ハラハラドキドキ! アカデミー賞最高賞、作品賞のゆくえは!?

普段は海ドラに徹しているNAVIですが、この季節になるとやはりアカデミー賞が気になる! そういうわけで、様々な映画賞の結果や最近のアメリカ事情を踏まえて、現地在住のライターがハリウッド目線のアカデミー賞緊急分析をお届けします!

映画賞の最高峰と言われるアメリカのアカデミー賞授賞式まであと数日を残すのみ。先日、 英国アカデミー賞ことBAFTA (British Academy of Film and Television Arts)の受賞式が行われ話題となりましたが、とにかく今年は、BAFTAも含めてエマ・ストーン&ライアン・ゴスリング主演の甘酸っぱいミュージカル映画『ラ・ラ・ランド』が映画賞を席巻しています。

でも、その中で強固なライバルとして立ちはだかるのが、荒んだ環境の黒人少年が自分の居場所を模索する成長過程を描いた『ムーンライト』と、自分の兄が急逝したことで突然ティーンエイジャーの甥っ子の親権を任された主人公と、その周囲で起こる人間模様を描いた『マンチェスター・バイ・ザ・シー』という作品。

日本では残念ながら『ラ・ラ・ランド』以外、授賞式後の公開となってしまいますが、大注目の『ラ・ラ・ランド』と『ムーンライト』、そして『マンチェスター・バイ・ザ・シー』の予告編とあらすじを公式サイトからご紹介しましょう。

『ラ・ラ・ランド』

夢を叶えたい人々が集まる街、ロサンゼルス。映画スタジオのカフェで働くミアは女優を目指していたが、何度オーディションを受けても落ちてばかり。ある日、ミアは場末の店で、あるピアニストの演奏に魅せられる。彼の名はセブ(セバスチャン)、いつか自分の店を持ち、大好きなジャズを思う存分演奏したいと願っていた。やがて二人は恋におち、互いの夢を応援し合う。しかし、セブが店の資金作りのために入ったバンドが成功したことから、二人の心はすれ違いはじめる...。(公式サイトより)

『ムーンライト』

どうにもならない日常、胸を締め付ける痛み、初恋のような切なさ、いつまでも心に残る後悔・・・思いもよらない再会により、秘めた想いを抱え生きてきたシャロンの暗闇に光がさし始めるのだが...。人種、年齢、セクシュアリティを越えた普遍的な感情を鮮やかに描いたドラマ作品。(公式サイトより)

『マンチェスター・バイ・ザ・シー』

便利屋として生計を立てる主人公が、兄の死をきっかけに故郷に戻り、16歳の甥の面倒を見ながら過去の悲劇と向き合っていく姿を描いたヒューマンドラマ。(公式サイトより)

この3本中、特に『ラ・ラ・ランド』と『ムーンライト』は、対照的な作品で、アメリカ世相を垣間見ることが出来るノミネーションです。前者は夢見る若い白人男女のラブストーリーを素敵なミュージックとカラフルな映像にのせて送る『ラ・ラ・ランド』。かたや、ドラッグ蔓延のスラムでいじめられっ子として育った黒人少年が自己発見しつつ成長していく様と、周囲を取り巻く人たちとのドラマを描いた『ムーンライト』。

今年は「アカデミー賞の歴史上、政治色が一番濃く反映された授賞式になるだろう」と業界内で言われています。その一例が『ムーンライト』という作品に対する周囲の立ち位置です。政治的メッセージ色は最小限なのに、近年のアメリカ世相のあおりを受けて(黒人差別問題の再浮上、排他的政策を打ち出す新大統領トランプの登場など)、作品が掲げる「少年の成長ドラマ」という主題が「人種の多様性」というテーマにいつの間にか置きかえられてしまい、見る人たちが勝手にテーマを変えてしまった感があるのです。賞に投票したアカデミーの会員たちが政治にとらわれない目で、この作品のピュアな素晴らしさのみを感じて投票してくれているといいなあ、などと思ってしまいます。

もしも、今のアメリカがもっと平穏無事であれば、『ラ・ラ・ランド』と『マンチェスター・バイ・ザ・シー』の一騎討ちになったのだろうか、などと考えてしまうのですが、やはり映画賞というのは生身の人が選ぶものなだけに、社会情勢の影響が及ぶのは仕方ないことなのでしょう。

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不安なご時世を一時でも忘れて、映画を純粋な娯楽としてとらえた(=『ラ・ラ・ランド』)投票結果となるのか、あるいは映画を媒体にして世の中の不平等を訴えるチョイス(=『ムーンライト』)になるのか、または誰もが共感できる人間模様を描いた『マンチェスター・バイ・ザ・シー』が選ばれるのか。個人的には、ピュアに楽しめる『ラ・ラ・ランド』に1票を投じたい筆者ですが、みなさんはどうでしょうか?

ひょっとして予想もしなかった他の作品が受賞する可能性もあるわけで、その結果が待ちきれませんよね! オスカー像のゆくえは、日本時間2月27日(月) アカデミー賞授賞式で明かされます。

(取材・文: 明美・トスト/ Akemi Tosto)

Photo:『ラ・ラ・ランド』© 2016 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved. Photo credit: EW0001: Sebastian (Ryan Gosling) and Mia (Emma Stone) in LA LA LAND.Photo courtesy of Lionsgate.
『マンチェスター・バイ・ザ・シー』©Everett Collection/amanaimages