舞台は1987年のニューヨーク。世間からは白い目で見られていたトランスジェンダーや同性愛者の若者たちは「ハウス」という独自のグループシステムの中で、お互いをケアし合う家族形態を作っていた。絶対的な権限を握る「マザー」と呼ばれるリーダーが「ハウス」を仕切り、「子どもたち」はマザーの庇護を得る代わりに絶対服従というルールだった。
トランスジェンダーのブランカはある日、HIVに感染していると診断される。余命いくばくもないと悟った彼女は、長いこと世話になったハウスから独立して自分のハウスをオープンすると宣言。激怒したマザーには裏切り者と呼ばれるが、そんな彼女を無視し、「ボール」でマザーも世間も見返してやる!と、飛び出して行くブランカ。
「ボール (= 舞踏会)」とは様々なハウスが集結し、場末のクラブで定期的に開催されているパーティー。その夜のテーマに沿った着こなしや態度を披露して競い合い、優勝したハウスがコミュニティ内での地位を高めていくという仕組みだ。「ボール」は、一般社会から受け入れられない同性愛者やトランスジェンダーたちが自分自身になれる場所で、やがて一般社会にも影響を及ぼすLGBTQカルチャーの発祥拠点だった。
当てもなく独立したブランカは、公園でダンスを披露して小銭を稼いでいる少年に会う。名前はデイモン、17歳。ゲイであることを両親に打ち明けたがために家を追い出されたという。彼はブランカ新設のハウスメンバー第1号となる。だが世間は彼らのような異端児に寛容ではない。果たしてブランカたちの行く先に待ち受けるものとは?
ブランカを演じるMJ・ロドリゲスは実際にトランスジェンダー女優。ゲイの男優として舞台を中心に活躍していたが、幼い頃から男性としての身体に違和感があり、己を偽って生きている気持ちに苛まれ苦悩していたという。2016年に俳優業を長期休業して医学的に性転換を行い、トランスジェンダー女性となった。
MJが言うところの「己に正直になった」ことが彼女の人生に多大な成果をもたらし、ブロードウェイの大ヒットミュージカル「Hamilton」の出演につながり、やがて『Pose』の主役獲得となったわけだ。
製作スタジオ:FOX
放送局&放送開始日:FXにてシーズン1放送済み。シーズン2は2019年放送予定。
製作総指揮:ライアン・マーフィー(『アメリカン・クライム・ストーリー』)、ニーナ・ジェイコブソン(『ハンガー・ゲーム』シリーズ)、ブラッド・シンプソン(『クレイジー・リッチ』)など
出演者:エヴァン・ピーターズ(『アメリカン・ホラー・ストーリー』)、MJ・ロドリゲス、ケイト・マーラ(『ハウス・オブ・カード 野望の階段』)ら
(取材・文:明美・トスト / Akemi Tosto)