エミー賞やゴールデン・グローブ賞も受賞した全米に続いて、日本でも大きな反響を呼んでいる話題のヒューマンドラマ『THIS IS US/ディス・イズ・アス 36歳、これから』。DVDが好評リリース中の本作で撮影監督を務める日本人、谷田ヤスさんのインタビューが到着した。2000年代前半からアメリカの様々なドラマや映画の映像を作り出してきた谷田さんが、情感たっぷりの展開で多くの感動を誘った本作の"魔法"、日本人の海外挑戦などについて語ってくれた。
(本記事はシーズン1のネタばれを含みますのでご注意ください)
――まず撮影監督というお仕事についてご説明いただけますか?
米国では撮影監督はカメラ、グリップ、電気という3つの部署の責任者です。カメラの動き方や照明を調整することによって番組の雰囲気を作ります。
――『THIS IS US』以外ではどんな作品を手掛けられましたか?
『THIS IS US』のシーズン1とシーズン2の間に、『ロング・ロード・ホーム』というナショナル・ジオグラフィックのミニシリーズを撮影しました。2004年にイラク戦争で起きた「Black Sunday」事件に関する全8話のミニシリーズです。ほかには『クリミナル・マインド 国際捜査班』『ザ・ブック/CIA大統領特別情報官』『ピッチ 彼女のメジャーリーグ』、そして『ブラックリスト』のパイロットエピソードなどを撮りました。
今は、ABCの新作ドラマ『Grand Hotel(原題)』のパイロット版を撮影しています。『THIS IS US』シーズン2のクランクアップ直後にこの作品の撮影のためマイアミへ行きました。
――どのような経歴で『THIS IS US』を担当されることになったのですか?
まずは2016年春に、FOXの新作ドラマ『ピッチ』のパイロット版の撮影監督として雇われました。パリス・バークレイが監督で、『THIS IS US』のクリエイターであるダン・フォーゲルマンが企画した作品です。その撮影現場でダンと親しくなりました。ダンは私が作った『ピッチ』の雰囲気が好きだったようで、『THIS IS US』の撮影監督の面接に呼ばれ、監督のグレン・フィカーラとジョン・レクアと面接し、おかげさまで受かりました。
――『THIS IS US』の現場はどんな雰囲気でしたか?
感情的なシーンが多いドラマですが、現場はとてもライトで楽しい雰囲気でした。2年間も一緒に働き、皆さんとファミリーのようになりました。全ての部署の方々が、クオリティの高い作品を作るために努力していました。
When your DP knows what time it is... pic.twitter.com/TguAYgEjtj
— Susan Kelechi Watson (@skelechiwatson) 2017年11月22日
GREAT NEWS! #ThisIsUs has been picked up for a full season. 18 Episodes. Thanks @NBC! @chrissymetz pic.twitter.com/5KxgtBcE1B
— Chris Sullivan (@SullivanTweet) 2016年9月27日
――その現場で大変だった点は?
やはりキャラクターの感情を撮影するのが最も大変でしたね。例えば、ウィリアムが亡くなる時のランダルの涙や、シーズン1でジャックが家を出る時のレベッカの悲しみ、老人ホームで歌うケイトの喜びなどです。ですが、ハリウッドのトップクラスのカメラマン、ヘアメイク、デザイナーやアーティストが一緒に頑張ると、このような瞬間を素晴らしく描くことができます。
――お気に入りのTV番組は?
『60 Minutes』『プラネットアースII』のようなドキュメンタリー番組や、ESPNのスポーツドキュメンタリー番組が好きです。ケン・バーンズのドキュメンタリーもいいですね。ドラマは、撮影スタイルの参考のために観るくらいで、普段はそこまで観ないのですが、Netflixのドラマ『深夜食堂』はとても気に入って全話観てしまいました。それを観ると、日本に旅行した時に会った人たちを思い出します。
――先日アカデミー賞を受賞された辻一弘さんをはじめ、多くの日本人がアメリカのエンターテイメント業界で活躍している現状についてどうお感じですか? 辻さんと親交はおありですか?
正直、アメリカの映画業界で働いている日本人はあまり知らないんです。辻さんにもお会いしたことはありませんが、アカデミー賞を受賞されたのは素晴らしいと思います。撮影監督のマサノブ・タカヤナギ(高柳雅暢)とは知り合いで、彼のスタイルはとてもユニークです。あと、私のAカメラマン(カメラオペレーター)のジェームズ・タカタは日系4世です。私が学生だった2000年代は映画製作を勉強している日本人が大勢いましたが、みな日本へ帰りました。知り合いの中には日本で成功している人もいますよ。
――今後の夢を教えてください。
将来のことを考えるのはあまり好きではないのですが、夢を挙げるなら、脚本が素晴らしく、優れた監督が担当している作品を作ることですね。その作品がヒットしたらなおさら嬉しいです。
――あなたのように海外で働きたい夢をお持ちの方へのメッセージをお願いします。
アメリカで働きたい日本人は、まず同国へ行ってみるといいでしょう。自分と同じ思考を持った、情熱のある人々と絆を作れると思います。私はアメリカと日本の影響を受けていて、そこから撮影監督としてのイメージを作り上げていきましたが、成功するには日本人ならではのユニークな観点を持っていることが大切でしょうね。
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発売元:20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン
Photo:
谷田ヤス
『THIS IS US/ディス・イズ・アス 36歳、これから』
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