『新米刑事モース』VS『シャーロック』 イギリス大人気ミステリーからヤング・モースの魅力に迫る!

近年、日本で最も人気のあるイギリスのミステリー・ドラマといえば、ベネディクト・カンバーバッチ主演の『SHERLOCK/シャーロック』。世界で最も有名な探偵シャーロック・ホームズを現代版にリメイクし、多くの人気を獲得しています。ですが、イギリスではそんなシャーロック・ホームズをしのぐ人気の探偵・刑事がいることはご存じでしょうか?

その名は"モース警部"。英国の作家コリン・デクスターが生み出し、あのシャーロック・ホームズを抑えて"英国で最も好きな探偵・刑事"第1位に選ばれたこともあるといわれる、ミステリーヒーローです。ドラマ版も1987年から2000年にかけてイギリスで放送され高い人気を誇った『モース警部』シリーズ。日本でも放送されており、ミステリーファンならご存じの方も多いはず。

そのモースの若かりし日々を描くドラマシリーズ『新米刑事モース~オックスフォード事件簿~』が2012年からイギリスで放送され、原作者のデクスター自身がコンサルタントを務めていることもあって、1960年代のオックスフォードを舞台とした正統派ミステリーとして高い人気を誇っています。

 

そんな『新米刑事モース』シリーズは、カンバーバッチ版『SHERLOCK/シャーロック』でイギリス・ミステリーに興味を持った方にも、ネクスト・ブレイクするミステリー・ドラマを探している海外ドラマ好きにも、オススメできる作品です。そこで、まだ『新米刑事モース』シリーズを知らない方へ、今回はカンバーバッチ版シャーロックと比べて、新米刑事モースの魅力をご紹介します!

<CASE:1 探偵・刑事としての能力>

シャーロックはスコットランド・ヤードから依頼を受けて事件を捜査するコンサルタント探偵。鋭い観察眼と、類まれな推理能力を持っており、"マインド・パレス"という特殊な記憶法により事件捜査に対して必要な知識を全て有しています。また拳銃の腕前も一流で、優れた格闘術を習得しており、捜査手法もスマフォやEメールなどテクノロジーや科学捜査を駆使し、優れた探偵として描かれています。

 

一方、モースは刑事巡査で新米。検視で解剖される死体を見ただけで気絶したり、悪人に脅されると何も言い返せずにすごすごと帰ってしまうぐらい普通の男(笑)『新米刑事モース』の時代は1965年のため、科学捜査などはありませんが、タイプライターも一本指でゆっくりと打つなど、あまり機械も得意ではないようです。しかし、シャーロックと同様に優れた観察眼と射撃の腕を持っており、オックスフォード大学出身で暗号部隊に所属していたインテリでもあります。

 

こう比べてしまうと、モースは「刑事」としてちょっと頼りない気がしますが、地道で粘り強い捜査と、上司のフレッド・サーズデイ警部補や仲間の協力により、難事件を解決する等身大のヒーローとして描かれています。

<CASE:2 パーソナリティ>

シャーロックは頭脳明晰で、自分以外の周りの人間は無能であると考えており、それを隠すこともしていないため、周りから好かれるタイプではありません。そのため、女性との付き合いもアイリーン・アドラーを除いて、本気で付き合うことはありません。また、かなりのヘビースモーカーでもあります。また、事件の依頼がない暇な時は部屋の中で拳銃を乱射したり、ドラッグに手を出したりと常人離れした性格として描かれています。

 

モースはというと、クロスワードパズルやクラシック音楽を好み、非常に大人しい人物として描かれています。酒も飲まず、女性にもあまり興味がなく、サービス残業などもしてしまう真面目な性格。かと思えば、物分かりの悪い上司を無意識に小馬鹿にしてしまい、サーズデイ警部補から怒られてしまう一面もあり、あまり人付き合いが得意ではないようです。その点はシャーロックの近いキャラクターでもありますね。こんな真面目な性格のヤング・モースですが、『モース警部』の時代には酒やタバコ、女性も大好きと、若い時代から性格がガラッと変わっており、今後、性格がどのように「モース警部」へと変わっていくかも『新米刑事モース』の魅力の一つでもあります。

 

<CASE:3 ルックス・ファッション>

シャーロックは背が高く、暗い色の巻き毛で痩せ型。フロックコートに似たコートに、スペンサー・ハートのブランド物のスーツ、そこにネクタイはせずにシャツのみで非常にスタイリッシュなファッション。

