『ブレードランナー 2049』2大国際派女優、アナ・デ・アルマス&シルヴィア・フークスを直撃インタビュー!

SF映画の金字塔『ブレードランナー』の35年ぶりの続編となる『ブレードランナー 2049』は、ライアン・ゴズリング演じる主人公"K"が新たな世界危機を救うため、30年前に失踪したハリソン・フォード演じるブレードランナー(レプリカントを追う捜査官)=デッカードを追跡するSF超大作。劇中、物語の重要な鍵を握るのが、今回、大抜擢となったダブル・ヒロイン、キューバ出身のアナ・デ・アルマスとオランダ出身のシルヴィア・フークスだ。「歴史的作品の一員になれてとてもラッキーだった」と運命を噛みしめる二人に、本作で演じたキャラクターへの思い、ハリソン&ライアンとの夢の共演などについて話を伺った。

―――『ブレードランナー』は、お二人が生まれる前(アナは1988年、シルヴィアは1983年生まれ)に公開され、伝説的作品として語り継がれてきましたが、どんな印象をお持ちですか?

アナ:初めて観たときは子どもすぎて全く意味がわかりませんでした(笑)だから、本当の感想は、2回目に観たときのものになりますね。私はすでに俳優になっていて、周りから「絶対に観ておくべきだ」と促されて観たんですが、もう、釘付けになりました! 目の前で起こっている、これは一体何なんだろうと。この映画が伝えようとしているメッセージも、自分なりに考えました。今、私たちが生きている時代(前作は2019年が舞台)を35年前に予想していたわけですが、それをスクリーン上で体験するというのは不思議な気分でしたね。凄く怖かったし、居心地の悪い部分もありました。

シルヴィア:私と同じオランダ出身の俳優ルトガー・ハウアーが、反逆のレプリカント役で出演し、これをきっかけに凄く有名になりました。この映画を初めて観たときは、彼のワイルドで生命感に溢れた存在感に圧倒されましたね。内容に関しては、私も若すぎて、詳しく分析することはできなかったけれど、この映画のスタイルやクールさがとても印象深くて、眠れないくらい怖かったのを覚えています。

―――この伝説的な作品の続編に出演が決まったとき、どんな心境でしたか?

アナ:もちろん、とても嬉しかったし、心が踊り出すくらいワクワクしました。ただ、伝説的映画の歴史に「名を刻む」ということもわかっていましたので、同時に「私に務まるかしら?」とか、いろんなことを考えてしまって、不安や緊張も襲ってきました。でも、『プリズナーズ』や『ボーダーライン』など、大好きな作品を手掛けてきたドゥニ・ヴィルヌーヴ監督がメガホンを取るということで、「これは絶対に成功する!」と確信していました。なので、クランクインが楽しみでしたね。

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シルヴィア:私は、ヴィルヌーヴ監督から電話で直々に出演依頼を受けたんですが、あまりの驚きと嬉しさで号泣してしまいました。後日、監督から「ちゃんと生きているよね?」と心配されるくらい(笑)これは、私のキャリアの中でも物凄いこと。とくにヴィルヌーヴ監督は、マジックのような世界を作り上げる素晴らしい映像作家で、私たちが安心して演技ができるような環境も整えてくれるので、彼と仕事ができることは、本当に幸運なことだと思います。それと、『ブレードランナー』の世界に足を踏み入れるだけでも、私たちが住んでいる世界のことをいろいろ考えます。地球を大切にしなければとか、スマホばかり見ていちゃダメだとか(笑)、これからの技術革新のこととか。「人間同士、ちゃんと顔を付き合わせて話した方がいいのに」と思いながらも、テクノロジーに依存している現代が怖くなりますよね。

―――お二人が演じたキャラクターについてお聞きしたいのですが、まず、アナさんは、ライアン扮するKに常に寄り添い、献身的に支える恋人ジョイをとても魅力的に演じていました。

アナ:ネタバレになるので、あまり詳しくは言えませんが、「いったい何が起きているんだろう?と思うくらい、とてもミステリアスなキャラクターで興味が湧きました。でも、ただ謎めいているだけでなく、芯の強さを持ち、感情も豊かで、大きな夢も持っている。たくさんの"レイヤー"があって。そしてそれが、映画の中でいろんなことを学びながら、どんどん進化していく。ある意味、彼女は現代の女性を代表していると思いますね。

