『クワンティコ/FBIアカデミーの真実』ボイスキャスト直撃インタビュー!

全米視聴率で、あの『クリミナル・マインド/FBI vs 異常犯罪』や『NCIS~ネイビー犯罪捜査班』を超えた全米大ヒットドラマ、『クワンティコ/FBIアカデミーの真実』。FBI捜査官たちの原点であるFBIアカデミーを舞台に描く同作は、捜査官の「過去」、アカデミーでの「現在」、テロ事件が起こる「未来」が交錯するノンストップ・クライムサスペンスドラマだ。その吹替え版で、アカデミー研修生のアレックス・パリッシュ役の木下紗華、教官リアム・オコナー役の咲野俊介、アレックスと同じ研修生のライアン・ブース役の土田大を突撃インタビュー! 付き合いが長いという3人の現場での雰囲気の良さを象徴するような笑いの絶えない会話を通して、ドラマの見所などを語ってもらった。

――アフレコ収録を第8話まで終えているそうですが、皆さん揃って収録されているという現場の雰囲気はいかがですか?

咲野:いかがでしょうか? ムカつくこととかあれば(笑) 誰が許せないとかあれば。
木下:基本、お兄さんたち(咲野&土田)がよくしゃべります。収録以外で(笑) 収録していないところで、お兄さんたちがいろいろ面白い話をして皆さんを盛り上げて、緊張をほぐしてくれるのですごくありがたいです。
咲野:盛り上げてるのか盛り下げてるのか分からないけどね。

――4時間くらいかけて収録されていると伺っていますが。

木下:かかる時はそうですね。
土田:最初は結構かかったよね。
咲野:小難しいセリフが多いので。

――FBIアカデミーが舞台で、過去や現在、未来を行き来するという設定ですが、時間軸によって声を変えたり、意識的に違いをつけたりされているのですか?

土田:でも、そんなにタイムラグはないのでやりにくさはないですね。未来もたった9ヵ月先なので。
咲野:まぁ、僕は過去のシーンでは「バブー」って入れてるけどね(笑) その程度ですよ。
木下:いつもこんな感じで自由にやってます。

 

――日本初放送ということですが、実際に初めて作品をご覧になった時の感想を聞かせてください。

木下:過去と現在と未来が入り混じってどたばたと...。私の演じるアレックスは、第1話の冒頭の9ヵ月先の未来でいきなりテロの犯人に仕立て上げられて、誰が真犯人か分からない状態で彼女は色々奔走するんです。回を重ねても謎がどんどん深まるばかりで。でも、現在の訓練の内容とリンクしていたりとか、色々練られていて見ていて面白いなと思いました。あまり他のドラマでは私は関わったことのないテイストの作品ですね。
土田:FBIはよくいろんな作品に出てくるけどね。
木下:そうそう。FBI捜査官が主人公だと大体、事件が起きて、解決して、という一話完結パターンが多い中、これはどんどん話が続いていくタイプで、ストーリー性があって面白いです。
咲野:ライアン・ブースを演じる土田大さんはどうですか?
土田:ライアン・ブースはね、つぶらな瞳で。可愛いですね。
咲野:物語の話ですよ(笑)
土田:物語の話?(笑) まぁ、いきなりアレックスと衝撃的な出会いをしてね。まさかFBIアカデミーのシリーズであんな出会い方があるとは思ってなかったですけど。どんな出会い方かは、是非第1話をご覧になって確認してください。
この作品で面白いなと思ってるのは、FBIになるためのアカデミーでの服。あれって本当に彼らのユニフォームなんですかね?
咲野:研修生用の男女共通の洋服があるという設定になっているんですけど、果たして本当なのかどうか。
土田:カバンにも「FBI」って入ってますよね。でも、そんなカバンしょってたらFBIだってばれちゃうじゃない(笑)
咲野:しかも、まだFBIじゃないのにね。Fの前に「準」って足すか?(笑)
木下:それはでも、本当にみんなで言ってたんですよね。いいのかな、って(笑)
土田:あのへんがね、『FBIアカデミーの真実』ってね。真実なのかどうか分からないですけど、多分真実なんでしょうね。
咲野:監修は入ってると思うけどね。
土田:すごく興味深いところだと思います。咲兄はどうですか?
咲野:まだ内容を見る前、『クワンティコ FBIアカデミーの真実』ってタイトルですけど、キャストを見ても若い男女が多いので、てっきりFBI捜査官を目指している若者たちの惚れた腫れたの熱血物語かなと思ったんですけど。開けてびっくり、全然違うんですよね。
木下:単純に若者っていうより、新人ですが大人ですよね。
土田:いろんなキャリアを経て入ってくるからね。
咲野:もちろんそれは筋として一つあるんですけど。FBIには国を守るとか正義を正すっていうことが大前提にあって、でも実はアカデミーにいるメンバーそれぞれが自分の正義というものを抱えてる。それは自分の生い立ちであったり、環境や境遇であったりに影響していて、だから自分の正義のためにFBI捜査官になろうとしているというお話なんですよね。いわゆるステレオタイプの正義ではない点が面白いです。そこで、若い人たちに混じって、僕の役も含めプロの捜査官たちが教官として出てくるんですけど、その人たちも最初からFBIの教官を目指していたのではなく、自分の正義を貫こうとしたらある種の失敗をして教官になっているので、自分の真似をするなと言ったりとか、自分の正義に若い人たちの正義を近づけようとしたりするんですけど、彼らは彼らの正義を持ってるから必ずしもうまくはいかないんですね。正義の種類が様々であるってことがこのドラマの面白いところかな。

