然落ち込む必要ないのに、三木君はやっぱりホームズ風に、完璧を求めて(一生懸命)突き進んでいくタイプ。「そんなに気にしなくていいんだよ」って言って励ましているんですよ、いつも...。
三木 周りが優しいんですよー!
田中 だって、丸一ページ二ページしゃべる続ける人に向かって「なんで口パクが合わないんだ! バカヤロウ!」って言ったら(笑)
三木 (笑)
田中 「どれだけイジメるの」っていう感じじゃない(笑)?
三木 (堀内)賢雄さんとかも言ってくれるんだよね。「お前が謝るな。俺がやりにくくなる」って(笑)。
スタジオの中の雰囲気も良いから...。ちょっと質問とずれちゃうけど。レギュラーが少ないのもあるんですけど、良い雰囲気でやらせてくださるから、「チャレンジのしがいがあるな」と思いますね。
田中 チャレンジを許してくれる現場だからっていうのも大きいね! レギュラーが少なくて、そのうえたくさんしゃべっているのは、三木君と私と堀内賢雄さんの3人。あとはゲストという感じなので...。
三木 ゲストはゲストで、セリフをたくさんしゃべっていたり、あまりしゃべらなかったりムラがあるんだけど...。頭の良い役のゲストさんとかが来ると、それはそれで理路整然と説明をしていたりするし、ゲストさんもキャラクターによっては、大変だったりするから、空気が良い方が絶対に良いので...。スタジオの中の空気はすごく良いと思っています!
――お二人と、ホームズ役、ワトソン役との相性はいかがですか?
三木 偉そうな言い方になっちゃったら申しわけないんですけども、ルーシー・リューのワトソンは、あっちゃんがやっていて俺もやりやすいというか...。ワトソンっぽいですよ(笑)。
田中 (笑)そう?あんなふうに頭も良くないし、人を包み込むような母性とかはあんまりないかもしれない(笑)。
三木 (笑)最初の頃に比べて、役の関係も"だんだん、お互いのことをわかり合っていく"みたいなところがあるじゃないですか? (ワトソンがホームズを)"ここでは放置"みたいな風にしていて、また何かあったらちょこっと声をかけてくれたりとか...。セリフもそうだけど、そういったやりとりが実際にアフレコのスタジオの中でもあるし...。とても安心していられるなあって(笑)
田中 私たち二人の付き合いも意外と長いしね。「バーチャファイター」の頃から一緒にやってきて、三木君のいろんな面も知っているし。業界でのお互いの立ち位置みたいなのもわかっているので、そういう意味では『エレメンタリー』を二人に任せてもらったっていうのが嬉しくて!
先程のチャレンジという話にもつながるんですけれど、ルーシー・リューの声をやらせていただくの初めてなんですよ。「ルーシー・リューが魅力的に見えるようにしたいな」というのが、私にとってのチャレンジなので、それを、三木君との掛け合いでやらせてもらえることになって、すごくやり甲斐もあり、楽しいですね。
三木 (『エレメンタリー』は)ルーシー・リューの今までのイメージとはちょっと違う表情とかが多いと思うんですよね。この作品は、別にアクション云々じゃないじゃないですか? あっちゃんは挑戦とかチャレンジって言っていたけど、時に気だるげだったり、時にシャキシャキしていたりっていう彼女の女性としての細かい表情とかが、すごくピッタリかな!
田中 ジョニー・リー・ミラーにしても、ルーシー・リューにしても、向こうの役者さんができる人だとこっちもノッていきやすかったり、演じやすかったりするんですよね。まあ、セリフが多いから大変ではあるんですが(笑)。
だけど向こうの芝居がしっかりしているから、その点では、やりやすいかなと思いますね。
三木 生意気ですけどすごいよね。受けのルーシー・リューもそうだし。ジョニー・リー・ミラーにしても、ただ大声じゃない、ただ切れているだけじゃない。だから薄っぺらく見えないんだよね。
田中 やっぱりすごいなと思います。ハリウッドの役者さんたちって!
三木 本当にすごい!負けたくない。まぁ、どういう土俵で戦って負けるのかっていうのはあるけど(笑)。
田中 (笑)
三木 海外の作品を、日本語版として僕たちが任されたわけだから...。だって、吹替えをできるのは僕たちしかいないわけでしょ? だったら、「責任を持って、そこに日本語っていうものうまく重ね合わせて、日本の方に楽しんでいただけるようなものにしていきたいよね」っていう気持ちがあって...。そういう意味でも、あっちゃんはワトソンにすごく合っている。ピッタリです。
田中 三木君もピッタリです! セリフが多い作品って、絶対に字幕よりも吹き替えの方が面白いですよ。情報量が全然違うから。3倍でしたっけ? もっとかな?
三木 (字幕は)秒数に対してワード数が決まっちゃっているからね。
田中 絶対に吹き替えで見た方が面白いと思うので、吹き替えで見て欲しいし、面白い吹き替えにしたいと思うんですよね。
三木 本当に嬉しかったのがね、とある音響監督さんに「俺、見てるよ三木君! 『エレメンタリー』! あれ面白いね。でも大変だろう?」って言われて、「いや、まぁまぁそれはね...」って答えたの。そうしたら、「あれは音楽もいいし、いろいろ面白いところはあるけど、何しろホームズが日本語が上手い外人にいしか見えない!」って言われて、超嬉しかった!
