この街こそがアメリカ!『シカゴ』シリーズ、石井竜也インタビュー

海外ドラマ専門チャンネルAXNにて11月より『シカゴ・ファイア』のシーズン4と『シカゴ P.D.』のシーズン3、12月より『シカゴ・メッド』が放送されるが、その3作品の日本版エンディングテーマとして石井竜也の楽曲が使用されることが決定した。

放送に先駆け、「希望の未来へ」(『シカゴ・ファイア』)、「砂の中の宝石 ~放浪者~」(『シカゴ P.D.』)、「虚構の光」(『シカゴ・メッド』)、と今回が初の海外ドラマ3曲同時タイアップとなった石井を直撃。各曲への思いや、ドラマで描かれるシカゴという街について語ってもらった。

――タイアップのお話が来た時のご感想は?

今回はアルバムが完成した後で、3曲のタイアップが決まったんですよ。「嘘だろ? 本当は1曲なんじゃないの?」なんて言ってたら、「3曲です」って返ってきて。どうかしてんじゃないの?!ってびっくりしました(笑) でも、この3作品は同じシリーズということで、作品によって異なるアーティストから違うテイストのものを出してくるよりも、3作品まとめて一人のアーティストから出してきた方が、関連性はありますよね。

(自分の曲が)映画に使われるのはもちろん嬉しいですけど、ドラマに使われていくっていうのは、何度も聞いてもらえるのもあるし、ドラマとの相性もどんどん深まっていくし、とても光栄ですね。ソロとしての石井竜也の色の濃さが、色濃いアメリカのドラマに使われていくのは、絶対相性がいいと思います。

『シカゴ』シリーズ

――ソロとしての活動が今年で20周年を迎える石井さんですが、バンドとソロとの違いは?

米米CLUBとして活動していた期間よりも、ソロとしての時間の方が長くなっちゃって。一人でやっていく面白さは、バンドでやっていく面白さとは違うところがあります。全てを自分の感性で終結できるところに醍醐味があるな、とも思います。

(米米CLUB時代は)バンドメンバーの顔色を見ながら曲を選んだりしていたのですが、これはもうちょっと良くなるんじゃないかなって思っていた楽曲が意外と捨てられちゃったりする。僕はどちらかと言うと、ものを構築していく方が好きなんで、捨てるよりもそれを発展させる方を選びたいというか。

バンドでやっていくっていうのは、皆の感性とか意見も取り入れつつやっていくことだから、自分の匂いっていうのは掻き消されて、バンドが主体になっていく。それが面白いのもあるんだけど、その違いは大きいですね。

石井竜也

――なるほど。では、ソロとしてはどのように曲を作っていらっしゃるのでしょうか?

自分で作詞・作曲はするんですけど、アレンジはセンスの良いアレンジャーに丸投げしちゃって、出来上がるまで聴かないようにしています。そのアレンジャーに惚れて出したんだから、途中であれを入れてくれとか、そういうことを言っちゃだめだと思っているので。自分が作った曲でその人が燃え上がってきてくれないと、あんまりいい曲じゃないんだなって、(アレンジの出来栄えを)バロメーターにする時もありますね。

――エンディングテーマとして使われる3曲は全て新曲ですが、これらをカバー曲がほとんどのニューアルバム「DIAMOND MEMORIES」に入れようと思ったきっかけは?