 

――複数の時間軸が同時進行するストーリーで、しかもそれぞれの登場人物が秘密を抱えているため、キャラクターのバックグラウンドや人間関係がつかみづらそうに思えるのですが、最初はどういう要素を手掛かりにして役作りされたのですか?

木下:私の場合、第1話ではアレックスの目的とかもあまり描かれないままだったので、演じている女優プリヤンカー・チョープラーさんの第一印象、ほんとに綺麗だし頭もいいし運動神経もあってという、この人の雰囲気でまず作り上げていかなきゃいけないという使命感みたいなのがありましたね。話が進むにつれて、すごくリーダータイプの人だけれど、実は集中すると周りが見えなくなって突っ走っちゃうところがあったり、すごく男勝りなところがあったりとか、段々とアレックスの性格は見えてきました。最初は、とにかくこの綺麗な人の雰囲気を崩さないようビジュアルを大事にしましたね。
咲野:そんなこと考えてたの?
木下:考えてました。だってすごく胸おっきいし。
土田:そこ関係あるの?(笑)
木下:今まで自分が演じたことのないタイプだったんですよね。
土田:そうなの? 全然違和感ないけどね。
木下:優しいですね。
咲野:なんだその会話(笑)

土田:僕が演じるつぶらな瞳のライアン・ブースは、自分が振られる役の中では、珍しくすごくストレートなタイプの役ですね。とにかくアレックスが大好きなんですよね、彼は。まぁそこだけ貫けばいいかなと。余計なこと考えずに。特に何かやってくれということもなく、彼女をサポートしていくっていう。木下さんとは長い付き合いですが、こういう形でお仕事をするのは初めてなので、これからも全力でサポートしていきたいなと思う次第です。
咲野:僕の演じるリアムはほんとにダメ男なんですね。家庭人としてもダメだし。まぁ職業に関してはわりかしちゃんとやってると思うんですけど。FBIであること、父親だったり夫であることに疲れ果てているところから始まるんです。僕自身、FBIであることには疲れきっているので(笑)、気持ちは分かるんですよね。(※咲野さんは、『クリミナル・マインド FBI行動分析課』デレク・モーガン役の日本語吹替を担当) 過酷な仕事ですから。さっきも言いましたが、自分の正義だったり国の正義であったりといういろんな正義の中で「これが正義だ」って言われたらそれを全うしなくてはならないことって、すごくしんどいと思うんですよね。だから、疲れ果てているダメ男になってしまうであろうなと割と簡単に想像がつきました。そんな彼が若い教え子たち、特にアレックスにちょっとずつ影響を受けていくんです。教えてるのか教わってるのか分からない状況はキャラクターとしてすごく面白いと思います。
木下:完璧な人間いないですもんね。
咲野:そういう視点で見ると、みんな隙が多くて、FBI大丈夫か?!て少し心配になりました(笑)

