新『ROOTS/ルーツ』出演主要キャスト&製作総指揮インタビュー

ヒストリーチャンネル 日本・世界の歴史&エンタメ にて、8月22日(月)23:00より、4夜連続で日本初放送となる『ROOTS/ルーツ』。1977年にドラマ化され"クンタ・キンテ"という主人公の名前と共に日本でも大きな注目を浴びた衝撃作が、40年の時を経て、今、新たに蘇る。

『ROOTS/ルーツ』

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今回は主要キャストのアニカ・ノニ・ローズ(キジー役)、アンナ・パキン(ナンシー・ホルト役)、そして、オリジナルの『ROOTS/ルーツ』でクンタ・キンテを演じたレヴァー・バートン(今作では製作総指揮)、同じく製作総指揮のマーク・ウォルパーのインタビューについて紹介しよう。

――アンナ・パキンさんとアニカ・ノニ・ローズさんへの質問です。今回の『ROOTS/ルーツ』という作品は人種差別の問題を扱っていますが、更には、男性と女性の差別についてもテーマにした作品だと思います。このキャラクターを演じるにあたり、それぞれどのような準備をしてきましたか?

アニカ:本をもう一度読みました。それとルイジアナ州のホイットニー農園というアメリカ国内で唯一の奴隷の博物館にも足を運んでみて、奴隷になった人々からの視点というものを再確認しました。とても感動しましたし、想像を絶する内容でした。農園はとても美しい場所にあったけれど、同時に恐怖感を覚えました。また、奴隷にまつわる物語も多く読みました。アメリカの国家プロジェクトの一つとして1930年代に発行された、奴隷制を体験した方々の話をまとめた書物です。奴隷制は本当に非人道的で残虐な制度です。奴隷制(Slavery)という言葉を聞くと、わたしたちは束縛されることや自由を奪われることを思い浮かべますが、それは、人間を束縛するという恐ろしい仕組みそのものだったのです。奴隷制は、彼らを身体的に束縛しただけでなく、彼らの思考をも拘束しました。そしてその仕組みは世代を超えて受け継がれていったのです。人間が同じ人間に対してこんなに残酷な事ができるものかとショックでなりませんでした。そしてそれはアメリカに連れて来られたアフリカ人だけが受けたのではなく、世界各地に広がっていったアフリカ人たちに対して行われていたのです。奴隷制そのものを体験せずとも、奴隷制と同じレベルの抑圧は横行していました。例えば日系アメリカ人の強制労働キャンプなどもそうです。奴隷制とは違いますが、人種が違うというだけで、自由を奪われ、家族を持つなどの一切の行動が制限され、様々な権利がはく奪されたんです。
『ROOTS/ルーツ』

アンナ:私も色々な史料を読みました。私の演じるナンシーは、原作にはない架空のキャラクターですが、実在した方の話がベースになっています。彼女は当時スパイとして活動していたようです。その他にもとても興味深い本を読みましたが、それらを通して、女性がいかに強くあり続けてきたかという事実に驚きました。その当時の人はなおさらです。その女性の強さを発見できたことは、とても良かったと思っています。
『ROOTS/ルーツ』

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アニカ:女性を奴隷にするということは、家族全員を奴隷にできるということを意味していました。とても意図的で恐ろしいほど巧妙な方法です。その制度のために継続的に人間が投入され続ける仕組みなのです。当時の女性が、そのような状況に耐えるだけの力をどのようにして持てたのか、私には分かりません...。身体的にというだけでなく、精神的にもどう耐えられたのでしょうか。農場でも台所でも常に強制的に働かされました。さらにいつでもレイプされてしまう境遇です。子供を出産した後も、休みは与えられず、働かされました。生まれた子供もすぐに取り上げられたり、子供と絆ができるまで一緒に過ごせたとしてもすぐに売られてしまったり、恐ろしい手法で殺されたり、モノと同じ扱いでした。産んだ子供との間に生じた自然な親子の絆を持ち続けることは許されませんでした。そのため、わずかな期間で築けた親子の絆は、固くならざるを得なかったんです。女性一人を奴隷にするということは、家族を奴隷にするということを意味していたんです。

