『ウェイワード・パインズ 出口のない街』主演マット・ディロンインタビュー

現在、FOXチャンネルにて絶賛放送中の脱出ミステリードラマ『ウェイワード・パインズ 出口のない街』でTVシリーズ初主演を務めるマット・ディロン。公式には81年の映画『マイ・ボディーガード』以来という久しぶりの来日となったマット。インタビューでは長年映画界で活躍してきた彼が、TVシリーズへの出演を決めた理由、演技に対する強いこだわりを熱く語ってくれた。

 

――初めてのTVシリーズ主演ですが、出演を決めた理由は?

まずひとつはTVシリーズの在り方というのが変わったという事。昔ながらの長く続くシリーズもあるけれど、最近は10話前後のリミテッド・シリーズも増えてきて、ある程度決まった期間できっちりとストーリーを描く作品が珍しくなくなってきた。そして何よりも脚本が素晴らしかったんだ。最初に『ウェイワード・パインズ』の脚本を読んだ時、その世界がすごく鮮やかに頭の中で描けたんだ。あの街がどんな雰囲気なのかね。奇妙な人たちに囲まれたあの街でイーサンに何が起こるのか、すごく興味が沸いたよ。作品の世界観、イーサンのキャラクター、全てが気に入ったと同時に疑問もたくさん感じた。その答えを求めて2話の脚本を読んだら、疑問の答えもあったけど、さらなる謎も生まれた。ビバリーとか、クレイジーな保安官とか、怪しげな人物ばかりなんだ。イーサンは自分の状況をなんとかコントロールしようとするけど、話が進むに連れさらに謎が増えていく。おかげで夜寝ようとしてもストーリーが頭から離れないんだ。自分自身がこの街に取り込まれたみたいな気分になったよ(笑)

――シャマラン監督との仕事はいかがでした?

監督と一緒に仕事した事はなかったけど、彼の作品のファンだったからね。彼の作品はキャラクターがリアルなんだ。実際に一緒に仕事をしてみて、彼はとても知的だし、自信もあってリーダーシップもある。監督としての彼のセンスが好きなんだ。できれば彼には最後まで全部やって欲しかったよ。パイロット版を監督したらいなくなちゃったからね(笑) でも彼には一貫したヴィジョンがあったから、エピソード監督が変わっても違和感はなかったよ。彼はこのドラマのプロデユーサーでもあるから、最初に会った時に自分の疑問をぶつけたんだ。自分が何より知りたかったのは、彼が『ウェイワード・パインズ』について、どうアプローチしていくのか、という事だった。自分にとって重要なのは、キャラクターがプロットの犠牲にならない事だったけど、幸いシャマラン監督も同じ意見だった。ストーリーはキャラクターを通して語られるんだ。このドラマにはいろんな捻りが効いているし、その中で俳優としての自分の役割は、イーサンを嘘のないキャラクターにする事だからね。どれだけ捻りを加えたプロットであっても、それに負けないだけの彼の人間性から生まれる筋の通ったロジックがあるかどうかが重要なんだ。世の中には「なぜこんな行動を取るんだろう」と思う事がいろいろあるけど、その本人にとってはそうするだけの理由があるんだ。本人は自覚していなくてもね。だから監督にはストーリーのためにキャラクターを動かすのではなく、キャラクターを通じてストーリーを語って欲しいと言ったし、イーサンの行動に納得がいかなければ脚本家とも戦ったよ。

 

――やはり作品のリアリティには強いこだわりがありますか?

前にこんな事があったんだ。ある脚本を読んでいて、周りはみんな絶賛していたんだけど、俺はNYの街の描写が引っかかってね。俺はニューヨーカーだから。その脚本には地下鉄にネズミが出ると書かれてたんだけど、俺はそんな事あり得ないと思ったんだ。ニューヨークの地下鉄に出るのはマウスじゃなくてラットなんだ。でもその脚本に書かれてたのはマウスの方だった。どっちもネズミだけど、種類が違う。そこをきちんと書く事がリアリティに繋がるんだ。『ウェイワード・パインズ』に出演して、自分はこれまでの俳優人生の中で初めて自分が演じるキャラクターが持つ疑問とまったく同じ事を感じたんだけど、きっと視聴者も自分と同じ疑問を持つと思う。イーサンは真実を探すキャラクターだし、彼が何かを見つけたら、それは視聴者も一緒に見つける事になるんだ。だからドラマには彼らが信じるだけのリアリティがなければならない。それこそがまさにこの作品のテーマなんだよ。この街には奇妙なキャラクターが大勢登場するけど、それぞれの真実がある。でも視聴者はイーサンの目を通してその真実を見る事になるんだからね。

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――初めてTVシリーズに主演して、映画との違いを感じた事は?

