ウェントワース・ミラー、メリッサ・ブノワ...DCドラマのスターたちの始まりはFOXドラマだった

始めに脚本ありきが基本姿勢のアメリカのドラマ界では、昨日まで無名だった俳優でも一夜にしてスターになることが可能だ。そうしてブレイクした俳優たちはまた新たなドラマへと旅立っていく。それは至って自然な流れだ。契約で同じ製作スタジオの新ドラマに出演することもあるし、オーディションでまったく違うスタジオのドラマに出演することもあるが、ここ数年目立つのがFOX製作ドラマ出身の俳優たちのDCドラマへの出演だ。

先頃8年ぶりに復活を果たした『プリズン・ブレイク』でまさにブレイクを果たしたのが主演のウェントワース・ミラー。『プリズン・ブレイク』がシーズン4をもって一旦終了した後は映画『バイオハザードIV アフターライフ』に出演したり、脚本家活動に本腰を入れたりと多彩な活躍をしてきたが、ドラマファンを喜ばせたのは『THE FLASH/フラッシュ』への出演だった。しかも相棒役は『プリズン・ブレイク』で兄リンカーンを演じたドミニク・パーセル。ウェントワースがミスター・コールド、ドミニクがヒートウェーブという悪事を働くバディとして登場し、兄弟役ではないものの、そのバディ愛はまさに『プリズン・ブレイク』を彷彿とさせるものがあった。すっかり好評を得たこのコンビは『レジェンド・オブ・トゥモロー』でも大活躍している。このコンビでのキャスティングに『プリズン・ブレイク』で二人が発揮した抜群のケミストリーが影響したことは間違いない。

 

『glee/グリー』からは多くのスターが誕生したが、ライバル校のリードボーカル、セバスチャン役で登場したグラント・ガスティンもその一人。『glee』ではレギュラーではなかったものの、グラントはそのキュートな笑顔でヒール的ポジションながら大人気に。その勢いで『THE FLASH』の主人公バリー・アレン役に抜擢された。そしてもう一人、オリジナルキャストの多くが卒業していったニュー・ディレクションズの新リードシンガーとしてシーズン4から登場した転校生マーリー役のメリッサ・ブノワは、その後『SUPERGIRL/スーパーガール』のヒロイン、カーラ役に抜擢。さらに『SUPERGIRL』でメリッサ演じるカーラのボスを演じるキャリスタ・フロックハートがブレイクしたのもやはりFOXドラマの『アリー myラブ』だ。

 

グラントもメリッサも、そしてキャリスタにしても共通するのは親しみやすいキャラクター。ティーンから20代をメイン・ターゲットとするTHE CWで放送されているDCドラマにおいて、その抜群の好感度の高さは必要不可欠な個性だ。そして『THE FLASH』と『SUPERGIRL』の主役二人がミュージカルドラマ『glee』出身だったからこそ実現したのがミュージカル・クロスオーバーだ。もともとアメリカのエンタメ界では「実は歌える」俳優・女優は多い。事実『THE FLASH』にはジェシー・L・マーティンやヴィクター・ガーバーなどブロードウェイ出身の実力派が出演している。仮に主演の二人の歌の実力が知られていなかったとしても、ミュージカル人気の今ならミュージカル・エピソードを製作することはできただろう。しかし、グラントとメリッサが『glee』出身だったからこそ、このクロスオーバーは大きな話題となったのだ。このエピソードに登場するヴィラン、ミュージック・マイスターに同じく『glee』でブレイクしたダレン・クリスを起用したところからもその意図は明らかだ。ファンとしても久しぶりに思いきり歌う彼らの姿が見られた『glee』リユニオンの実現は大歓迎だった。

どんなドラマにせよ、ブレイクしたということは、ひとつの個性を世に印象づけたことに他ならない。これはDCドラマではないが、『プリズン・ブレイク』でヘイワイヤーを演じていたサイラス・ウェイア・ミッチェルがその後『GRIMM/グリム』のモンロー役でその個性を発揮したように、ある種のキャラ立ちはアメコミやファンタジーの世界と相性が良いのだ。(ちなみに『GRIMM』でウーを演じているレジー・リーも『プリズン・ブレイク』出身だ)

いずれにしてもまさにその才能を発掘したFOXドラマと、その才能をさらに磨き上げたDCドラマ。俳優たちがブレイクした作品の肝をしっかりと理解し、新たな個性を発揮させるだけでなく、時にそのポイントを上手く取り入れ、話題性をファンにアピールする。そうしたサービス精神も豊かなところもアメドラの魅力の一つだと言えるだろう。

Photo:
ウェントワース・ミラー
(C) Julian Blythe/HollywoodNewsWire.co
ドミニク・パーセルとウェントワース・ミラー
(C) Julian Blythe/HollywoodNewsWire.co
メリッサ・ブノワ
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