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レヴァー:それはまさにこの物語が描いたことでもあり、この家系が世代ごとに持ち続けた強さなんだ。自分たち家族のアイデンティティを保ち続けるため、そして家族の絆を守るために闘ったのです。この小説の著者で、現代に生きたクンタ・キンテの血族アレックス・ヘイリーが、彼の家系の話を知っていたのも、そのような家族の絆の力が強かったからなのです。それぞれの世代が、そのストーリーを生かし続けてきたということだよ。

アニカ:そしてその中心になったのが女性だったわけです。

マーク:アレックスはこのストーリーを自分の祖母から受け継いだしね。

アンナ:わたしたち人間は...、何て素晴らしい生物なんでしょう。

『ROOTS/ルーツ』

――製作総指揮のお二人に質問です。アフリカをテーマにすることで大変だったことは何ですか?

マーク:オリジナル版制作の時は、実はアフリカでの撮影はなかったんだ。今回は実際にアフリカの大地まで足を運ぶ機会に恵まれ、この作品の中に母なる大地の莫大なエネルギーを注入することができたよ。何て幸運なことだろう。アフリカでの撮影はとてもうまくいったよ。アフリカ大陸は本作の撮影においては非常に重要な場所だった。現地で撮影を行ったことで製作費がかさんでしまったのは確かだけど、それはあまり問題にしなかったね。ストーリーが始まる最初の1時間半は、アフリカ大陸で撮影することで本物の映像になると感じていたから、それには絶対にこだわっていたんだ。

――本作でクンタ・キンテを演じたマラカイ・カービーについてお聞きします。彼をメインキャラクターとしてキャスティングした経緯について教えてください。

レヴァー:彼は本当に素晴らしい人物だよ。強い心を持っていて、戦士のようであり、父親のような存在。僕は本当に彼のことが大好きだよ。このキャラクターは、観る者が恋に落ちるような人物でなければならなかったんだ。

『ROOTS/ルーツ』

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アニカ:実は昨日私は初めて彼とフィドラー(フォレスト・ウィテカー)とのシーンを観たのですが、鳥肌が立ちました。シンプルさと美しさを備え、怒りとも違った強さがありました。余計なものが一切なくて、とてもオープンです。彼は本当に特別な人だと思います。予想外の演技をするので怖いくらいです。それに気づかないほうが難しいくらいなので、視聴者は彼の演技で圧倒されると思いますよ。とても可能性に満ちた人です。

マーク:このシリーズ番組は、クンタ・キンテというパワフルなキャラクターがいるからこそ成り立つ作品です。レヴァー・バートンが演じたオリジナル版のクンタ・キンテは特に素晴らしかったので、わたしたちにとってはプレッシャーになりました。それもあって、今回も現代の人々の心に響くようなキャラクターを見つけることはとても重要だったんですよ。

――クンタ・キンテ役を何か月も探し続けたとおっしゃっていましたが、やはり彼を見つけたときはピンときたわけですよね?

マーク:その通りです。一目見た瞬間から彼のことが大好きになりましたよ。世界中を探し回らなければクンタ・キンテを演じられる人物に出会えないと思っていたしね。でも実際にマラカイ・カービーは、オーディションを開始して5番目に会った候補者だったんだ。彼に会ったとき、すぐに彼のことが気に入ったんだけど、他の候補者の可能性も全部あたる必要があったので、アフリカの4カ国、ヨーロッパの6カ国、アメリカ全土、と探し続けたんだ。その全てのプロセスを経て、やはり最初の2週間目で出会ったマラカイに戻っていったというわけ。彼はずっとその間、我々のことを待っていてくれた。それはとても幸運だったね。僕らが他の可能性をあたっている間に、彼が他のプロジェクトに奪われなくて、本当にラッキーだったよ。

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――近年、人種差別についてのテレビ番組や映画が増えています。それはやはり人種差別がわたしたちの社会において大きな問題であるということを表していると思います。なぜわたしたちはいまだに人種差別の問題を乗り超えることが出来ないのだと思いますか?そして、将来はこの問題を解決することが出来ると思いますか?