―――シルヴィアさんは、Kの行く手を阻み、ハリソン扮するデッカード抹殺を目論む悪徳経営者ウォレス(ジャレッド・レト)の部下ラヴをとても力強く演じていました。

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シルヴィア:ラヴもいろんな色彩を持つ魅力的なキャラクターですね。男性が演じるようなハードなアクションもありましたので、役が決まった次の日から、専属のトレーナーをつけて、約6カ月間、トレーニングに励みました。とても力強い役ではありますが、その中にある"女性らしさ"も見逃さないで欲しいですね(笑)私は、強い女性を演じる時は、普段以上に女性らしさというものを失いたくないって思うんです。今回も、ラヴを突き動かしているものは、ボスであるウォレスに「認められたい」「意味のある存在であり続けたい」という女心が大きい、と私は解釈しているんです。

―――女性の活躍、という点でお聞きしたいのですが、アナさんはキューバ出身、そしてシルヴィアさんはオランダ出身ということで、近年、国際レベルで女性の海外進出が盛んになっています。お二人も、現在ハリウッドで活躍されているわけですが、苦労された点はありますか。

アナ:うーん、どこから話せばいいのかな?(笑)まず、ロサンゼルスに来た頃は、英語が全く話せなかったので、約4カ月間、語学学校に通いました。話ができないと何も始まりませんからね。ほかにも戸惑うところはいろいろありましたが、何と言っても、ハリウッドの映画産業は想像以上にスケールが大きく、アートとビジネスの両面を持っているので、バランスを上手に取らなければならない難しさがありますね。また、キューバ人だから「こういうルックスが望ましい」みたいな、そういう思い込みもあって、ステレオタイプの役が多くて、今回のジョイのようなユニークな役とは、なかなかめぐり会えませんでした。移住したての頃は、とくにそういう問題に直面し、相当悩みましたが、私だけではなく、他国からハリウッドに移ってきた女優たちは、今でもこの問題と闘っています。

シルビア:私にとって、自分が演じる役柄はもちろん、監督や脚本が誰なのか、ということがとても重要なことなのですが、それはヨーロッパでもハリウッドでも同じこと。ただ、ハリウッド映画は製作費が大きい作品が多いので、俳優も大作に出るか、低予算の独立系作品に出るか、自分の心の中と話し合いながら選ばなければならないときがある。そういった意味で、今回は超大作でありながら、アート系の映画を作っているような濃密性があったので、演じる役柄にこだわる私にとって、本当にラッキーでした。

―――最後に、ハリウッドを代表するレジェンド、ハリソンと、これからのハリウッドを担っていくライアンとの共演についてお聞かせください。役柄上、アナさんはライアン、シルヴィアさんはハリソンと接点が多かったと思いますが。

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アナ:本当に、夢のような体験でしたね。ライアンはパートナーとしてパーフェクトでした。自分が持っている情熱やエネルギー、ユーモアを演技にも生かし、セットで待機中も私たちを笑わせ、励まし、強烈なリーダーシップを発揮してくれました。長い撮影期間、彼の明るさやプロ意識は、私たちを何度も救ってくれました。

シルヴィア:とにかく今回は、ハードアクションをこなすために筋肉をつけなければならなかったので、バカみたいにワークアウトして、お腹がペコペコだったので、いつものようにケータリングでバクバク食べていたんですね。口の中が食べ物でいっぱいになっていたんですが、タイミング悪く、そこへピアスをしたハリソンがクールに入ってきたんです。それが初対面ですね。「明日、一緒にやるんだよね?」と声をかけられたんですが、口の中が食べ物でいっぱいで、頷くのがやっとでした(笑)そして次の日、最初の撮影があったんですが、現場が凄く狭くて、彼と至近距離で二人きりになりました。緊張して顔を見られずに目を落としていたら、急に「バーに犬がいてさぁ」ってジョークを言い出したんです。それ以来、すっかり打ち解けて、昔の下積み時代の話も気さくにしてくれる間柄になれました。レジェンドではあるけれど、とても温かみのある素敵な方でしたね。

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『ブレードランナー 2049』は絶賛上映中。

(取材・文・撮影:坂田正樹)