『ひとりが世界のナゼを教えてもらったら?』MC、劇団ひとりさん直撃インタビュー

海外ドラマのファンなら作品を観ている時、「これって何?」「なんでこうなるの?」と思ったことが一度はあるはず。そんな疑問に対して海外の知識が豊富な「賢者」たちが答えるという斬新な切り口の新番組『ひとりが世界のナゼを教えてもらったら?』が海外ドラマ専門チャンネルAXNにて10月7日(金)よりスタートとなる。その番組でMCを務める劇団ひとりさんに直撃インタビュー! この番組や、海外ドラマの魅力について語ってもらった。

 

――先程2回分の収録をされていましたが、MCを務めたご感想は?

面白かったです。こういうドラマ系番組って何か特定の作品を紹介するものが多いんですが、この番組はいろんな海外ドラマで目にする疑問を掘り下げていくという切り口なので、他にはない番組だと思いましたね。

――視聴者から寄せられた疑問の中で、これって確かに不思議だなとご自身も思われたものはありましたか?

今回出たものでは、例えば「プロム」についてはざっくりとは分かっていたんです。子どもたちのそれに懸ける情熱だとか、親のプロムに対する距離感だとか。アメリカの人にとっては当たり前のことだから、ドラマや映画で細かく説明することはないじゃないですか。それでこちらも描かれたものを観てなんとなく理解してはいたんですが、今回賢者の方々にちゃんと説明してもらえたことでよく分かりました。

――もともと、ひとりさんは海外ドラマはご覧になっていたんですか?

昔も『V』や『ツイン・ピークス』は観ていたんですが、海外ドラマというジャンルを意識して観始めたのは、多分『24 -TWENTY FOUR-』以降ですね。テレビやネットでいろんな作品が観られるようになってからファンになって、ここ数年は常時二つ、三つは追っているドラマがある状態です。

――では、幼い頃からドラマに多少は触れられていたんですね。

ええ。ただ、その後でハリウッド映画がすごく好きになって、以前はイメージ的に言うとドラマは格下だったんです。でも、ドラマにすごくハマり始めてから逆転現象が起きて、今の僕の中ではドラマの方がちょっと上ですね。もう映画じゃ短すぎるというか。つまらないわけでは決してないんですが、物足りない。ドラマの場合、一つの作品と3、4年の付き合いになったりするじゃないですか。そのくらい観てヘトヘトになりたいというか。それくらいやらないとやりきった感がなくて。今は映画を観るのは、読み切りの漫画を読む感覚に近いです。"ちょっと今忙しいから、映画で我慢しとこ"って感覚ですね。"面白そうなドラマはもう少し仕事が落ち着いてから観よう"って。メインディッシュが変わっちゃいました。

――この新番組でMCを担当することになった経緯を教えていただけますか?

以前、ここのスタッフの方に海外ドラマを紹介する番組でお世話になったことがあったので、多分その流れで声をかけていただけたんだと思います。

――オファーされた時にはどう思われましたか?

企画書の中に、それこそ「プロムって何なの?」といったことが書いてあったので、確かにこういうことって不思議だし面白そうだなと思いました。

――MCに選ばれた理由をご自身ではどう分析されますか?

どうなんでしょうね。海外ドラマが好きだからっていうのはあると思いますが、あとは多分、太田プロと癒着があるんでしょう。

――(爆笑)

今回も名もなき太田プロの人がたくさん出てきますから。どっかで何か黒い関係があるんじゃないかなと思いますね。

 

――ひとりさんが海外ドラマを観ている時に不思議に思うのは、例えばどんなことですか?

例えば、逃亡している人が他人の車に乗るじゃないですか。車内に鍵がよくありますよね。運転席の上にあるサンバイザーを下ろすと、鍵が落ちてくるっていう。あれって日本の感覚だとまずないじゃないですか。でも海外の作品でよく描かれているっていうことは、あそこに置く人がいるんでしょうね。それと、犯罪ものとか刑事もので犯人と警察が追いかけっこする時に、大抵、厨房を通っていくのもすごく不思議です。なんでみんなこんなに厨房を通るのか、動線としてあるのか。多分そこには何か理由があると思うんですよ。そういう疑問が多々ありますね。

――ちなみに、この番組には様々な知識を持ったいろんな賢者が登場しますが、もしひとりさんが賢者をやるならどういう分野になりますか?

僕はアメリカの何かに特別詳しいわけじゃないので説明できそうにないんですけど、以前監督をしたこともあって、ドラマを観ていてもついつい演出目線になってしまうんですよね。今日の収録でデカフェについての話が出てきましたけど、コーヒーを小道具として考えた時、それをシーンに出すってことはそのデカフェを頼んだキャラクターにどういうイメージを持たせたくてやってるのか、とかは分析したりするかもしれませんね。便利ですよね。デカフェっていう一つの注文だけで、繊細だったり自己管理の意識が高い人なんだろうなってことが、分かるわけですから。デカフェ頼んでた人が実はCIAに新しく赴任してきた局長だなんてことになったら、"あ、CIAはこれから厳しい管理下に置かれるんじゃないかな"って予兆がしますから。説明が要らないことって重要だと思うんですよ。
コントとかでよく言われる言葉に「入口広く、出口狭く」というのがあって、これは何かというと、例えばコントなら、診察室があってお医者さんの前に患者さんが気まずそうに座っているというシチュエーションで、患者が「僕、大丈夫なんでしょうか?」って言ったら、見ている方は"あ、がん告知か何かかな"っていう。これ、入口広いじゃないですか。説明せずにどういう状況かがなんとなく分かるっていうことで。そういう意味で、例えばチアリーダーひとつを例にとっても、アメリカ人なら、そのチアリーダーはどういうキャラクターで、どういう環境にいて、どんな将来が待っているのかが説明抜きで分かるわけですよね。ある程度フォーマットができているから。だから、同じような設定ってよくありますけど、実はあれは正攻法で、そうやった方が説明せずに基本の設定を理解してもらえて、だからこそそこからのストーリーでオリジナリティが出せるってことだと思うんですよね。

