私たちが普段囲まれている海外ドラマ作品。今では地上波テレビ以外でも、ブルーレイ&DVDレンタルや、BS、CS放送、オンデマンド配信など、さまざまなかたちで視聴することができるようになっているが、これらのコンテンツは、いったいどのように日本に届けられるのか。狭き門と言われるこの業界のバイヤーの本音に突撃!
今回は、『バンド・オブ・ブラザース』から『ユートピア/UTOPIA』まで、およそ15年間に渡り、海外のドラマ作品を日本でリリースし続けている(株)アミューズ メディアディストリビューション事業部 企画室の竹内崇剛氏にお話を伺った。
――竹内さん、ズバリ入社のきっかけは?
アミューズの前はパイオニアLDC(現:ユニバーサル)にいたんです。その時はビデオ店とかレコード店の営業をやったり、音楽の制作とか宣伝をやっていて、実は今のような映画の仕事はしていなかったんです。やりたかったんですけど、何しろ先輩がいっぱいいらっしゃったので、希望を出してもいけなかったんですよ。そしたら、その当時アミューズにいた元上司から(もう定年してしまいましたが)、「今、人を採ろうと思っているから、来いよ」って言われて、それでこっちに来たんです。それが15年前かな。
――ということは、新卒ではパイオニアLDCに入られていたんですか?
バブルの時でしたからね(笑) 業界もちょうど25年くらい前はCDとか売れまくりの時代ですから。ビデオも、レンタル店がいっぱいできていましたからね。だから、僕くらいの45歳~50歳くらいの人はこの業界にすごくたくさんいると思いますよ。その時、景気が良かった時の新卒がたくさん入って、その下はちょっと空くんですよね。だから、40~50前半くらいがとっても多いのはそういうことなんです。
――業界自体が賑わっていた時代ですね。
そうそう、うやむやに入れたんです(笑)
――その当時は映像か、音楽か、でいったら音楽がお好きだったんですか?
いや、どちらも好きでした。両方やっている会社を探したら、パイオニアLDCと他数社しかなかったんですよ。なかなか両方やっているところがなかったから、そういうところばかり受けてたかな? バブルでありがたい事に一般企業の募集がたくさんあったのですが、普通の企業はあえて受けなかったという(笑) 偶然受かったので良かったんですけど(笑)
――出身は福井県ということですが、東京には大学からいらしたんですか?
はい、それからずっとこっちですね。すごい田舎ですよ。だから、観たい映画も全部やっていなかったです。映画館は松竹系と、東宝系と、東映系はあって。実はそこの運営をしている会社に知り合いがいて、で、試写会とか誘ってもらえたので、洋画はたくさん観る事ができたので、すごい助かりました。
――私も田舎出身だったので、本当に娯楽が少なくて、「ロードショー」なんかの雑誌を立ち読みしたりしていました。
本当に、そういうところでしか情報を得られなかったですよね。当時は映画も地上波でやっているものしかわからなかったですからね。まだレンタル店も家の近所にはなかったですから。(できたのも)30年くらい前じゃないですか? だから、観られる環境が全然なかった。しかも当時はVHSですからね。たくさん借りられたやつは途中の映像がすごく質が悪かったり。ですので、スクリーンで観る機会が人より多くて、良かったですよ。
――ちなみにどんな作品に興味があったのですか?
子供の頃に観てすごく面白かったのは、『ロッキー・ホラー・ショー』、『スキャナーズ』、『ブレードランナー』、『ブルース・ブラザース』、『死亡遊戯』かな。『スキャナーズ』とか『ロッキー・ホラー・ショー』は、本当は見ちゃいけなかったと思うんですよね。でも、すごくかっこいいと思っていて、すごく好きでした。なので、やっぱりちょっと変わっていて、友達と映画の趣味が合わずでした(笑)
――映画が好きで、自然とそういう業界に入るぞと、思われたということですね。
そうですね、そのつもりでいて、それで東京にある学校に行かないと!っと思って、東京の学校に来たんですよね。そうしないと、この業界に就職できないかなと。しかもこれがまた、親にとても反対されて大変でした。うちは病院で、しかも長男で(笑)、問題ですよね(笑)
――受験の時に突然言ったんですか? いろいろな反対勢力がありそうな予感...。
そうですね。実はちょうど弟がいて、弟が医学部を目指してくれたので、助かりました。
――これまでいろんな作品に携わっていらっしゃると思うのですが、特に印象深かった作品はありますか?
ちょうどアミューズに移った時に、「購入しようとしているんだけどどう思う?」と言われて、トレーラーを観せられたのが『バンド・オブ・ブラザース』でした。超すごくて、「これいいですね!」って、販促の担当をやったのが一番印象深いですかね。
――入っていきなりそんなことになるんですね...。
はい。そうです、いきなり(笑)
――その当時もHBOの作品は、高かったですか?
高かったみたいですよ(笑) 特にあれはスピルバーグの作品だったので。あとは、『ギャラクティカ』もすごく面白かったですね。あとは、『キル・ポイント』という、あまり売れなかったんですけど、面白いテレビドラマがありました。
――「これはきっと面白い」と思って、アメリカをはじめ他の国では人気があるのに、いざ日本でリリースしてもなかなか難しいのはありますね。そういう作品を伝えていくのは大変ですか?
そうですね。これは時と運もあって、同時期にすごい海外ドラマとかが出てしまうと、みんなそっちに行っちゃうし...、わからないですね。映画のヒットに関してもそうですよね。
――セールスの数字ですとか、そのような成績が良くなければいろいろ言われたりなどつらい面もありますか?
もちろんあります、仕事なので。
――買い付けのコツはありますか? 「こういう感覚は必要だよね」というようなものは?
ドラマに限らないんですが、ぱっと見で、「こんなキャッチコピーで、こんなビジュアルで作ったらいけるんじゃないか」と、瞬時に思えるものを買うようにしています。すぐ自分が他の人に作品を説明できるような、良い作品というのはポイントがあるので、そういうのを買うようにしていますね。
――伝えやすい、わかりやすい作品ですね。
はい。あと、気を付けないといけないのは、俳優の名前だけで立っているようなものは買ってはいけないという。会社では通しやすいかもしれないし、宣伝もしやすいけど、やっぱり中身ですね。話をちゃんと自分がイメージできるかというところですかね、やっぱり。
――そういう感覚は、例えばどうやって獲得していくのでしょうか?
僕は音楽で宣伝をやっていたので、音楽を聴いて言葉で説明できるような人、売れるアーティストというのは、言葉で伝えても伝わる人、そういう人は売れるので、それと同じかなと思っています。自分が面白いと思うところを説明できるものが良いと思います。