Netflixで放送中の『THE INNOCENTS/イノセンツ』は、家庭の抑圧から逃げ出した10代のカップルが主人公のラブストーリー。ヒロインが特殊能力に目覚めたことで、衝動的な恋の逃避行は謎めいた道のりをたどることになる。
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■家出した若いカップルを待ち受ける「新たな世界」とは
養父と暮らす16歳のジューン(ソルカ・グラウンドセル)は、ひそかに恋人ハリー(パーセル・アスコット)と町を出て行く計画を立てている。厳格すぎる養父との息苦しい生活に加えて、家族を置いて姿を消した母親のことも、ジューンの心をむしばんでいたのだ。
約束の日。手を取り合い逃げ出したジューンとハリーはロンドンへ向けて車を走らせた。そして、初めて一夜をともにした二人はあらためて強い愛情を確かめ合い、自由を味わう。ところが数時間後、ハリーがベッドで目覚めると、隣にいるはずのジューンが消えていた。しばらくして戻ってきたのは、見知らぬ中年男。男は、警戒しつつ動転するハリーを羽交い絞めにし、自分はジューンなのだと大声で訴えながら、二人の姿を鏡に映す。鏡を見たハリーは目を疑う。自分を後ろから抱えているのは、ジューンだった――。
■8話完結で、急展開すぎないのが魅力
ジューンには、自分の姿を別の人物に変える「シフト」という能力が備わっていることがわかる。そして、その力は行方不明の母エレナ(ラウラ・ビルン)から受け継いだものらしい。姿形を変えながらも鏡には本来の自分の姿が映るという設定は、「目に見えるものが真実とは限らない」という本作のテーマを表す。
ドラマでは、ジューンの能力にまつわる伏線がはりめぐらされるとともに、ジューンの家族の話など複数のエピソードが並行して描かれ、謎は深まるばかりだ。
米Forbesは、じわじわと燃え上がる謎めいた構成が魅力だとし、8話で完結する点もストリーミング時代にふさわしいと評価する。確かに、ネット配信で世界の良作が相次いで見られるようになった今、話数は意外と重要なポイントだ。米Vultureもこの点を評価しつつ、サイドストーリーがやや目立ちすぎて緊張感を削いでいると指摘した。
フレッシュな主演二人を脇で固める実力派俳優にも注目したい。とくに、ジューンとエレナの能力の鍵を握るハルバーソン博士を演じたガイ・ピアース。博士の思惑もなかなか読めず、解き明かしていく楽しみがある。
■神秘的な映像がラブストーリーを盛り上げる
物語のベースは、あくまでも青春ラブストーリーだ。どこか危なっかしいけれど切実な恋と、未熟さゆえの不器用な言動――10代ならではのこうした繊細な感情を巧みに活かした演出も、本作の魅力となっている。米Varietyは、ロケ地であるイギリスとノルウェーが醸し出す薄暗い映像美が、夢見がちな若者たちの世界観を表現していると見ている。Vultureもノルウェーの風景の美しさを特徴にあげ、タイトルを象徴する重要な舞台として注目した。
Varietyはまた、同じNetflixの青春ドラマ『13の理由』が自殺や暴力などネガティブな題材を描いて若年層に絶大な支持を得たのに対し、今作は逆に「真・善・愛」を美学にしていると述べた。この点が視聴者にどう受け入れられるか、今後の注目点だろう。
Netflixのオリジナルシリーズ『THE INNOCENTS/イノセンツ』は全8話で配信中。(海外ドラマNAVI)
Photo:『THE INNOCENTS/イノセンツ』
(C) Richard Hanson / Netflix