リチャード・ギアが約30年の時を経てTV界に復帰することは当サイトでもお伝えした通り。出演するのは、サイコスリラードラマ『MotherFatherSon(原題)』。親族経営のメディアグループの危機を描くこの作品で、リチャードはメディア界の大物かつ父としての顔も持つ男、マックスを演じる。
◆8話のTVドラマ 経営企業と家族関係にトラブル
マックスは、アメリカ人のカリスマ経営者。ロンドンをはじめとする世界中でメディア関連会社を展開するグループ企業を一代で築き上げた人物だが、妻キャスリンとの結婚生活は数年前に破綻し、別居が続いている。自身が所有するイギリスにある新聞社の経営を30歳になる息子、ケイデンに任せていたが、向こう見ずなケイデンの生き方が、一家とメディア帝国の存続を危機に陥れることになる――。
◆リチャードの経験と技量が必要
製作側は、リチャードの存在感を求めていた。脚本を担当するトム・ロブ・スミスは、ストーリーを実現するには卓越したキャストを集めることがまず不可欠だったと語る。これまでにリチャードがスクリーンで見せてきた、象徴的で繊細な演技力を買われた格好だ。映画俳優のTV界進出はリチャード以外にも先例がある。米HBOの『ビッグ・リトル・ライズ ~セレブママたちの憂うつ~』にはニコール・キッドマンやローラ・ダーンなどがキャスティングされているほか、同局のSFドラマ『ウエストワールド』には『羊たちの沈黙』でおなじみのアンソニー・ホプキンスが顔を見せている。
◆共演者と脚本が脇を固める
リチャードのTVドラマへの復帰に、優秀な共演者と脚本家が脇を固めていると米Hollywood Reporterは伝えている。妻役のヘレン・マックロリーは『ハリー・ポッター』シリーズでドラコ・マルフォイの母を演じたほか、BBCのクライムドラマ『ピーキー・ブラインダーズ』にメイン・キャストの一人として出演。息子役のビリー・ハウルは『アガサ・クリスティー 検察側の証人』で青年レナードを演じ、「これまで見てきた若い俳優たちの中で、最もエキサイティングな演技をする一人」と監督のジェームス・ケントは賞賛する。
脚本のロブ・スミスは、有名デザイナーを襲った事件の裏側に迫るドラマ『アメリカン・クライム・ストーリー/ヴェルサーチ暗殺』の全話で、脚本だけでなく製作総指揮を手掛けているが、もともと小説家として活躍する英国生まれの39歳で、2008年に発表した処女作、スターリン体制下のソ連での連続殺人事件を描いた小説「チャイルド44」は、英国推理作家協会(CWA)賞のイアン・フレミング・スチール・ダガー賞をはじめとする数多くの賞を受賞。本作はのちにリドリー・スコットが映像化し、『チャイルド44 森に消えた子供たち』という邦題で2015年に日本でも公開されている。BBCドラマ部門責任者ピアース・ウェンガー氏は、ロブ・スミスは本作を担当することで、同世代のライターの中でも最も独創的な一人として認められるだろうと期待を寄せている。また、俳優側も脚本には一目置いており、ビリーは、込み入った芝居が求められるこの役を得られて恐縮していると、英BBC Newsが伝える。
全8話となるこのドラマは、英BBCの制作・配給部門であるBBC Studiosが手がけ、撮影は今夏、ロンドンとスペインでスタートする。放送時期は未定。このところ姿を見る機会が減っていたリチャードの復帰を楽しみに待ちたい。(海外ドラマNAVI)
Photo:リチャード・ギア
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