――今、お話を伺っていてすごく雰囲気も仲も良さそうな現場というのが伝わってくるのですが...。

咲野:そうですね。僕は初めてキャストの名前を見た瞬間に安心しましたね。主人公アレックスを演じるチョープラーはボリウッドで歌って踊る女優さんだそうですけど、彼女の声を木下紗華ちゃんがやると聞いて。僕は木下さんとは別の番組でご一緒していて、もう7年になりますけど、そっちでも彼女はインド人役なので。僕の中でのインド人声ですから(笑)すごい安心感。かたや土田君とも付き合い長いですけど、ナーバスでモテる男、坊主頭をやらせるともう。
土田:そうですね、元海兵隊とか多いですよね(笑)
咲野:でも基本弱虫。そういうのやらせると完全に安心感あるので。なので、キャスト表見た瞬間に『クワンティコ』もう大丈夫だって思いました。
土田:特にこの作品って女性が強く描かれているんですよ。男は刺身のツマみたいな。頼りないところも、やってていいなって。イニシアティブを握りきれないというか。そういうところもこのドラマの面白いところですね。

――ブースの中で演技について相談やアドバイスをし合ったりされるのですか?

木下:よく悩んでいるのは私ですね。悩んでいる時にお兄さんたち二人が楽しい話をしてくれます。キャストは若い方も多いので、そういった意味ではどうしても緊張感が流れるんですけど、そういったところをベテランの方々が芝居のしやすい環境を作って下さってます。

 

――今回FBIアカデミーが舞台ですが、皆さんご自身はそれぞれ声優のアカデミーに通われたりしたのですか?

土田:いきなり現実的な話だね(笑) うちには養成所があるんですが、朗読会をするにあたって養成所のフロアを借りたんですよ。そしたらサンドバッグとパンチングミットが置いてあって。どうやら空手の授業をやってたみたいなんですね。仮に声優になりたくて養成所入った時に、空手って?(笑) まぁ『クワンティコ』ならありですけど。でも確かに、必要なことかもしれないですよね。武術の精神と僕らがやってることって、どこかしら通じるものがあるから。
木下:『クワンティコ』のようなロマンス的なことは私がいたところではまったくなかったですね。私が知らないだけかもしれませんが(笑) まぁ必死な競争社会なのは同じですね。
咲野:僕はいわゆる声優の基本的な訓練を受けたことはなくて。さっきのサンドバッグの話にちょっと関わるんですが、僕はもともと舞台や映像をやっていて、最初は(声優は)いいよな楽で、しゃべればいいんだからって思ってました。でも、実はそうではなくて。逆に動いて何かを表現という勝手な言葉をつけてごまかしてきたものが通用しなくなったわけで。それが段々難しいことに感じてきました。だから、サンドバッグを叩く。サンドバッグを叩くアドリブは実際にやってみないと分からないでしょ。最近の現場でお会いする若い子たちに共通して言えることなんですが、ことアドリブって書いてあると彼らは原音のものを再現しようとしちゃうんですね。でも、そうじゃないんですよ。サンドバッグを叩く音は原音をいくら再現しようとしてもできない。サンドバッグを叩いている体を作らないとできないはずなのに、そこを飛ばしてしまう。だから、サンドバッグが必要なんですよ。
土田:確かにアニメーションにはない、実写ならではの息遣いがありますよね。僕は役者さんの呼吸をよく見るんです。セリフが吸う息から入ってるのか、吐く息からなのか。音に入ってない時は役者さんの肩の動きを見ます。その人にシンクロさせるために絶対的に必要なものなので。役者さんが実際に演技しているわけだから、こっちも違和感なく自然なものにしたいなとは常に思っています。
咲野:特にこのドラマは走ったり飛んだりといろんなことが起こるので、アドリブの多様性というか、台本には「AD」(アドリブの意味)としか書いてないので、ピンポイントに正解を導き出すには、その体を作るのが一番の近道。

――美男美女の多い作品ですが、ご自身が演じたキャラクター以外でお気に入りを教えていただけますか?

