『モーツァルト・イン・ザ・ジャングル』シーズン4、ロマン・コッポラ監督直撃インタビュー!

ニューヨーク交響楽団の舞台裏を描くAmazon Prime Original(アマゾン・プライム・オリジナル)『モーツァルト・イン・ザ・ジャングル』の製作総指揮と監督を務めるロマン・コッポラ(お父様のフランシス・コッポラ監督とそっくり!)が来日し、単独インタビューに応じた。

2月16日(金)より配信が開始となるシーズン4では、日本を舞台にしたエピソードが登場するため、その撮影で東京、北海道を訪れたコッポラ。新シーズンには『HEROES/ヒーローズ』のマシ・オカも登場するが、気になるその内容とは? 本シリーズの誕生秘話や魅力溢れるキャスティングなどを振り返りながら、コッポラ監督が限界ギリギリまでシーズン4の見どころを語った。

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――約10年ぶりの来日とお伺いしましたが、日本の印象は変わりましたか?

それほど大きな変化はまだ見つけられていないけれど、来るたびに自国と全く違う文化に触れることができて、とてもスリリングな気持ちになりますね。日本といえば、高品質なカメラや電化製品がたくさんありますが、今回は撮影で来ているため、ショッピングをする時間がないのが残念です。

―― 日本での撮影は順調に進んでいますか?マシ・オカさんの役どころも気になるところですが。

3日前から東京での撮影が始まり、あと9日間、北海道での撮影が残っていますが、今のところ順調です。マシ・オカのシーンは、1日だけ日本で、あとはほとんどがニューヨークのスタジオで行われました。今回彼が演じるのは、音楽をこよなく愛する日本のハイテク会社のCEO、フクモト・アキヒロ。常に資金繰りに四苦八苦している楽団の救世主として複数話に登場しますが、彼が開発した「AI」が物語に絡んでくるところも見どころです。

――それは楽しみですね。マエストロのロドリゴ(ガエル・ガルシア・ベルナル)やオーボエ奏者のヘイリー(ローラ・カーク)ら主要キャストたちにどんなエピソードが待ち受けているのでしょう。

現段階ではあまり詳しく話せないんですが、ロドリゴは日本のオーケストラのゲスト指揮者として招かれ、その一方で、指揮者のコンペティションみたいなものにヘイリーが参加する、という物語も絡んできます。

――日本でのエピソードが、俄然楽しみになって来ました。シーズン4全話を通してはいかがでしょう。どんな展開になるのか、ポイントだけでも教えていただけますか?

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まず、もう一人のマエストロ、トーマス(マルコム・マクダウェル)が再生し、よりダイナミックに、よりパワフルに、キャリアの高みに上り詰めようと奮起します。ロドリゴとヘイリーの関係性については、ミステリアスな方が楽しめると思うので、ここでは言及しませんが、ロドリゴに関しては、これまでにない最大の危機に直面します。シーズン3までは、幾度となく危機に晒されながらもなんとか乗り越えて来ましたが、今回は一筋縄では行きませんよ(笑)

――シーズン4の完成がとても待ち遠しいです。

ありがとうございます。私たちも、オーケストラとアーティストたちのさらなる物語を新シーズンで視聴者の皆さんと分かち合えることをとてもうれしく思っています。

――このドラマは、ニューヨーク・フィルハーモニックの元オーボエ奏者ブレア・ティンドールの自叙伝「Mozart in the Jungle: Sex, Drugs, and Classical Music」が基になっているそうですが、そもそもこの本のどこに惹かれたのでしょう。

私の従兄弟で共同プロデューサーのジェイソン・シュワルツマンが、原作のレビューを読んだのがキッカケです。本の内容自体は、団員同士の赤裸々な関係性が書かれたゴシップ的なものだったのですが、「これは面白いドラマシリーズになりそうじゃないか?」とジェイソンが話を持ちかけてきました。オーケストラのカーテンの裏側で起きる様々なドラマ、芸術を生業としているアーティストたちの情熱的で、クレイジーで、バランスを崩した人間関係など、この原作は物語のさまざまな可能性を示してくれたと思います。若いオーボエ奏者・ヘイリーの成長物語が「軸」ではありますが、舞台を原作の1980年代から現代に変え、物語自体もかなりかけ離れたものになっているので、単に本をドラマ化したものではないと捉えていただいた方がいいかもしれません。

