蒸し暑い日々が続いていますね。そんな時にはやっぱりホラーでスカッとするのが一番。そのラインナップとして、ちょっと毛色の違う『iゾンビ』はいかがでしょう? タイトルの通りゾンビ作品ですが、ゾンビの主人公が死体安置所に運ばれてきた死体の脳を食べて、それによって得られた情報をヒントに事件の謎を解いていくという斬新な犯罪捜査ドラマです。
今月初めにセカンド・シーズンのDVDがリリースされた『iゾンビ』より、キャストたちのインタビューを5回に分けてお届け! 第3回は、主人公リヴがゾンビと知りながら快く協力する頼もしい味方、検視官のラヴィ・チャクラバーティを演じるラフル・コーリ。
(本記事は、第1シーズンのネタばれを含みますのでご注意ください)
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――ラヴィはゾンビのリヴと同僚なわけですが、ご自身もゾンビに取り憑かれていたりするのでしょうか?
まあね。僕はかなりのゲイマーだから、「バイオハザード」シリーズをよくプレーしたものだよ。あれがゾンビとの最初の出会いだったな。それに『ショーン・オブ・ザ・デッド』の大ファンでもある。この仕事を始めてからは、ジョージ・A・ロメロのゾンビ映画シリーズを一気見したりもした。僕らのドラマはああいう映画とはまったく違うけど、それでも古典的なゾンビが多少出てくるからね。
――本作は原作コミックとかなり異なりますが、原作はご覧になりましたか?
コミックのことは知っていたから、たしかオーディションを受ける時に第1巻を読んだよ。どれぐらい原作から離れているか知らなかったから、その時はまだ役をもらっていなかったんだろうね。第1話を撮影するまではハッキリしていなかったんだ。そういうリサーチをするのは楽しいし、元になった素材を見ておかないのは失礼だと思うしね。どれぐらい原作に忠実かは関係なく、僕らがしている仕事には大事なことだし、コミックのクリエイターたちとは良い関係を築いているよ。
――企画・製作総指揮を務めるロブ・トーマスと仕事をしたこと、そして、彼が元になった素材から独自の世界を構築したことについて話してもらえますか?
彼は元の素材からたくさんの要素を取り出して、今でも多くの登場人物が原作と同じような意思を持っている。ロブと(同じく企画・製作総指揮を務める)ダイアン(・ルッジェロ=ライト)は独自の伝承的なストーリーを創作したけど、できるだけ原作に賛同するスタンスを取ってきた。でも最大の違いは、幽霊や吸血鬼といった超自然的な要素だね。ロブとダイアンはそういうものを避けようとした。その理由は、僕の記憶に間違いがなければ、この企画を進めていた際に『トゥルーブラッド』がヒットしていて、もうそういうジャンルは作られてしまっていると考えたからだと思う。あのドラマとは距離を置いて、ゾンビジャンルに専念しようと考えたんだ。
――検視医を演じるにあたってリサーチや準備はされましたか?
僕の場合は、法医学のケースファイルを読んだり、このドラマの舞台となっているキング郡の様々なシステムを研究したりした。州によってシステムが異なるからね。物事がどういう風に機能するのか把握しておくのは良いことだったよ。それから本物の解剖のビデオを見て、基本的な解剖で何が必要とされるのかを学んだ。あと、数人の病理学者から直接話を聞いて、バンクーバーに着いてからは死体安置所を訪問し、何体か遺体も見たよ。
――どうでした?
興味深かったよ。これもまた僕にとっては絶対不可欠なことだったわけだけど、死体安置所の雰囲気はありきたりな感じで、すべてが日課のように行われていた。僕らが訪ねた時、部屋のある場所には脳みその入ったバケツがいくつか床に置いてあって、「ああ、あれは脳みそが20個ほど入っているんだ」みたいな。どう言ったらいいのかわからないけど、あれはとにかく彼らが毎日のようにしている仕事に過ぎないんだ。みんながとてもくつろいで仕事をしているのが見られたことは、僕と(リヴ役の)ローズ(・マクアイヴァー)にとって非常に役立ったよ。彼らみたいに演じられるよう努めているんだ。
――バンクーバーの死体安置所は簡単に訪問できるものなのですか?
本来なら大変なんだろうけど、僕が行った時は、ドラマ側の承認をもらって、彼らが訪問の手配を手伝ってくれたからすんなり入れたよ。僕個人はもともと訪問するつもりだったけど、切開されたところがどう見えるかといったことを学ぶために小道具係とメイクアップ係もついてくることになってグループで行ったんだ。全員にとって素晴らしい見学だったよ。
――リサーチのためとはいえ、病理学者などでもない人にとって解剖の見学は大変だったと思うのですが、どうやってやり遂げたのですか?
僕にも恐怖心はあるよ。例えば、僕はアドレナリン・ジャンキーではないから、飛行機から好んで飛び降りたりはしないけど、もしスカイダイバー役に起用されればちゃんと飛ぶ。見なくても済むなら、誰も好きこのんで解剖のビデオなんて見ないだろう。
――解剖のビデオはどこで見つけたのですか?
