【ネタばれ】バーチャル世界の住人を"元交渉人"が現実に連れ戻す!『Reverie』が切り拓く新ジャンル

米NBCで放送中の『Reverie(原題)』は、ソーシャル・メディアとAIが織りなすバーチャル世界をテーマにしたSFドラマ。魅力的な仮想世界に閉じこもるユーザーを、交渉のプロが救出する。

♦人質交渉の元プロ、今度の相手は人質自身
マーラ(サラ・シャヒ)は、誘拐事件の元交渉人。あるトラウマ的出来事を経験したことから退職し、現在はハイテク企業「オニラ・テック」に雇われている。

オニラ社では、夢想を意味する「レヴェリー」という名の最先端のバーチャル機器を売り出し中。愛する故人のソーシャル・メディアの投稿や写真などをレヴェリーに読み込ませると、AIがバーチャル・ワールド内にその人格を復元する。ユーザーが仮想世界に飛び込むと、亡き大切な人との再会を仮想体験できるという趣向だ。

ところが、マーラの元にトラブル発生の知らせが。あまりに理想的なバーチャル世界に陶酔した一部のユーザーたちが、現実世界への帰還を拒否。すでに7名もの人間がオニラ社の端末を装着したまま昏睡状態に陥っていた。マーラは社命を受け、まだバグの残る危険な仮想空間にダイブする。元交渉人というバックグラウンドを活かし、彼女は向こうの世界の住人と化したユーザーたちに帰還を説得できるだろうか?

♦身構えずに楽しめるSF作品
本作『Reverie』は、SFでありつつも難解すぎることなく、安心して観ることのできるトーンを維持している。誰もが理解できるハイ・コンセプトなドラマであり、熱狂的なファンが付くだろうと米Forbesは評価する。

作中ではAIとソーシャル・メディアによって人間の人格が再現されるが、AIが普及しつつある現代にあって、この設定はかなり自然に感じられる。『Reverie』の世界は、近い将来実現しそうな期待が持てるため、コンセプトに現実味が感じられると米IndieWireは讃える。レヴェリーの映し出す仮想世界では、ユーザーの精神世界を表現するクリエイティブな描写にも注目したい。息を飲むほど美しい森やチャイナタウンのフェスティバルなど、予想を超えるビジュアルで視聴者を驚かせてくれる。

欲をいえば、あえて分かりやすい世界観にとどめた本作は、ハードなSFを好む層には若干生ぬるいと感じられるかもしれない。米Los Angeles Timesは、「涙とハグで味付けした、SF寄りの生焼けのメロドラマ」と不満をこぼす。ただし裏を返せば、ドライになりがちなSFの世界に、血の通ったストーリーを求めていたという視聴者にはうってつけだと言えよう。

♦現状はメロドラマにウエイト?
ヒューマンドラマの要素を取り入れた『Reverie』は、二つのジャンルを融合する実験のようにも感じられる。Forbesは一風変わった実験的作品だとした上で、その意味では将来有望だと断言。仮想世界を離れたくない人々を題材とした良質な人間ドラマは何本でも書くことができるため、複数シーズンにわたる展開も視野に入るだろう。

実際、ストーリーの情緒面はSF要素と同じくらいに大切な本作の柱。ドラマは終始、仮想世界を去りたくない人物が隠す暗い感情を感じさせる。加えて、元交渉人マーサ自身のトラウマも見え隠れする。こうした心理描写を盛り込みつつも、決して陰鬱になりすぎることがないのは、しっかりとしたプロットが本作に活力を与えているからだとIndieWireは指摘する。

『Reverie』は米NBCで放送中。(海外ドラマNAVI)

Photo:サラ・シャヒ
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