私たちが普段囲まれている海外ドラマ作品。今では地上波テレビ以外でも、ブルーレイ&DVDレンタルや、BS、CS放送、オンデマンド配信など、さまざまなかたちで視聴することができるようになっているが、これらのコンテンツは、いったいどのように日本に届けられるのか。狭き門と言われるこの業界のバイヤーの本音に突撃!
今回は、『バンド・オブ・ブラザース』から『ユートピア/UTOPIA』まで、およそ15年間に渡り、海外のドラマ作品を日本でリリースし続けている(株)アミューズ メディアディストリビューション事業部 企画室の竹内崇剛氏にお話を伺った。
海外ドラマ買い付けの裏側に迫る!(株)アミューズ竹内氏にインタビュー<前編>はこちらから
――もし海外ドラマのバイヤーになりたいのなら、このスキルだけは身に付けておいた方がいいというものはありますか?
たまに思うのは、こういう業界に入りたい人でも、全然映画とかドラマを観ていない人がいるじゃないですか。すごく不思議です。なぜ、それほど作品を観ていないのに、この業界に入りたいのかが不思議です。スポーツをやるにしても、練習をいっぱいしないといけないのと同じですね。会って話を聞いていても、そんなに本数を観ていない人が多くて、あまり本気度を感じない人が多くて残念な事が多いです。たくさん観ればやっぱり目は肥えてくると思いますよ。あとは、トレーラーを観て、本編を観て、どう違うかという事を自分なりに分析してみたりすると良いです。トレーラーが面白そうで騙されそうなものもあるじゃないですか。逆に、トレーラーは面白くなくても本編が面白かったりして、これどういうことなんだろうというのがあるんですけど、やっぱり、両方観て、自分で「俺ならこう作るな」とか考えると良いですよ。なので、観て考えるというのがすごく大切ですかね。うん。やっぱり、一番はたくさん作品を観ることですね。
――最近は、インターネットの環境で、どこにも出かけなくてもすぐに様々な作品が観られるという環境だと思うのですが、それでも観ない人が多いという要因は何だと思いますか?
何でしょうね。音楽もシングルしか聴かなくて、アルバムは聴かないようですからね。断片、断片だけを切り取ってる印象はありますよね。僕の世代は、めっちゃレンタル屋さんに借りにまわったりとか、遠くの映画館まで観に行ったりしないと、観たい作品がなかったりした時代でしたから(笑)
――手に入りやすくなりすぎて、ありすぎて、何からどう手を出したらいいかわからない状態なのかな?という気もします。
そうかもしれませんね。僕らは情報に飢えていた時代だったので、贅沢な状況で、もったいないですね。僕らの世代は、情報をとる為に自分で動かないといけなかったですからね。
――買い付けの現場は、資料もまだ無いという状態で買わなければならない事もあると。
最近は、ある程度できてから、ちょっと観られるものができてから商談に入れるので、やっとまともになりましたけど、一時期はたくさん会社があって、シノプシス(あらすじ)とかで、主演も予定みたいな状況で購入していた状況でした。あまり健全ではなかったですね(笑)
ただし、作品数をたくさん観ていないと、監督や脚本家の情報が自分の中に蓄積されないので、買い付けできないんですよね。この人がどんな作品を撮っていたか、この役者が何に出ていたかを知らないでは。買い付けに行ったら、判断できませんからね。
――今は、パイロット版を観て買う、ような?
そうそう。内容を細かく見られないままで買ってしまうと、後で良いことがなかったですから(笑) 高い買い物ですしね。
――1作品どのくらいですか?
ピンキリですけど、アメリカの方が高めですよね。製作費にもよりますけど。以前は、日本への販売価格は、製作費の10%相当と言われてた時代がありました。今は、10%もないと思いますが。ただし、コンペティターがいれば値段も競り合って高くなりますし、逆に誰もいなければ安くなる場合もあります。最近は、アメリカよりもヨーロッパの作品がいいなあと思っています。イギリスの『ユートピア/UTOPIA』、フランスの『リターンド/RETURNED』。あとは、一昨年やった『キリング』がリメイクされたものも非常にリーズナブルに日本へ持ってくることができました。『ドラゴン・タトゥーの女』のオリジナル版もやっていた時に、「あっちはいいのあるな」と思いましたね。『リターンド/RETURNED』はぜひ観てください。非常に映画的なつくりなので、台詞もアメリカと違って全然少ないし。ペラペラしゃべらない。
――『リターンド/RETURNED』のビジュアルは独特ですよね。ハリウッドにはない、独特な雰囲気が...。
はい。これもあんまりしゃべらないですよね。
――これらの作品も、「あ、いいな」と思ったら、コンペティターがいなければわりとすんなりと買えてしまうのでしょうか?
