『ハリー・ポッター』の著者が贈るミステリー『Strike』 元軍警察の探偵と相棒が難事件に挑む

ミステリードラマ『Strike(原題)』は、「ハリー・ポッター」の著者のJ・K・ローリングが別名義で発表した推理小説「私立探偵コーモラン・ストライク」を原作としている。すでに名の売れていた彼女は、知名度に左右されない真の評価を知りたいと願い、ロバート・ガルブレイスの名で秘かに出版に踏み切った。小説と違わず、ドラマの仕上がりも好評。すでにイギリスでの放送を終え、6月1日からアメリカのケーブル局Cinemaxで放送されている。

◆その転落死、自殺でしょうか?
元軍警察として活躍したストライクは、イギリスの路地に小さな事務所を構える私立探偵。アシスタントのロビンとともにイギリスの不可解な事件の解決に精を出す。

ストライクのバックグラウンドは、興味深い要素がてんこ盛り。世界的に有名なロックスターを父に持ち、ファッションモデルだった母はヘロインの過剰摂取で亡くなっている。自身はアフガン戦争で左脚を失っており、犯人の追跡劇にはやや不利な立場。アシスタントのロビンは心強い味方だ。快活な助手の彼女は、将来的な自立を目指して日々ストライクと共に調査にあたる。

そんなコンビの元に舞い込んだのは、若きスーパーモデルの死亡事件の調査依頼。テラスから墜落死した一件は警察によって自殺と断定されるが、他殺を疑う兄弟のジョンは二人の事務所に駆け込む。果たしてストライクは真相を見抜くことができるだろうか?

将来的に独立を目指す快活な1話から3話を費やして綴られる同シリーズ「Cuckoo"s Case」のほか、失踪した小説家を追う4話と5話の「The Silkworm」、事務所に切断された脚の小包が届く6話と7話の「Career of Evil」でコンビの手腕が試される。

◆チームプレイが最大の武器
ドラマはレビューサイトRotten Tomatoesで95パーセントの視聴者が肯定的評価を寄せるほど好評。人気の秘訣は名コンビのやり取りだ。

米New York Timesでは、ストライク役であり英BBCのドラマ『マスケティアーズ』でも人気のトム・バークと、助手を演じ『Patrick Melrose(原題)』にも出演しているホリデイ・グレインジャーとの相性を高く評価。特にホリデイは、嘲るような態度とは裏腹に熱い情熱を隠し持った魅力的な女性を巧みに演じている。同メディアは「彼らの相互関係がこのドラマを観るメインの理由」とまで述べている。

さらに面白いことに、二人の関係性は回を追うごとに変化する。臨時雇いのアシスタントとその上司という関係から、良き指導者といえるまでに信頼関係を増幅してゆく。米Hollywood Reporterでは、両者が画面で顔をあわせる時間があまりにも短いと惜しんでいるほどだ。

反面、ストライクは単独のキャラクターとしては訴求力に欠ける面も。ガラの悪い探偵というよくあるキャラクターに埋もれており、『怪盗グルー』シリーズのミニオンと同じくらいに他の探偵と見わけづらい、とHollywood Reporterは茶化している。やや個性の弱いストライクではあるが、相棒ロビンとのコンビネーションは見事だ。

◆謎解きがさらに洗練していれば...
推理ドラマとして惜しむらくは、ヒントが突如示されたり、推理に論理的飛躍が見られたりするところか。ミステリーとしてはもう一押し欲しかったという声もある。ただ、米National TV Reviews & Newsのように、ドラマの世界に没入できたという感想もあり、逮捕に至るラストシーンがやや説得力を欠くエピソードもあるものの、そこに至る課程は十分に楽しませてくれるものになっている。

なお、探偵事務所の外観ロケに使われているのは、イギリス出身のパンク・ロックバンド、セックス・ピストルズがレコーディングに使用していたという由緒ある建物。ロンドンの往来の情緒もあわせて楽しみたい。(海外ドラマNAVI)

Photo:J・K・ローリング
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