「シビル・ウォー」「キック・アス」のマーク・ミラーによる同名コミックを実写化したNetflixオリジナルドラマ『ジュピターズ・レガシー』がついにベールを脱いだ。"史上最大のスーパーヒーロー叙事詩"を目指して心血を注いだというマークの思いは、果たして映像作品として成就したのか? これはあくまでも主観だが、"史上最大"という部分以外は概ねイエス! 『ザ・ボーイズ』(Amazon Prime Video)と双璧を成すその完成度は、マーベル、DCに続く新たなスーパーヒーロードラマとして期待に違わぬものだった。【ドラマ・レビュー】
全8話で構成される『ジュピターズ・レガシー』は、1930年代から活躍してきたスーパーヒーローチーム"ザ・ユニオン"が、次の時代を継承する子どもたちとの確執に苦悩しながら悪と対峙するアクション・ドラマ。『パシフィク・リム:アップライジング』の監督スティーヴン・S・デナイトがメガホンを執り、『ウォーキング・デッド』の脚本家でもあるサン・ギュ・キムがショーランナーを務める。
当面のライバル作品『ザ・ボーイズ』と『ジュピターズ・レガシー』の共通点は、時代の変化に右往左往するスーパーヒーローたちのリアルな姿だ。だが、その核となる物語には圧倒的な違いがある。前者は正義をないがしろにし、陰謀渦巻くダークな裏側をえぐるというタブー破りの展開。後者である本作では、親と子の"世代間ギャップ"というそのまま日常ドラマにも転化できる問題を提起している。
だが、その世代間ギャップという題材を(言い方は悪いが)上手に利用した本作は、育った環境の違い、メンタルのズレから生じるトラブル、事故、犯罪などを壮大なアクション(あるいはエンタテインメント)へと昇華させている。スーパーパワーを手にするまでの苦闘の日々を描いた若き日の父シェルドン(ジョシュ・デュアメル)に対して、ドラッグ中毒に陥る反抗的な長女クロエ(エレナ・カンプーリス)や父に認めてもらえず腐る長男ブランドン(アンドリュー・ホートン)の子世代。この両面を平行して描きながら、その接点(つまり現在)で起きる確執や葛藤が、壮絶なバトルに繋がっていくというドラマ構成は実に巧みだ。
「殺さずに戦え」「人々の模範になれ」とヒーローの理想論を押し付けるシェルドン、「殺さなければ救えない」「誰も模範になんかなれない」と不満を漏らすクロエとブランドン、常に価値観や時代の変化がつきまとう中、親子は心を一つにし、混沌とした世界を救うことができるのか? 目の前の悪事に対峙しながら、スーパーヒーローと家族の在り方を問いかけていく本作は、壮絶なアクションバトルを楽しみながら、時の流れ、継承する難しさを熟考させられる実にエモーショナルなエンタテインメント作品だ。
(文/坂田正樹)
Jupiter's Legacy is now streaming, only on Netflix.#JupitersLegacy pic.twitter.com/w6rfIps9eE
— Jupiter's Legacy (@JupiterLegacy) May 7, 2021
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Netflix『ジュピターズ・レガシー』