そうですね。そういうケースはあります。
――竹内さんが発見してくれて、こういう流れで私たちは目にできるのですね。
ノーネームのキャストで、監督もノーネームですからね。結構冒険ですが、中身重視で考えています。
――そういう作品の方が、ストーリーに集中できますよね。作品として純粋に面白いなと判断しやすいですし。
最初はフランス語だから全く何を言っているかわからないですけど。とにかく映像が綺麗でした。言葉がわからなくても、観て面白いものは面白いんだと信じています。韓国映画やテレビドラマは、10年以上携わっていますが、韓国語が全然わかりません。でも、いっぱい観てると、基本は、言葉がわからなくても、クオリティの高い作品はわかってくるようになりました。退屈することなく、最後まで入り込めて観れた映画は、買いだと判断しています。わかりますよね、演技で。そういうのもいっぱい観ていると、ストーリーってあるじゃないですか。大体こんなことを言っているんだろうなと。僕、実は英語できないんですよ。しゃべれないんです。言っていることは、完璧ではないですが大体わかりますけど。結局、英語ができないので、どの国でも同じなんですよね。
言葉がわからなくても最後まで観ることができる作品は、本当に面白いです。
――てっきり語学が重要なのかと思っていました。
もちろん語学力は重要ですが、映像を観るチカラを養う事も、すごく重要だと思っています。
海外ドラマに関して、もしこういう仕事がしたければ、最初は、吹替で観ない方が良いと思います。吹替だと、会話になるので字幕と違ったりするじゃないですか。
なので、最初は吹替で観て、2回目は字幕で観ると、違いがわかってさらに面白いですよ。
会話としてちゃんと成立しないとだめなので、吹替の翻訳者さんと打ち合わせをして、作品の流れを重視して、字幕を変えたりする事はありますね。
いろんな国の作品を観るのが、良いですよ。
――最近、「この国の作品、面白いな」というのはありますか?
やっぱりヨーロッパは面白いですね。アメリカと違って全然しゃべらないで、間がしっかりあって、全部を伝えない。アメリカ作品は全部をしゃべる。ヨーロッパだと、じめーっとした感じで日本人に合う感じがしますね。ちょっと暗い感じで、全体的に。全部がハッピーエンドというわけではない。アメリカはハッピーエンドじゃないとね。その辺が、ヨーロッパは良いなと思いますね。映画もそうですけど。
――最後に、今話題のこの作品について。『荒野のピンカートン探偵社』でディーン・フジオカさんが出演していますが、竹内さんはディーンさんについての印象は?
このドラマの企画をしていた時は、元々台湾を拠点にして活動していたのですが、アメリカにもグループ会社ができて、いろんな企画をやっていこうという会社の動きと、国に捉われずに活動していこうとするディーンが居て、形になった作品です。
今までにない、新しい魅力を持った俳優ですね。
――竹内さん、邦画やアニメにも携わってらっしゃるんですね。忙しすぎたりしませんか?
そうですね。でも好きなんですよ。今でも僕は仕事とプライベートで年間100本は映画を観ていますからね。自腹で50~60本は観ていると思います。劇場や、スクリーニングや映画祭に行って150本くらいは観ているのかな? とにかく観ないとね!
――竹内さん、どうもありがとうございました!
竹内さんが今一番おススメするテレビドラマ『ユートピア/UTOPIA』はアミューズソフトより、本日4月27日(水)にシーズン1が、5月25日(水)にシーズン2がリリース。
Photo:
『ユートピア/UTOPIA』場面写真 (C) Kudos Film & Television Limited 2013
『リターンド/RETURNED』場面写真 (C)2012 HAUT ET COURT TV
ディーン・フジオカ(『荒野のピンカートン探偵社』) (C)Pink Series, Inc.
『ユートピア/UTOPIA』ジャケット写真 (C) Kudos Film & Television Limited 2013