咲野:いい質問きたね!(笑)
土田:聞かれなくても最後に絶対言おうと思ってたんですけど、僕は個人的にシェルビー・ワイアットが大好きなんですよ。ビジュアルでもうノックアウト。
木下:土田さんのシェルビーチェックが毎回すごいんですよ。今回の口紅の色がちょっと違うとか、寝巻き姿がいいとか。
咲野:過去の方が薄化粧で可愛いとか(笑)
土田:今っぽく言うと、シェルビー推しですか。
咲野:推しも古いわ(笑)

 

――実は射撃の名手ですしね。

土田:そう!
咲野:ただ、ライアンはシェルビーとはほぼ絡まないんだよね。
土田:そうなんですよ...。でも、ビジュアル見ているだけでも、男心、いや俺心が癒されるというか。超美人だと思います。
木下:私はサイモン・アッシャー。ギャップがある男性が好きで。サイモンは一見オタクっぽいし内向的なんですが、機械系に詳しくて。ふと見せる違う顔、二面性があるような雰囲気をたまに醸し出すんですよ。一人になった時にスッと目の色が変わったりとか。表情の変化が彼はすごいですね。そういうところにドキっというかゾクッとしたりとか。キャラクターとしてとても魅力があります。
咲野:僕はニマ・アミン推しで。なぜニマ推しなのかはご覧になれば分かります。
土田:現場ではずっとミランダ(リアムの上司)推しって言ってんのに、なんで急に変えてんですか(笑)
咲野:あまりミランダを推すと疑われそうだから。ニマはなにしろイスラム教徒ですからね。そんな彼女がアカデミーに入っているという。

――最後に、見所を教えてください。

木下:回を追うごとに謎ばかり増えるので、大変だとは思うんですが、いろいろ整理をしながら見ていくと細かいところで発見があったりとか、あの時のセリフがここで繋がるんだとか、伏線をきちんと回収しているので、セリフをよく聞いてもらえればより広がっていって楽しめると思います。
咲野:そのためにも日本語の方がスッと頭に入ってくるからね。情報量が多いから、字幕版で未来・現在を入れ替えながら見ていくのは本当のネイティブじゃないと無理かもしれません。これこそ吹替えで見た方がいいと思います。
木下:じゃあ、土田さんが締めを。
土田:締め? シェルビー最高です(笑) 僕らも手探りでやっている状態で、この作品に関しては次回の台本はその日の収録後に頂けるんですけど、それを見るのがいつも楽しみなんです。ネタバレとか個人的にあんまり好きじゃないんですけど、この作品に関しては気になります。僕らも知らされてない突発性なものっていうのが実際の演技で生きれば吹替え版もいいんじゃないかなと思います。

『クワンティコ/FBIアカデミーの真実』はDlifeにて7月16日(土)より日本独占初放送。
(二)毎週土曜 23:00~24:00
(字)毎週金曜 25:00~26:00

■第1 話『逃亡の始まり』ストーリー
クワンティコのFBI アカデミーに、アメリカ中から選ばれた未来のFBI の精鋭たちが集結する。アカデミー初日は、研修部・次長のミランダの挨拶から始まり、施設を見学。そして上司のリアムから演習を言い渡される。その演習とは同僚の中からターゲットを一人選び、ファイルから抜かれた情報を暴くというもの。

【アレックス・パリッシュ】プリヤンカー・チョープラー/木下紗華
【リアム・オコナー】ジョシュ・ホプキンス/咲野俊介
【ライアン・ブース】ジェイク・マクラフリン/土田大

Photo:
アレックス・パリッシュ役の木下紗華
リアム・オコナー役の咲野俊介
ライアン・ブース役の土田大
『クワンティコ/FBIアカデミーの真実』 (C)2015 ABC Studios