新米刑事モースも背は高い方で、髪の色はやや明るめですが、ファッションはというとトレンチコートに暗い色のスーツとネクタイという、とにかく地味の一言。常にスーツはボタンをとめており、真面目!な感じがしますが、たまにワイシャツにアイロンをかけていないなど、以外とルーズな面もあります。いかにも新米刑事らしいです。ところで、モースを演じるショーン・エヴァンスですが、カンバーバッチがドラマ『SHERLOCK/シャーロック』により一気にブレイクしたことを考えると、彼が次にブレイクする英国人俳優となるかもしれません。実は、ショーン・エヴァンスは『Wreckers/ミスティック・アイズ』という映画でカンバーバッチの弟役として出演しており、こんなところでもネクスト・ブレイクの予感を感じさせます。

<CASE:4 バディ・パートナー>

シャーロックの相棒はご存じジョン・ワトソン。ただ相棒といっても、シャーロックは探偵稼業についてそれほど能力的に彼を必要しているわけではなく、日常的な雑用や、事件捜査中の人間関係のフォローをさせており、当初は相棒という感じではありません。ですが、エピソードが進むことでシャーロックが心を許す数少ない友人へと変わっていく人物です。

 

モースの場合も、フレッド・サーズデイ警部補は相棒ではなく上司。サーズデイはおやじさんと呼ばれ、かなり強面ですが、正義感が強く、モースの才能をいち早く見抜き、自分の補佐として重用します。また、検視の死体を見て気絶したモースを励ますために、パブでビールをおごってあげたりなど、非常に部下思いの一面もあります。そんな理想の上司ですが、モースは自分で物事を考え込んでしまうタイプのため、サーズデイ警部補にあまり事件の状況を報告しません。「なんでそれを言わないんだ!」と彼によく怒られてしまいます。その時のモースの「え!?」となってしまい、オドオドするところは女性から見たらキュンとしてしまうかもしれないぐらい可愛いので要チェックです(笑)

 

<CASE:5 バイプレーヤー>

シャーロックはコンサルタント探偵ですので、周りには警察関係者が大勢います。数少ないシャーロックの理解者の一人であるレストレード警部、シャーロックに憧れる検視官のモリー、そして、シャーロックを良く思わない鑑識官のアンダーソンとドノバン巡査部長。シャーロックは基本的に彼らの能力をあまり評価していないため、彼らとは協力をほとんどしませんし、実際のところ警察はあまり優秀に描かれていません。しかし、エピソードが進むごとに、レストレードやモリーと、シャーロックの関係が少しずつ変化していく展開には興味深いものがあります。

 

モースの周りはというと、モースの能力に懐疑的なブライト警視正(第1話のみクリスプ警視正)、頭角を現すモースに嫉妬する先輩刑事のジェイクス巡査部長など、シャーロックにおけるアンダーソン&ドノバン的なキャラクターがいます。一方で、警察医のマックス・デブリン、同僚刑事のマクリーシュ、警官のジム・ストレンジ巡査はモースに協力的で、モースは彼らのアドバイスや力を借りて事件を次々と解決していきます。そして、このジム・ストレンジ巡査、実は超重要なキャラクターでもあります。彼は後のモース警部時代では警視正へと出世しており、モースの上司になる人物なのです。

 

いかがでしたでしょうか?シャーロックは優秀な探偵が現代のロンドンで活躍するスタイリッシュ・ミステリーですが、新米刑事モースは1960年代のオックスフォードという魅力あふれる学問の地で等身大ヒーローの活躍を描く正統派ミステリーです。シャーロックと新米刑事モースの関係はある種のアメリカン・ミステリーにおけるハードボイルドとネオ・ハードボイルドの関係に近いかもしれません。さらに、単体でも面白いミステリーでありながら、『モース警部』の前日譚という世界観の広がりを持つ『新米刑事モース~オックスフォード事件簿~』。新たなイギリス・ミステリーとして、チェックしてみてはいかがでしょうか?きっとハマること間違いなしです!

『新米刑事モース~オックスフォード事件簿~』最新エピソード、「Case 10 表と裏のバラッド」と「Case 11 遠き理想郷」は、WOWOWプライムにて3月12日(土)14:00より放送。また、同月11日(金)25:40からは、「Case 8 黒の絞殺魔」と「Case 9 腐った林檎」も放送されるので要チェック!

Photo:『新米刑事モース~オックスフォード事件簿~』(C)ITV/Mammoth 『SHERLOCK/シャーロック』Robert Viglasky(C)Hartswood Films 2013/Colin Hutton(C)Hartswood Films 2010 John Rogers©Hartswood Films 2010