田中 すごい!
――すごいですね!
三木 超嬉しかったですね。「よし! 今まで以上にやってやろう!」って思っちゃいましたね。
田中 最高の褒め言葉じゃないですか!
三木 嬉しかったー。でもそのあとにニヤリとして、「そういう仕事ばっかりになっちゃうよ」って言われて(笑)。あー、しんどいかもって思っちゃった。
田中 できるって思われたらね(笑)。
――セリフの多い役といえば三木さんというような感じに(笑)
田中 「これも三木だ! こっちも三木だ!」みたいなね(笑)
三木 それもそれでしんどいかもって思いながらも...。でも業界の他の人からも、作品の感想を聞いたりするのってやっぱり嬉しいよね!
――お二人とホームズ、ワトソンの似ている所についてはお伺いしたんですが、お互いから見て「正反対だな」「ここは全然違うな」と思うところがあれば教えていただけますか?
田中 私は、ホームズは今までに物語に登場する「ある女性」しか、愛した人がいないんじゃないかなと思います。ベッドを共にする女性はとっかえひっかえ、すごく沢山いるけれど女性を女性として見ていなくて、ホームズにとってはそれが当たり前。「日常生活上で、そういう行為は人間として必要なんだ、そのために女性という存在が必要なんだ」と割り切っている。それは彼にとって女性べっ視ではなく当たり前の事なんだけど、ホームズと違って三木君は女性にやさしい!
三木 あー、来たー! この流れか(笑)
田中 女性をいつもいたわってくれたりして、とても優しいです。
三木 そこか...。
田中 だめ?
三木 全然いいよ。それは、むしろありがたいことですよ。それを言われちゃった後に俺が何を言うか(笑)似ていないところ...。
田中 ワトソンの頭がいい所とか...。
三木 あっちゃんだって、別にそんなに悪くないでしょう(笑)。あ、でもあまり人のことをせかしたりはしないよね。
田中 そうかもね。私は、どっちかっていうと人についていくタイプだから(笑)。後をついていって、おいて行かれて「えっと、ここどこだろう?」って、迷子になっちゃうから(笑)
三木 (笑)そういうところかな。意外とジョーンは、ついて行こうとするけど、たまにリードしてあげたりする部分が見えるけど...。
田中 私はそういうタイプではないよね! (ジョーンとの違いは)リーダーシップがないところだわ(笑)
――(笑)そこを断言されてしまうんですね!
三木 (笑)。役の上では、「ちょっと違うところがあるくらいの方がいいかもね」という風に思ったりもしています。
――本日のTVスポット収録についてもお伺いしたいんですが、こだわったところ、注目して欲しいところなどはございますか?
田中 やっぱり"男運がない"?
三木 ああ"男運"ね!
田中 多分、収録の演出家もこだわられていたと思うので。ジョーンの立場からすると、あんまり「男運が無い」をくり返されるのは辛いのですが、本当によくこれだけパターンがあるなって思うほどの三木君の「男運がない」「男運もない」の言い方のうち、一体どれが使われるんだろう? もう「全部使って欲しい!」って思うくらい素晴らしいですよ。
三木 何回言ったかな。結構言ったね。でも、実はその前が流れで行っていないんだよね。間にタイトルを挟んじゃうから、そこをただ言うだけになっちゃうと違和感が出ちゃうからね。そこをどうしようかなって、悩んでいたっていうか、整理をつけるために「ちょっと待ってください」って時間をもらっちゃったんだけど...。
田中 ジョーンの顔のアップで「はぁ」っていうため息を入れたいくらいだったんだけど...。でも、入れちゃうとホームズのセリフが立たなくなっちゃうし、ないほうがいいかなって。
三木 でも知らない人があそこを見ちゃうと、逆に男と女の関係って勘ぐっちゃうかもしれないね! 今思った!
田中 ジョーンがベッドで寝ているからね!
三木 そういう意味では...。
田中 それがねらいだったりして! 「男女のホームズ&ワトソンで、恋愛関係になっているのかな?」って思わせる(笑)
三木 後で"息"録っちゃう?
田中 そういう思わせぶりなCM?
三木 このCMで初めて見た人は「えっ!?」って思うと思うんですよね。「ニューヨークなの!?」「(ワトソンが)女なの!?」みたいな...。
田中 ね!
――TVスポットの最後に、ホームズの性格の悪さを表す一言という...。
三木 ものすごくキャッチーなCMになったと思いますよ! 本当に!
『エレメンタリー ホームズ&ワトソン in NY』
パラマウント ジャパン
7月9日(水)DVD-BOX Part1
8月6日(水)DVD-BOX Part2 発売・レンタル開始
三木さん、田中さんがアフレコしたTVスポットはこちらで視聴できます!ぜひご覧ください!
Photo:TM & (c) 2014 CBS Studios Inc. CBS and related logos are trademarks of CBS Broadcasting Inc. All Rights Reserved. TM, (R) & Copyright (c) 2014 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.