そんなものどうやって見つけるのって感じだよね(笑) でも僕は見つけたんだ。人体の不思議展に関与した有名なドイツ人の病理学者がいるよね。今、ちょっと名前を思い出せないんだけど、彼がイギリスでライヴ放映された教育ビデオを作っていて、その古いビデオテープを見たんだ。そういう映像に関しては、見ているうちに無感覚になるんだと思う。最初はちょっと気になったけど、しばらくすると慣れてしまった。その経験は役に立ったよ。撮影で検死台の上に乗っている死体は実物そっくりで、僕らはそれをとても間近にしなければならないんだけど、解剖ビデオを見ていたおかげで気分が悪くなるようなことはなかったからね。全然気にならないんだ。僕らは内臓を取り上げて振り回したりしているけど、それが習性みたいに感じられるようにしたかった。そういうものを扱うたびに何かを感じたりしないようにしたかったんだ。自分では意識していなかったけど、無感覚になるように仕向けていたんだと思う。
――第2シーズンでのラヴィは、ゾンビの解毒剤を作り出すためにユートピウムをさらに入手しなければならないということで、死体安置所の外に出て危険にさらされることが多くなるのでは?
うん、そうなるだろうね。前シーズンでは誰もが自分の居場所を見つけようとしていて、ラヴィはほとんど死体安置所に留まっていた。そこが彼の持ち場で、「視聴者のみなさん、これが新しい脳みそで、こういうものを必要としています」と示すのが仕事だったから。でも、一つのシーズンを終えた今は、視聴者がキャラクターにどう反応し、彼らに何をさせたがっているのかがわかっている。多くの人がラヴィに外の世界の人々と交流することを願っているから、僕らも彼がやるべきことをする妨げにならない程度にそうさせるようと努めているところだよ。
実際、彼は何回か危ない目に遭っている。このシーズンのラスト3話分の脚本はまだ読んでいないけど、ラヴィはすでに危機的状況に置かれているよ。だから、少しばかり変化はあるね。すごく大きな変化があるメイジャーやブレイン、それにリヴと比べると、そんなに変わらないけど。でも彼の立ち位置があまり変わらないところが僕は気に入っているんだ。
――ご自身ではビデオゲームやコミックがお好きだそうですが、特にお好きな作品は? そんなコミックの一部になるというのはどんな気分ですか?
僕はバットマンの大ファンだから、お気に入りの作品はフランク・ミラーによる「バットマン:ダークナイト・リターンズ」だね。すごく好きなんだ。あの作品には圧倒された。あとは「ウォッチメン」。自分がそういう世界の一部になったというのはなんだか夢のようだ。DCコミックスにはすごく良くしてもらっている。オフィスに行ってみんなに会えたし、『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』のクリップまで見せてもらった。なんだか仲間に入れてもらえたようで...自分がこのジャンルの大ファンだということを考えると、初めてのレギュラー出演でこの役をもらえたというのはすごくラッキーだったね。
ゲームでは、ポケモンもよくプレーしてるよ。ガールフレンドが大ファンなんだ。ロンドンの自宅にいる彼女とはオンラインで一緒にプレーしてるんだけど、「コール オブ デューティ」とか「バトルフィールド」みたいな僕が好きな作品ばかりだと悪いから、彼女の好きなポケモンも二人でプレーしてるんだ。そうすれば気持ちが通じ合えるから。花とかを買うこともできるけど、それが僕なりのやり方なんだよね。
――ポケモン以外で好きな日本のコミックやビデオゲームはありますか?
僕は「メタルギア」シリーズ、小島秀夫作品の大ファンなんだ。あのゲームは今でもプレーしてるよ。あとは「ファイナルファンタジー」も大好きだ。新作が出るのが待ちきれないな。僕がこれまでプレーした中で最高のゲームのいくつかは日本から来たものだし、マンガを読んで育ったから、日本の文化を結構知っていると言えるんじゃないかな。
――本作出演以前でバンクーバーに来たことは?
いや、バンクーバーに初めて来たのは第1話撮影のためだよ。実は、そもそも大西洋を渡ったのが初めてだったんだ。って、それは嘘だけど(笑) 仕事でキューバに行ったことがあるからね。でも北米を訪れたのは初めてだった。
――バンクーバーはお好きですか?
大好きだよ。あまりにも好きだから、実はロンドンに戻らないことも考えているんだ。住んでいる人が素晴らしいよね。僕らは充実した時間をここで過ごしている。アメリカとヨーロッパとの間に子どもができたら、それがバンクーバーって感じなんだ。
――人々がゾンビに興味をかき立てられるのはなぜだと思われますか?
僕らのドラマは違うけど、ゾンビ作品のほとんどが世界の終末を扱っている。そこでは必要最低限のものしかない。電気はなく、配給品や食料品をめぐって争いが起きる。僕らが現代生活の居心地の良さをすべて取り去られた時、どんな人間になるのか、酷いことをする酷い人間になるのか、そのような状況で生き残れるのかということにみんな興味があるんだろうね。
――あなたはそうした世紀末が来たらどうされますか?
