DCコミック原作の『プリーチャー』は、マニアックでディープな世界観が売りの新感覚アクションドラマ。スーパーパワーの宿る牧師ジェシー(ドミニク・クーパー)が、不死身の吸血鬼キャシディ(ジョセフ・ギルガン)を相棒に、生死をかけた冒険をテキサスの田舎町で繰り広げる。ダークでバイオレントな人気シリーズが、米AMCに帰ってきた。
(以下は、同作の重要なネタばれを含みますのでご注意ください)
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◆元カノへの愛に気づいた牧師、魔女を頼る
昨シーズンで主人公ジェシーは、元カノのチューリップ(ルース・ネッガ)を亡くしている。シーズン3の第1話では、死の世界の入り口に佇むチューリップの救出作戦が展開。彼女は在りし日を回想する中で、父親を守るため、銃を片手に警官に歯向かおうとしていた。死が決定的になろうとした刹那、チューリップが閉ざされている煉獄に、ジェシーの祖母(ベティ・バックリー)の魔力が届く。チューリップと過ごした日々を忘れることのできないジェシーは、彼女を復活させるよう魔女である祖母に懇願していたのだった。生と死のパワーがぶつかり合い、空間は粉々に破壊される。チューリップは神によって復活を許されるが、それと引き換えに果たさなければならない秘密の使命が。さらに、彼女の生還はジェシーとキャシディを巻き込んだ三角関係を再燃させることに。アクションとブラックユーモア満載のシーズン3が幕を開ける。
◆キャラクターのパワー
『プリーチャー』シリーズに活力を与えているのは、何と言っても奇想天外のキャラクターたち。ジェシーは過酷な現実を前に信仰心を失いつつある牧師だったが、ある日人知を超えた能力を手にする。他にも個性爆発の登場人物が目白押しだ。
中でも、ジョディー(ジェレミー・チャイルズ)は不思議な引力を備えた人物。血しぶきが宙に舞うほど激しいパンチを喰らわせたかと思えば、ジェシーをリトル・ジェシーと呼んでからかうなど、茶目っ気のある一面も。彼とTC(コリン・カニンガム)の名コンビについて米Vultureは、二人とも見ていて不快な役どころにもかかわらず、なぜか目が離せないと心酔している。
そのほか、魔女である祖母は、近年登場したキャラの中でも印象的な人物だ。米IndieWireは、彼女と並んで死刑執行人のヘル・スタール(ピップ・トレンス)の存在を挙げ、コミック実写化作品にベストなヴィランだと高く評価している。シーズン2にも増して磨きのかかったキャラクター劇に期待が高まる。
◆てんこ盛りのストーリー
人物がすべからく鮮烈な印象を残す『プリーチャー』だが、そのプロットも色彩豊か。別人格の生成から死者の蘇生まで、神秘的な後味を残す要素がふんだんに盛り込まれている。ほかにも様々なサブ・プロットを巻き込んでストーリーは進む。
サービス精神旺盛なあまり、本筋から少し離れてきていると感じられる場面も。IndieWireは、これまで広げてきたストーリー・ラインの数々を、そろそろ一つにまとめるべき時がきたと主張。シーズン3では、ジェシーと相棒キャシディ、そしてチューリップの3人に焦点を絞ってゆくのも良いかもしれない。
AV TV Clubでは別の問題として、ジェシーの心理がうまく説明できていないと指摘。彼の実の父親は、祖母の手下によって殺害されている。チューリップを救うためとはいえ、怒りに燃えていた以前の彼と比べると一貫性に欠けるという見方もできる。
とはいえ、懐かしいエンジェルヴィルの田舎町に舞台を戻したシーズン3は始まったばかり。新しいメンバーを迎え、壮大なバイオレンス・アクションの世界はますます視聴者を引き込んでくれることだろう。『プリーチャー』シーズン3は、米AMCで6月24日(日)から放送開始しており、日本ではAmazonプライム・ビデオで順次配信中。(海外ドラマNAVI)
Photo:『プリーチャー』シーズン3
(C) Frank Ockenfels 3/AMC/Sony Picture