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――とくに、音楽に大きな関心があった、ということも興味を持った要因の一つなのでしょうか。

コッポラ家は、祖父のカーマインや大叔父のアントンら多くの音楽家を輩出しているので、「音楽に詳しいんでしょ?」と、よく誤解されるんですが、実はそれほど造詣は深くないんです。もちろん、音楽には強い関心がありますが、私が挑戦したいと思う企画は、「自分がその世界を知りたい、もっと学びたい」と意欲をかき立てるもの。そういった意味では、このドラマを通して音楽のことをたくさん勉強させていただきました。

――キャスティングも素晴らしかったですね。とくに新旧のマエストロを演じたガエルとマルコム・マクダウェルはカリスマ性に満ち溢れています。

今回、パイロット版を演出したポール・ワッツが中心となってキャスティングを行いました。もちろん私たち製作陣も意見を出し合いましたが、マルコムに関しては、「何があっても彼にマエストロを演じて欲しい」という気持ちで全員一致していましたね。ガエルも観る者を惹きつけてやまない演技を見せてくれる素晴らしい俳優。全ての物語の火花を起こしてくれる「スパークプラグ」のような役割を果たしながら、大きな推進力になってくれました。このドラマが成功した最大の要因は、キャスティングだといっても過言ではないですね。

――あなたもシーズン1〜3の中で、3話分メガホンを取っていますが、素晴らしい演出で感動しました。とくに、シーズン3の第7話、ドキュメンタリー・タッチで描いた刑務所での野外演奏は秀逸でしたね。

刑務所での演奏シーンは、金属探知機のみ公(おおやけ)にできないことからセットを作りましたが、その他は全て本物。役者は自分のキャラクターを演じていますが、囚人とのやりとりやインタビューもリアルなものを映像に収めました。MV(ミュージックビデオ)の仕事でカメラを何台も使ってライブシーンを撮っていた経験があったので、それが生きましたね。自分がメガホンを取った作品はとても満足しているので、そう言っていただけると、とてもうれしいです。

――映画やMVとはまた違うテレビドラマならではの大変さは感じましたか?

うーん、言葉にするのは難しいですが、私の場合、そんなに差は感じなかったですね。短期間の中で素早くいい作品を作らなければならないので、そのための事前準備は大変ではありますが、想定内のことなので、映画だから、テレビだからと、差別化して考えたことはないですね。

――先ほどもお話に出ましたが、コッポラ家はお父様であるフランシス・コッポラさんをはじめ、映像作家、俳優、音楽家などたくさんの芸術家を輩出しています。あなたの才能も、そのDNAを受け継いだものではないでしょうか。

私にとっては普通の家庭環境で、ごく自然に育ったとしか言いようがないのですが...ただ、間違いなく言えるのは、芸術に対してとても強い「愛」を家族全員が持っていること。例えば、土曜日の午前中、父(フランシス)はオペラを大音量でかけたりしていましたし、若い子にはまだ早すぎるような映画も自宅で上映したりしていました。映画作家もよく家に遊びに来て刺激をたくさん受けましたので、そういった意味では、今の私の活動を後押ししてくれる環境であったことは間違いないですね。芸術を愛する「空気感」の中で、自然に私の中に染み込んだものはあると思います。

――映像作家としても素晴らしい才能をお持ちなので、プロデューサー業だけでなく、ぜひ、メガホンを取ってください。

ありがとうございます。残念ながら新シーズンでメガホンを取るのは、1話だけなんですが、私が演出したエピソードには、日本の「茶道」が出てくるので、ぜひ、楽しみにしていてください。

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『モーツァルト・イン・ザ・ジャングル』シーズン4はAmazonプライム・ビデオにて2月16日(金)より独占配信スタート。

(取材・文・撮影:坂田正樹)

Photo:『モーツァルト・イン・ザ・ジャングル』シーズン4キーアート