新曲は、実は入れないはずだったんです。"MEMORIES"っていうくらいですから、カバー曲で全部締めくくろうと考えてたんですよね。で、やっぱり昔の曲を聴くと、当時のことを思い出したり、あの頃のメロディーって良かったな、って世代として思っちゃうわけですよ。

しかも、(今回のアルバムで)演奏してるのは20代とか30代で、もう僕の世代は一人もいないんですね。今の音楽を聴いている人たちが違う時代のメロディーを弾くから、すごくオーバーに演奏してくれて、ドラマチックになっていくんですよ。だから僕が盛り上げたいと思っていた部分が、彼らの若さも手伝ってさらに盛り上がったりしていて、よくぞこの曲をこのリズムにしたな、みたいな作り方をしてますね。

その中で僕が、その時代の雰囲気を匂わせるような曲を作ってみたい、と思って。やっぱりここで、こういうアーティストたちにも負けない自分の楽曲を入れないとだめだ、と感じたんです。そこで十数曲作って、これは入れるっていうのを同じアレンジャーに渡して...。そうしたら、ほかの曲とも相性が合ってきて、いい雰囲気になってくれました。

「DIAMOND MEMORIES」初回限定版

――海外ドラマにも見識のある石井さんですが、この『シカゴ』シリーズのヒットについて、どのような部分が鍵になったとお考えですか?

やっぱり向こうのドラマって、作りが映画的じゃないですか。かつては荒唐無稽なドラマが多かったけれど、ここへ来てアメリカの現実を露出させるようなものが流行ってきているっていうのは、より社会的に、世界的にリアルな危険性みたいなものを、世界中の人々が感じてるということではないでしょうか。

ヨーロッパの移民問題とか、アメリカだったら今の北朝鮮情勢とか、ロシアとか中国とか、そこかしこで火種がくすぶってきている状況っていうのがありますよね。こういうドラマが世界的にヒットしているのも、どこかに自分たちとの共通点が見え隠れしてるからだと思うんです。

――世の中の動きが、ダイレクトに視聴者に影響を与えているということですね。

世の中の動きに合わせて歌も変わってきていますよね。70年代頃ってやっぱり、日本の高度成長期で、大変な時期であると同時に活気があった。だから、マイナーな曲でもヒットしたし、受け入れられたんだと思うんです。

――3曲のうち、「希望の未来へ」は前向きで太陽のように明るいイメージですね。

消防士っていうのはどちらかというと、檜舞台にいるわけじゃないですか。火災現場では頭を低くしていないといけなくて、10センチくらいの差で生死が変わっちゃうんですってね。少しでも頭の位置が高いと、やられちゃう。だから、古参と若手が必ず二人で入って、古参が若手に実地で教えて。相棒を守らなきゃいけないし、自分の身と、そこで倒れている人も助けなきゃいけないっていう使命があって大変ですよね。だから応援歌みたいな雰囲気が合っているんだと思うんです。

シカゴ・ファイア

――では、『シカゴ・メッド』の医師や看護師のイメージが、「虚構の光」に繋がったという訳ですか?

例えば脚が反対側に折れていたりする重傷患者が5、6人も一度に運ばれてきて、医者が自分一人だとしたら、どの人を最初に見るかを決めなきゃいけない訳じゃないですか。そんな1分の差が生死を分けたりして、なんでこの人を先に診なかったんだろうと後悔したりとか、結構きついだろうなって。だから、厳しくてささくれだった歌の方が合うと思ったんです。

――「砂の中の宝石 ~放浪者~」も、歌詞の"兵士"というキーワードが、『シカゴ P.D.』の特捜班と重なる部分がありますね。

警官というのは、映画でもたくさん取り上げられるくらいハードな仕事ですよね。人の暗部を見に行く訳じゃないですか。一生見ないで済むなら見ない方がいい場所に行かなきゃいけない仕事ですよね。ある意味、警官って街の戦士だと思うんです。だから、歌詞にある"砂漠"っていう不毛のイメージと、シカゴという街の暗部とが重なったんじゃないでしょうか。

『シカゴ P.D.』

――この曲をアルバムの一曲目に持ってきた理由は?