アンナ:近い将来は無理だと思います。過去の事としていつか話せる日が来ればいいですよね...。

アニカ:人は人種間で愛し合ったり、結婚したり、家族を増やしてゆくにつれて、お互いを近い存在として感じられるようになると思います。そのようなことを通して、わたしたちがいかに繋がりあった存在であるかということがよく分かります。今の時代、兄弟やいとこを見れば、自分の血筋や家族が分かります。でも当時は血縁関係を認めない人もいました。今言えるのは、わたしたちがもっともっとお互いと繋がり合って、家族を増やしてゆけば、近づき合えるようになるはずです。そうすることでお互いを理解し合う夢のような社会になってゆきます。互いの文化を尊重し合うことはとても重要です。そのような作業を続けてゆくことで少しずつ壁を取り払えると思います。

『ROOTS/ルーツ』

マーク:我々はとにかく次の世代の子供たち、その次の子供たちへと歴史を繰り返し伝え続けてゆく必要があります。そして互いの国の歴史についても共有しあう必要があります。今の時代、ひとつの社会の物語は、世界中の物語でもあるのです。

レヴァー:『ROOTS/ルーツ』が注目される理由は、わたしたちの生活の基盤となる「家族」という普遍的なテーマを描いているからなんだ。耐えがたく恐ろしい出来事に対し、いかに人間の魂が不屈であるか。そして実際にそれを乗り越えた人たちが実在した、ということを描いているからなんだよ。究極の勝利は、人間として彼らが生き残り続けたこと。人種として滅ぼされる危機を乗り越えてきたことだと考えている。アイデンティティを確立することの重要さは、現代に生きるわたしたちにも共通することだよね。先ほどアニカも言ったように、奴隷制は人間の身心を破壊するメカニズムで、それは本当に意図的な制度だった。その負の遺産が「人種差別」ということになるわけだけど、これはアメリカだけの問題ではないんだ。世界中が直面している問題です。相手側を理解せずに、「問題」とする方がより簡単だし、優越感に浸れるからね。

――ありがとうございました。最後に、日本の視聴者に向けてメッセージをお願いします。

レヴァー:僕がはじめて日本を訪れたのは『ROOTS/ルーツ』が放送された翌年の1978年だったんだけど、それは人生の中で本当に素晴らしい体験の一つになりました。今日に至るまで僕の中での宝物です。私がみなさんに伝えたいことは、この『ROOTS/ルーツ』を、ぜひまた受け入れて欲しいということ。アメリカでも新しい世代に伝えようとしているのと同じように、日本の新しい世代の人々にもこの番組を受け入れて欲しいと思っています。
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アニカ:これが、皆さんの日本の物語をわたしたちと共有するきっかけになれば嬉しいです。わたしたちが自分たちの実際のストーリーを知ることが難しかった以上に、皆さんの日本のストーリーを知ることはもっと稀なことなのですから、もっと語り合うきっかけになればといいと思います。

マーク:ストーリーを共有しあうことはとても重要です。物語が生き続けます。全ての人々の物語を理解して生かし続けること、共有し続けること、これはとても大切です。"わたしたちのストーリー"は"あなたのストーリー"でもあるのです。あなたのストーリーが他の全ての人のストーリーであるのと同時に。

アニカ:わたしたち人類は同じ大陸から生まれたのですから。

アンナ:みんなが全て言ってくれたので、付け加えるのが難しいけど、人間の粘り強さや魂の強さ、そして自分の信念を最後まで貫き通すこと、そのような情熱が世の中を良い方向へと変えてゆくために重要なことなのよね。

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『ROOTS/ルーツ』は、ヒストリーチャンネル 日本・世界の歴史&エンタメ にて、8月22日(月)23:00より、4夜連続で日本初放送!詳しい放送情報はこちらの公式HPへ


Photo: アンナ・パキン/アニカ・ノニ・ローズ/レヴァー・バートン/マーク・ウォルパー
2016年4月『ROOTS/ルーツ』カンヌワールドプレミアにて
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