【ネタばれ】両手のない少女は森で何を見たのか...? Facebookが挑むグロテスクな物語『Sacred Lies』

Facebookが2017年夏に立ち上げた動画配信サービスFacebook Watchから、ダークなヤングアダルト作品『Sacred Lies(原題)』が登場。タイトルは「聖なる嘘」「つき通すべき嘘」を意味する。殺人事件の秘密を握っているとめされつつも、警察に頑として口を割らない少女。彼女は何を隠しているのだろうか...?

(※この記事は本作のネタバレを含みますのでご注意ください)

■森のカルト集団から両手のない少女が脱走

新進気鋭のヤングアダルト作家、ステファニー・オークス。本作はそのデビュー小説『The Sacred Lies of Minnow Bly』を原作としている。同書はグリム童話の一編がモチーフ。

ドラマは、森を脱出するヒロインの少女ミノー(エレナ・カンプーリス)のショットからスタートする。森の中のカルト教団から逃げ出した彼女は警察に保護されるが、脱出の直前に両手を斧で切り落とされ、手首から先を失っている。温かく社会に迎えられるかと思いきや、教団を率いていた「預言者」と呼ばれる人物(トビー・ハス)が何者かに殺害されていることが発覚し、FBIはミノーが重大な事実を握っていると睨む。彼女は矯正施設での生活を強いられることになる。

施設ではFBIのウィルソン分析官(ケヴィン・キャロル)からの聴取を受けるほか、自由な時間には物怖じすることなく、あちこちを探索して回る。同じく施設に収容されているエンジェル(キアナ・マデイラ)が「何がそんなに珍しいのか」と問うと、「こんなにたくさんの人種を見るのは初めて」とミノー。カルト集団では、白人以外に近づく者は落ちこぼれだと教え込まれていたのだという。異常な集団で起きた殺人事件。ミノーは果たして純粋な被害者なのだろうか。

■残酷な描写

グロテスクな描写が売りの本作。複雑で淀んだヤングアダルト作品を読んだ人にはおなじみの空気感だと米Pasteは表現する。教団から逃げる直前に切り落とされたというそのパーツは、ミノーが警察に発見されるまで、血まみれで服の前ポケットにしまわれていた。おぞましい集団の姿や、不況のため車上生活を強いられることになったミノーの家族の生活など、残酷でリアリティのあるシーンが次々に展開する。

鮮烈な描写の例として、米Varietyは冒頭のシーンを振り返る。第1話の開始早々、ミノーがあざのある死体の上に立っているという衝撃的な状況が示される。包囲した警察は「両手を挙げろ」と命じるが、彼女が腕を宙に掲げ、手首から先が失われていることがわかるという流れ。原作がグリム童話の「手なしむすめ」を基にした物語とだけあって、ダークで露骨な表現は折り紙付きだ。

■コンパクトに凝縮

Facebook Watchが製作する本シリーズは、各話がおおむね30分程度にまとまっており、ちょっとした空き時間に楽しめる。お手軽な尺のなかに、興味深いミステリがぎゅっと凝縮。既存の謎への回答をうまく引き伸ばしつつ、新たな謎が続々と提示されてゆく、とVarietyは評価する。コンパクトな時間枠に気になる要素を目一杯盛り込んだシリーズとなっている。

短いながら見応えがあるのは、ミステリーに特化し恋愛要素を潔く削ぎ落としているため。Pasteは、若者向け作品の肝であるラブロマンスの要素は皆無だと指摘。しかし、原作者のオークスは、ヤングアダルト作家として決して異端というわけではない。陰鬱とした高校生活を描いて全米の若者の支持を得た「スピーク」のローリー・ハルツ アンダーソンなど、恋愛パートなしでリアルな読みごたえのある作品を発表している著者は多数存在する。ダークな読みごたえと現実味を追求したこれらの作品にドラマ化の例は少ないものの、Facebookがこのサブジャンルを切り拓く形となるか、とメディアは期待を寄せている。

リアルでグロテスクな描写に挑む『Sacred Lies』は、Facebook Watchで配信中。(海外ドラマNAVI)

Photo:主演を務めるエレナ・カンプーリス(C) Debby Wong / Shutterstock.com