英BBC版『若草物語』、米国での評価は?ユマ・サーマンの娘が好演

英BBCが製作したドラマ『Little Women(原題)』が今月、物語の舞台であるアメリカで放映された。日本では『若草物語』の名で親しまれるおなじみの作品だが、原作小説の発表は150年も前にさかのぼる。ドラマ化は今回で6回目を数える不朽の名作だが、本作の出来に関して、アメリカの批評家からは賛否両論あるようだ。

◆強い絆が結ぶ家族の物語
南北戦争の真っ只中のアメリカ。マサチューセッツ州の片隅に、4姉妹と母親は慎ましく暮らしていた。暮らし向きが厳しいのは、父親が従軍牧師として駆り出されているため。聡明な長女メグをはじめとする姉妹は逆境にめげず、優しくて教育熱心な母とともに一家団結して苦難に立ち向かってゆく。女性のみの家族が困難を生き抜く本作は、女性の力強さに加え、一生懸命働くことの大切さなど、普遍的な教訓を伝えてくれる作品だ。

◆次女、150年経った今なお、エネルギッシュ
それぞれに個性的な4姉妹だが、とりわけ次女ジョーの人気は、原作や歴代のドラマ化された作品の中でも別格。本作でも、賢く情熱的な少女として生き生きと描かれている。米Varietyは、「小説の出版から150年が経つが、ジョーは依然として素晴らしい模範的人物」だと高評価。

演じているのはユマ・サーマンの娘、マヤ・サーマン=ホーク。米Boston Globe紙は、母親の容貌に驚くほど似ている彼女が、きちんと自身の演技を確立していると評価している。挑戦的なジョーの性格を余すところなく表現し、まるで彼女本人として生まれてきたかのごとく、役と一体化している印象を受ける。

明るく活発だが気性の激しいジョーは、裕福な隣家の一人息子であるローリーが思いを寄せる女性でもある。恋が実るまで何年も待ち続けるローリーの一途な気持ちとは裏腹に、関心のない彼女はそっけない態度を取り続ける。だが、この恋の物語は作品の重要なポイントでもある。今作の恋愛パートは、原作や過去の映像化作品と比較しても豊かな成長曲線を描いていると讃えているのは米Hollywood Reporter。その展開には説得力があり、大きな満足感をもたらしてくれる。であるがゆえに、終盤の悲しみに満ちた場面ではひどく落胆する視聴者が多いかもしれない。

ジョー以外の姉妹のストーリーも丁寧に描写されており、この点は本作の特色だろう。全体を通じて原作に非常に忠実な作りになっており、小説版のファンには嬉しい配慮と言える。

◆「もらい物のカレンダー」
見ていて心地良いジョーの存在があってなお、厳しいレビューを寄せる批評家たちも。Varietyは「愛される古典作品をどうしたらそこまで退屈にできるのか」と手厳しい。また、場面と場面のつなぎシーン、いわゆるBロールの多用が目立ち、ミツバチや川魚など自然風景の映像が頻繁に挿入されていることを引き合いに出し、「ドラマというよりは、無料で配っているカレンダーのように感じてくる」と述べている。そして、重要なエピソードが際立っていないと指摘するのはHollywood Reporter。マーチ家が経験する苦難はこの物語の重要な要素であるはずなのに、その点がうまく引き立っておらず、特に第2話において感情に訴えるシーンが決定打とならず、中途半端に終わっている箇所が目立った、と振り返っている。

これまで再三ドラマ化されてきた作品だけに、改めて映像化する価値をはっきりと感じさせてほしかったという意見もあるようだが、前述したジョー役のマヤの確立された演技は必見。昔から語り継がれる不朽の名作がどのように紡がれるか、是非ともチェックしたいものだ。(海外ドラマNAVI)
Photo:次女ジョーを演じるマヤ・サーマン=ホーク
(C) Kathy Hutchins/Shutterstock.com

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