『ゲーム・オブ・スローンズ』のジョン・スノウ役で知られるキット・ハリントンが製作総指揮・脚本・主役を務めた歴史ドラマ『ガンパウダー』が、BS10 スターチャンネルにて3月22日(木)より独占日本初放送となる。英BBCで昨年10月より放送された本作は、イングランド国王から激しい弾圧を受けていたカトリック教徒が、1605年に国王暗殺と政権転覆を目論み勃発した火薬陰謀事件を描いている。この事件は、敬虔なカトリック教徒でイングランドの貴族であるロバート・ケイツビーによって引き起こされたが、彼の子孫にあたるのがキット(本名クリストファー・ケイツビー・ハリントン)なのだ。
そんな本作より、キットのインタビューをお届け。友人とともに思いついたアイデアを、脚本・製作に初挑戦してまで作り上げたという入魂の作品に対する熱い胸のうちを語ってくれている。
――『ガンパウダー』の見どころは?
この作品は、長い年月の間に忘れ去られようとしている、暗く歪んだイングランドの歴史を扱っている。ガイ・フォークスの名前を知っている人は多いだろう。「ウォール街を占拠せよ」運動(※注)で使われる仮面や、映画『Vフォー・ヴェンデッタ』の主人公の扮装など、彼をモチーフにした文化は今でも多く存在しているからね。しかし、その全容を知っている人はほんのわずかだ。"ガイ・フォークス"というのは有名な名前というだけでなく、その名前の裏には死に物狂いで生きようとした人間たちの悲しい人生があるんだよ。
『ガンパウダー』は"選択"のストーリーだ。絶望的な人間がなぜその選択をしたのかを描いており、だからこそ素晴らしいドラマに仕上がったんだよ。
(※注)「ウォール街を占拠せよ」運動...2011年9月17日から本格的に始まった、アメリカ合衆国ニューヨーク市マンハッタン区フィナンシャル・ディストリクトにあるウォール街の占拠行為とデモ運動
――とはいえ、火薬陰謀事件については全て明らかになっていますよね。ガイ・フォークスが英国議会を爆破しようとした事件でしょう? それとも、それ以上の何かがあるのでしょうか?
それ以上の何かがあるよ。ガイ・フォークスはいわば、氷山の一角に過ぎない。多くの人は、彼が共謀者たちとともにこの事件に関わったことは知っているけれど、彼らが何者なのか、彼らの動機が何だったのかはあまり知られていないんだ。また、(実行予定日である)11月5日の夜に至るまでの出来事や、その後に何が起こったのかについても、ほとんど知られていない。この『ガンパウダー』では、そういった一連の出来事の全容を観ることができるんだよ。
現存する多くのTVドラマで、背景が作品中であまり語られない悪役というのは珍しくない。だけど僕たちは、共謀者たちの視点から物語を描くことで、彼らがどうしてそうした恐ろしい暴挙に出たのかを理解してもらおうと考えた。両方の視点からストーリーを伝えたいと思ったんだ。
――主に脚本を担当したロナン・ベネット(キットらとともにクリエイターも兼任)は、このシリーズを制作する上でどれだけ重要な存在でしたか?
ロナンはこのシリーズの脚本を執筆するのにぴったりの人材だった。もともとこの企画を一緒に考えた僕とダニエル・ウェストは、火薬陰謀事件に関する作品を作りたかったけど、何から始めればいいかも分からない状況だったんだ。そこへ加わってくれたのが、Kudos(TVプロダクション)に所属するオリー・マッデンと、優れたクリエイターであり脚本家でもあるロナンで、彼らが僕らのアイデアを上品で素晴らしい物語に仕上げていったんだよ。
この作品の素晴らしい点の一つが、ロナンが当時の口語的表現を正確に取り入れているところだ。彼は17世紀のイギリス史の博士号を取得しているから、この作品の時代背景などに対する造詣がとても深いと言える。本人もとても興味を持ってくれたしね。ロナンの仕事ぶりは見事だった。素晴らしいストーリーを書き上げてくれたんだ。
――あなた以外にも有名な俳優が多数出演していますが、彼らとの共演はいかがでした?
彼らがこの作品に望んで参加してくれて、とても感激している。長年尊敬してきた人たちと一緒に仕事ができるなんてね。
ピーター・ミュランは幼い頃からよく見てきた人で、彼がスクリーンにもたらすものには目を見張るものがある。リヴ・タイラーの作品もよく知っているよ。マーク・ゲイティスはキャラクターに信じられないほど命を吹き込むことで知られていて、彼のオーディションテープを見た時、その芸術性に気づいた。彼はロバート・セシル伯爵を正確にかつ美しく演じてくれたんだ。
僕と同世代の俳優も参加してくれていて、皆とても面白い人たちばかりだよ。例えば、トム・カレンは演劇学校で同学年だったんだけど、とても素晴らしい俳優だ。エドワード・ホルクロフトの見事な仕事ぶりはTVシリーズ『ロンドン・スパイ』などで目にしていたし、ロバート・エムズとは僕の初の舞台作品『ウォー・ホース ~戦火の馬~』でも共演したんだ。
――あなたは主演だけでなく製作総指揮も務めていますが、17世紀の世界を21世紀のヨークシャーで製作することはチャレンジだったのでは? それとも全て予想の範疇でしたか?
この世界観を作り上げるのはとても楽しかった。プロダクション・デザイナーのグラント・モンゴメリーは才能豊かな人で、17世紀のロンドン中心部を含めたこの作品のセットを全て作ってくれた。歴史に基づくセットを作り上げるのは簡単ではないのに、素晴らしいものを作り上げてくれたんだよ。セットが日に日に完成に近づくのを見ているのはとても楽しかった。そのセットで演じるのは魔法のようなひと時だろうと僕は常日頃から言っていたんだけど、まさにその通りだったね。
僕はテレビ番組や映画に関わる際、その作品が最初は一つのアイデアから始まり、たくさんの人の協力を得て仕上がっていくのだということをいつも忘れないようにしている。製作総指揮者としての経験は、普段の役者としての立ち位置とは全く違うものだった。セットデザイナーに会ったり、制作に関していろいろ計画を立てたりするのは初めてだったけど、こうした一連のことを経験できた意味でも『ガンパウダー』は特別な作品になったよ。
――本作であなたが特にお好きな点は?
僕のイチオシは、デレック・リデルが演じるジェームズ国王だね。彼が素晴らしい俳優であることは前から知っていたけど、この役の彼は格別だと思う。絶妙な演技でジェームズ国王をよみがえらせたんだ。
それと、バッダースリー・クリントン(イングランドの指定史跡・第1級イギリス指定建造物)で撮影されたショーン・ドゥーリー(ウィリアム・ウェイド役)とのオープニングシーンもとてもエキサイティングだよ。この激しいオープニングシーンによって、本作がストーリー展開の遅い典型的なコスチュームドラマとは違うことが分かってもらえるはずだ。登場人物たちが暴力の横行する世界にいることを間髪入れずに見せることによって、「歴史ドラマはストーリー展開が遅くつまらないものである」という視聴者の予想を大きく裏切りたかったからね。
■『ガンパウダー』放送情報
BS10 スターチャンネルにて3月22日(木)23:00よりスタート
[字]【STAR 1】毎週木曜 23:00~ ほか
[二]【STAR 3】毎週月曜 23:30~ ほか
Photo:『ガンパウダー』
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