自分の顔を撃つね。『ウォーキング・デッド』を見たけど、戦ったりバンドエイドを求めてドラッグストアを略奪したりするのが楽しいとは思えない。自分のラップトップのバッテリーが切れるまで好きな音楽、たぶん『スター・ウォーズ』のサウンドトラックを流しながら、自分を撃つだろう。自分の思い通りに死にたいからね。
――ヨーロッパのもので何が一番恋しいですか?
一番恋しいものか...ヨーロッパについてはわからないな。ヨーロッパ全域を見てきてるわけじゃないから。自分の国についてなら、ニュースが恋しいね。奇妙に聞こえるだろうけど、英国メディアの報道は、得るところが多いし、広い範囲を網羅している。ここバンクーバーだと、外界から隔離された狭い範囲の世界で生きている気持ちになってしまう。自国で何が起きているのかまったくわからないし、完全に断絶された気がするんだ。あと、牛乳はヨーロッパの方が美味しいな。ここの牛乳だと紅茶やシリアルが全部ダメになっちゃって僕にとっては大問題だ。ということで、恋しいのは食べ物とニュースだね。
――それでは、まずいシリアルを食べてここに滞在するとしたら、どのように折り合いをつけるのでしょう?
味覚を順応させるよ。あと、ニュースについてはBBCやGuardian紙のウェブサイトにログインすればいいだけの話だろうしね。バンクーバーに滞在する際の最大の変化は時差だと思う。僕はリヴァプールFCの大ファンなんだけど、見たい試合はこっちの時間だと朝の4時とか6時のキックオフになっちゃうから、ライヴで見ることができない。それが唯一の問題だね。24時間寝なくても済む方法を模索中なんだ。
――先程、本作はほかのゾンビ作品と違うという話がありましたが、それではこのドラマは何を意味すると思われますか?
死後の人生についてだと思う。自分に何が起きようとも、気持ちを切り替えて前進し、自らを向上させる新しい道を見つけるということについての作品だ。ゾンビになったことでリヴはすべてを失う。こういうことは様々な状況を通してたくさんの人々に起きることだ。彼女は諦め、ネガティブな方向へ進むこともできたが、ポジティブな方向へと進路を変えた。演じるローズですらリヴは最初はかなりつまらない人間だったと言っていたと思うけど、彼女は新しい自分に満足できる道を探し、人の役に立つことをして、自ら状況を変えることに成功した。このドラマのテーマは希望で、すべてのことに価値を見出そうとすることを描いていると思う。
――エピソードごとにリヴは常に何らかの新しい面を見せますが、そんな彼女との共演はいかがですか?
僕はほとんどの場合、ローズ相手の演技になるから、どのエピソードも目新しいエピソードのように感じるね。本読みのリハーサルなどなしでいきなり撮影する時は、撮影初日にローズがどういうものを出してくるか、すごくワクワクする。セクハラする人間になっている日があったかと思えば、翌日には大麻の常用者になっているし、そのまた次の日には奇術師になっていたりするから。さらにそれが役立ったりするんだ。例えば、リヴの脳を通じてラヴィについて学ぶこともあって、ラヴィは奇術の大ファンだということがわかったりするんだ。そんなの僕だったら考えつかないよ。そのことは1週間前に知って、ラヴィの新しい面を演じることができたんだ。
――今後、ラヴィの生い立ちなども語られるのでしょうか?
どうかな。シーズンを重ねていけばラヴィについてもっと知ってもらうことになると思うけど、僕は今の彼がとても好きなので、ためらう気持ちもある。彼に生い立ちというものはなかったからね。こういう状況を、僕はいつもダースベイダーになぞらえている。ダースベイダーは僕の大好きなキャラクターの一人だったんだけど、その過去を知り過ぎてからは彼を見るたびにウエッとなる。ポッドレースに出場するアナキン時代の彼を見たら価値が下がっちゃったんだ。ラヴィについても、ファンのみんなが生い立ちを知りたいと思ってくれるのは嬉しいけど、そのせいで彼の魅力が弱まってしまうならダメだと思う。わかるかな? そのキャラクターに磨きがかかったり深まったりする場合に限るべきだ。ということで、僕はラヴィの生い立ちを求めてロブ・トーマスがいる部屋のドアをノックしに行ったりはしないよ。
<『iゾンビ』インタビューリレー>
【1】ローズ・マクアイヴァー(オリヴィア・"リヴ"・ムーア役)「毎週毎週食べる脳みそについて考えてるの」
【2】ロバート・バックリー(メイジャー・リリーホワイト役)「ゾンビ対策? 電池とガムテープをたくさん用意してメイン州に行くことだ」
【4】マルコム・グッドウィン(クライヴ・バビノー役)「ジョークを言わないのは実はすごく難しいんだ」
【5】デイヴィッド・アンダース(ブレイン・デビアス役)「あなたは大嫌いだけど死んでほしくない、とよく言われる」
『iゾンビ<セカンド・シーズン>』は、ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメントからDVDリリース中。
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Photo:『iゾンビ<セカンド・シーズン>』
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