英Channel 4で放送中の『Flowers(原題)』は、アクの強いフラワーズ家の人々の日常を描いたコメディ・ドラマ。2016年のシーズン1から数年後の世界が舞台になっている。双極性障害(躁うつ病)や人種への偏見を笑いに変える、悲哀をベースにしたスタイルが特徴的。日本人役として画面にも姿を見せる脚本・監督のウィル・シャープは、自身が実生活で精神疾患を患っている。
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◆個性が咲き誇るシーズン2
個性的なキャラクターをこれでもかと詰め込んだ本作。オープニングに登場するのは、2年前に雷に打たれるも生存しているという強運の持ち主、エイミー。バンド活動に明け暮れる彼女は、フラワーズ家の一番下の娘。元麻薬中毒でレズビアンで牧師という、強烈な個性を持った初老の女性ヒルダ(ハリエット・ウォルター)と交際している。「娘がヘロイン中毒者と付き合っているなんて素晴らしい」と笑顔で応える母デボラ(オリヴィア・コールマン)の本心は!?
そんな母デボラは精神疾患に悩む夫モーリス(ジュリアン・バラット)の元を去るが、結婚生活の愚痴を綴った「悪魔との生活」という本を出版し、一山当てるしたたかさを見せる。ちなみに夫モーリスは妻をラザニアに例え、新鮮なサラダをたまには食べたいと真剣に訴える。他の女性と寝たいという暗喩だが、妻に愛想を尽かされるのも納得の濃いキャラクターはシーズン2でも健在だ。
◆不幸こそが屋台骨
うつ病に代表されるように、不幸こそがこのドラマの屋台骨。前作で病に苦しんだモーリスは快方に向かっているが、代わりに双極性障害のエイミーに話の中心がシフトする。
英Telegraphはシチュエーション・コメディを意味する"Sitcom(シットコム)"をもじり、本作は悲しみが主軸の"Sadcom"だと表現。精神病をモチーフにしたこのサブ・ジャンルは意外にも近年多く製作されており、落ちぶれた馬が主人公のNetflixのアニメ『ボージャック・ホースマン』もその一例。そうした類似作の中にあってひときわ異彩を放つ本作について、同紙は「他のどんなドラマとも似つかない」と評し、5つ星のレーティングを与えている。
作中には日本人のキャラクターも登場する。シュンという男性は、女装癖のあるアルコール依存症患者という、これまた個性的な設定。シュンの登場するコミカルなシーンの一例として、豪華なレストラン内で中国人と間違われて馬鹿にされる一幕を英Timesは紹介している。泥酔状態で大げんかを繰り広げるのだが、海外で他のアジア人と間違われるエピソードは、日本人としては思わず納得してしまう。そんなシュンを演じるのは、脚本・監督のウィル・シャープ本人。彼自身が実生活でII型双極性障害を患っているというのも意外な情報だ。
◆強烈な個性にめまい?
個性爆発のシリーズは絶好調だが、少し行き過ぎなのでは、との声も。Timesは、夫役ジュリアンの演技を称賛しつつも、話に付いていけない部分があると振り返る。常識外れのキャラクターとエピソードを山盛りにしたサービス精神が、かえって視聴者を混乱させてしまうのかもしれない。
英Evening Standardも、話の散漫さをマイナス評価し、別々の人が書いた文をつなぎ合わせたようだとコメントしている。ただし両親役をはじめ、キャストの演技には好印象。内容が濃いため一気に観ると悪酔いしてしまうかもしれないが、少しずつ楽しむことでその魅力を堪能できるシリーズだ。
ドラマ『Flowers』シーズン2は、英Channel4で放送中。(海外ドラマNAVI)
Photo:オリヴィア・コールマン
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