とにかく体力維持に努めたよ。イーサンは夜に森の中を走り回ったりするからね。肉体的にはかなりハードなキャラクターだったから。パイロットを撮った後、急激に冷え込んだりして大変だったよ(笑) とはいえ、体の事はどうとでもなるんだ。自分にとって一番大変だったのは、この物語がどうなるのか、分からないまま演じる事だった。映画なら途中で変更があったとしても、ある程度最後まで分かって演じる事ができるけど、TVの場合は毎週のように新しい脚本が届いて、短時間で役作りをする。さらにそれを読んで疑問を覚える事もあるし、脚本の事を考えると夜も眠れなくなるから、最終的にはとにかく無理にでも寝るように努めたよ(笑) でもキャストの素晴らしさに救われた部分がたくさんある。メリッサ・レオやカーラ・グギノ、テレンス・ハワードなど素晴らしい俳優たちと毎日一緒に仕事をする喜びは大きかった。それがあったから脚本の大変さも乗り越える事ができたんだ。

 

――あなたが以前エピソード監督を務めた『OZ/オズ』は、まさに今のTVシリーズの変化の先駆けとなった作品だと思うのですが、その頃からドラマの可能性を感じていたのでしょうか?

確かに『OZ/オズ』はTV界に大きな影響を及ぼした画期的な作品だった。あのドラマでエピソード監督を務めた事は、自分にとっても大きな経験になったし、その後映画の監督をするにあたってもすごくプラスになったんだ。あれは映画と比べると3、4倍の速度で撮ったよ。『ウェイワード・パインズ』は俳優として参加したから、そこはちょっと違うけど、それでも自分の経験を活かして意見を言った事もあるよ。イーサンに関わる事は特にね。

――シャマラン監督はこのドラマで様々なチャレンジをしたと話してましたが、あなたがこのドラマでチャレンジと感じた事はなんだったんでしょう?

そうだな。やっぱりTVは何もかもがすごくペースが速いから、それに対処するのは大きなチャレンジだった。そのためにはとにかくハードワークが必要だったね。脚本についての自分の関わり方もそうだし。短時間で脚本を覚えるのはそれほど問題じゃないんだ。それはこれまでの自分の経験で十分対処できる事だからね。どんなプロセスにおいてもイーサンが彼らしさを守れるか、この点に自分は常に注意をしていたんだ。何度も言っているけど、視聴者はキャラクターを追ってドラマを見ているわけだから、イーサンのキャラクターに信憑性がなくなったら終わりだからね。自分も脚本を読んで驚かされるのは大好きなんだ。人は常に人を驚かせるものだから。キャラクターの人間性に注意を払っていればいろんな驚きがあるものなんだ。

――このドラマでは本当にたくさんの名優が出演していますが、その中でもやっぱりメリッサ・レオが演じたパムのインパクトが強烈で、取材陣の間でも実際の彼女もあんなに怖いのかと話題になるくらい興味を掻き立てられるキャラクターだったんですが、素顔の彼女はどんななんでしょう?

とんでもない!(笑) 彼女は素晴らしい俳優だし、頭もいいし、すごく一緒に仕事をしやすい人だよ。キャラクターについて言えばこっちからもひとつ質問したいんだけど、イーサンとテレンスが演じる保安官の関係が2話目くらいから変わってくるけど、それについてどう思った?

 

――やっぱりちょっと気味悪く思いました。

そうなんだ。イーサンも最初は彼について同業者的に思っていたのに、だんだんこいつはちょっと不安定だと思い始めるんだ。彼はエゴが丸出しで危険な人物なんだけど、そんな人物と対峙して、イーサンが自分の置かれている状況の中で、あれこれ手を変えて謎を追い、いろいろ変化していくところが演じててすごく楽しかったんだ。何と言ってもあの街には変な人しかいないから。

――ちなみに一視聴者としてあなたが気になるキャラクターは誰ですか?

やっぱり看護師のパムだな。彼女は常に目を光らせていないといけないって気になるよ(笑)

――ところであなた個人がよく見るTVシリーズはありますか?

そんなにたくさんTVシリーズを見てはいないけど、『ボードウォーク・エンパイア 欲望の街』は好きだよ。あとは『ソプラノズ/哀愁のマフィア』とか『ブレイキング・バッド』だね。『ブレイキング・バッド』は例え話がよく分からない状態で見てたとしても、何か好きな世界観だなと思える作品だったけど、そういう作品が受け入れられる事は、いい兆しにように思えるよ。『ウェイワード・パインズ』も、何が起こってるのかよく分からないけど思わず惹かれてしまう、そういう世界観を持つ作品だからね。もちろん最初から最後まで見てもらえれば嬉しいけどね(笑)

M・ナイト・シャマラン製作総指揮×マット・ディロン主演で贈る、話題作『ウェイワード・パインズ 出口のない街』はFOXチャンネルにて絶賛放送中!


Photo:
マット・ディロン
M・ナイト・シャマラン監督
メリッサ・レオ (C)Everett Collection/amanaimages
『ウェイワード・パインズ 出口のない街』
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