これは、ある設定をして作った曲なんです。軍隊が砂漠の遊撃隊として送り込まれて、仲間は戦闘で死んでいくし、砂漠の暑さにもやられていくし、水もないし、生き残った者はもう何と戦っているのかも分からない。重い銃を持って歩いていたら、とてもじゃないが生きていけないということで捨ててしまうと、あとはただ、水を求めてる裸の自分しかいないわけですよね。そこでオアシスを見つけた時には、もう戦争をやっていることなんて忘れていると思うんですよ。水を飲んだ瞬間に、"俺、何しにここに来たんだろう"って。オアシスから自分の家には帰れないじゃないですか。そういう時、この戦士はどういう考えに至るんだろうと思いながら作った曲なんです。

様々な脅威にさらされている今の世界で、アジアの片隅の歌うたいが何を歌うんだろうってなった時に、何に向かって行くのか分からなくなってしまった戦士のことを歌いたいと思ったんですよね。それをアルバムの一曲目にしたのは、この曲がノスタルジックなイメージもあるし、これから起こるかもしれない巨大な何か、恐怖というか、そういうものも時代感として歌いたかったからなんです。

『シカゴ・ファイア』

――『シカゴ』シリーズをご覧になって、この街に対してどんな印象を受けられましたか?

監督目線にはなりますが、僕もシカゴを題材にして何かを作ることになったら、ミュージカル映画『シカゴ』のようなものは作らないかもしれませんね。シカゴって色々なものが暗躍していて、五大湖の端にある都市で、ワシントンD.C.からも遠くて、そんな見えないところで様々なことができる、それと同時にとてつもないお金や産業が生まれていく場所なんです。

シカゴって輝かしいだけじゃなくて、暗部もちゃんとあるアメリカの縮図みたいな街ですよね。アメリカ人に「アメリカを一言で表すなら、どんな街?」って聞いたとして、カリフォルニアとは答えない気がするんですよね。シカゴとかボストンとかシアトルとかを挙げるんじゃないかなって思います。

『シカゴ・メッド』

――最後に、『シカゴ』シリーズのオススメポイントを教えてください。

もしも、消防士が主人公なら火事が多いのは森林だからロサンゼルスにして、警官で拳銃を撃つならニューヨークかな、っていう風に職種によって舞台を変えちゃったら面白くなかったかもしれないですね。シカゴっていう、あまり日本人には紹介されていなくて、掴めていない街を舞台にしていて、実はそこにアメリカの縮図があったという。

世界中から見られてはいないけど、ちょっと外したところに面白みがあるので、アメリカ人の本音で言うと、このシカゴって街こそが、"アメリカ"なのかもしれないですよね。観光地というイメージはないかもしれないけど、この国の心臓の一部なんだと思います。

石井竜也(看板)

■放送情報
海外ドラマ専門チャンネルAXNで放送
・『シカゴ・ファイア』シーズン4
 [字]11月2日(木)22:00よりスタート
 [二]11月3日(金・祝)23:00よりスタート
・『シカゴ P.D.』シーズン3
 [字]11月3日(金・祝)22:00よりスタート
 [二]11月4日(土)23:00よりスタート
・『シカゴ・メッド』
 [字]12月9日(土)22:00よりスタート
 [二]12月10日(日)23:00よりスタート
※各エンディングテーマは二ヶ国語版の放送の最後に流れます

シカゴシリーズ キャンペーンサイトはこちら

「DIAMOND MEMORIES」

■CD情報
石井竜也がリスペクトしてやまない昭和を代表するニューミュージックの名曲達をカバー! オリジナル楽曲も収録!!
2017.9.27 Release
New Album
「DIAMOND MEMORIES」
初回盤(DVD付) SRCL-9479~80 9,800円+税
通常盤 SRCL-9481 3,500円+税

Photo:
石井竜也
『シカゴ・ファイア』
© 2014 Open 4 Business Productions, LLC. All Rights Reserved.
『シカゴ P.D.』
© 2013 Universal Studios. All Rights Reserved.
© 2015 Universal Television LLC. All Rights Reserved.
『シカゴ・メッド』
© 2015 Universal Television LLC. All Rights Reserved.