――ひとりさんは作家や映画監督の顔も持っていらっしゃいますが、海外ドラマを観て何かインスピレーションを得たといったエピソードがあれば教えてください。

インスピレーションというより、もうコテンパンに叩きのめされている感じですね。こんなに凄いことをこの人たちは毎週ドラマでやっているのかって。しかもそんな作品がワンサカあるわけじゃないですか。まず話がものすごく面白いし、役者も"こんな名優が今までどこにいたの?"っていうような名前を知らなかったのに演技がすごくうまい人たちが出てくる。それで予算を聞くと、こっちの映画の予算の10倍とかを一話分で使っていたりするんですよね。そういうのを目にすると、コテンパンにやられちゃう感じです。とてもインスピレーションを受ける感じではないので、いちファンとして観てます。

――コメディドラマだと自然と点が辛くなってしまうといったことはありますか?

実はそもそも海外の映画でもドラマでもコメディは観ないんですよ。どっちかというと『24』のような画面のタッチも暗い感じのものが好きで、いわゆる『フレンズ』みたいなポップな世界観はどうも好みじゃないみたいで、『Glee/グリー』もそんなにハマらなかったんで。笑いたかったら日本の『男はつらいよ』を観ちゃいますね。

――それはつまり、日本とアメリカなどの海外では笑いのツボが違うからでしょうか?

それもあるかもしれませんが、海外ものの場合、字幕で観るじゃないですか。字幕で笑うって相当大変なことですよ。もし僕がネタを英語に訳して海外の人を笑わせられるかっていったら、さすがに難しいですから。

――もしアメリカの部活に入るなら何がいいですか?

そうですね...。アメフトは花形なんですけど、ドラマに出てくるアメフトの選手って大体ろくでもないじゃないですか。女の子が好きでオープンカーに乗って弱い者いじめしてっていう。だから、僕は文科系がいいですね。それで、学校のマドンナに恋い焦がれて、なぜかマドンナも彼のことが気に入ってくれるんだけど、実は彼が本当に愛していたのは隣の家のボーイッシュなあの子だった、みたいな展開が理想です(笑)

 

――海外ドラマは結構一気にご覧になるそうですが、その時の必需品はありますか?

今は基本パソコンで観てるんですが、コーヒーとタバコ、あとはカントリーマアムをレギュラーで用意しているくらいですかね。

――ずっと観てると、奥さんに怒られたりしませんか?

僕がこんなに海外ドラマを観てるって、多分奥さん知らないと思います。自分の部屋で観てるんで。海外ドラマは毎週一話ずつ追うのもいいんですけど、やっぱ一気に観るのが、あの疲労感がたまらないですね。それこそ初めて『24』を観た時は、最初に2巻くらいを借りてたんですけど、面白いからまたすぐレンタル店に行って全部借りて一気に観たんです。だから、気がついたらジャック・バウアーより全然寝てないんですよ。観終わった後はたまんなかったですね。あの疲労感と達成感と。海外ドラマってそれがあるんですよ。マラソンを走った後の達成感に近い。映画は、面白かった、胸打たれたといった感想はあるけど、観終わった、よくやった俺!という達成感はない。そして、新シーズンが始まるまでの3ヵ月とか半年とかの中断期間に、友達と、次どうなるんだろうね~って話しながら待つワクワク感もたまらないですね。

――大抵、引っ張る展開で終わりますからね。

そうなんですよ。やっぱりあの人たちうまいんですよね。向こうでは毎週放送してるから、各エピソードのラスト5分で1週間引っ張らなくちゃいけないんですよね。僕らはまとまって観てたりするから、下手するとすぐに次のエピソードが観れちゃうじゃないですか。そりゃ観ちゃいますよ。"今夜はもうこのエピソードで最後にしよう、明日仕事早いし"とか思ってても、ラスト5分で、"やっぱりあともう一話観てからにしよう"って感じに続いちゃうんですよね。だから、下手に人に薦めないようにしてますもん。「何か面白い海外ドラマある?」って聞かれても、「まず君のスケジュールを教えてくれ。それによって薦めるべきか決めたい」って。

――そういう意味で、この番組は人に薦めても大丈夫ですよね。

そうですね。次週への引っ張りもないですから(笑) 続きが気になって気になって仕方ないってこともなく、一回で完結します。

――この番組の魅力とは何でしょう?

海外ドラマは好きだけど、海外の文化はよく知らない人って多いはずなんですよね。そこで生じた「なぜ」という疑問が解明できたら、もっと気持ち良くドラマが観れると思うんです。

――この番組で、今後こういうことをしていきたいというアイデアがあればぜひ教えてください。

いつかはこれの海外版がやりたいですね。つまり、日本の映画・ドラマのこれって何なの? これよくやってるけど、アメリカ人が観ても全然分かんないよっていう疑問に、我々日本人が賢者として答えたいです。これがわび・さびってものだ、とかね。

 

■『ひとりが世界のナゼを教えてもらったら?』放送情報
海外ドラマ専門チャンネルAXNにて10月7日(金)深夜24:00スタート
番組公式サイトはこちら

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劇団ひとりさん
『ひとりが世界のナゼを教えてもらったら?』出演者たち