超常現象より恐ろしいものは...Netflixの秀逸作『ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス』

Netflixで配信中の『ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス』は、アメリカ人作家シャーリイ・ジャクスンの「丘の屋敷」を現代風にアレンジした作品。「丘の屋敷」は、過去2度映画化され舞台にもなっており、一部では20世紀のホラーの最高傑作といわれ、かのスティーヴン・キングも絶賛したという。

小説はアメリカで最も有名な幽霊屋敷に心霊学者一行が訪れるというものだが、今回のNetflixドラマ版ではその屋敷で一時期を過ごした5人の兄弟姉妹が主人公。彼らのそこでの恐怖体験だけでなく、成長した5人にいまだにつきまとう幼児期の記憶と過去に対峙していく様子を、恐ろしいほどに美しい映像で描く。

メガホンを取ったのは『オキュラス/怨霊鏡』で知られるマイク・フラナガン。フラナガン監督は名作『シャイニング』の続編も手掛けることになっている注目の監督だ。

幽霊屋敷に住んでいた家族の心の傷は今でも.....

物語は小説家のスティーブンのナレーションから始まる。彼は実体験を基にしたオカルト小説家だが、自らは霊を見たことがない。彼を一躍有名にした小説は、自らの家族が「丘の屋敷」で体験した恐怖をまとめたもの。しかし、家族をさらし者にし、事実を小説的にゆがめたとして、妹シャーリーを筆頭に、弟妹からは批判されている。弟妹たちは、霊感がなく、5人のなかで一番恐怖体験をすることのなかったスティーブンが自分たちの過去の苦しみを描くことで莫大な原稿料を手にし、不満があるならその金を配分してもよいと言い出したことに反発している。20年前、母親を亡くしたあの夜のことは、お金には代えられないのだ。スティーブンのなかでは、過去の事件は既に過去のこととして片づけられているのか?

しかし、兄妹の心の傷を再び開く事件が起きる。一番下の妹ネルが「丘の屋敷」で自殺したのだ。そこから残った4人は、否が応にも記憶に残る恐怖体験と再び対面することとなる。

ホラーの可能性を広げるフラナガンの手腕

『ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス』は、とにかく映像の美しさに目を見張る作品だ。最近のホラーに多い、特殊効果や飛び散る血などよりも、その美しさが背筋をぞくっとさせる。

米Varietyは、フラナガン監督のカメラワークを「効果的である」と評価している。派手でチープな方法で(視聴者を)飛び上がらせる恐怖モノが多い昨今、登場人物が目にしている恐怖体験が間接的に伝わるため、より恐ろしさを味わえると称える。また、幽霊自体が怖いのではなく、登場人物が思い出によって祟られていることを見せる手腕は、ホラーというジャンルを広げる賢いアイデアであると高評価だ。

完璧なキャスティング

このミニシリーズに高評価を与えているのはVarietyだけではない。米Hollywood Reporterは、俳優たちに焦点を当てて評する。同誌は、幽霊屋敷に引っ越したクレイン家の5兄妹を演じる5人の俳優たちの選出が完璧であると書く。個人個人として全員が素晴らしい演技をしているが、彼らが集まると意図的に個々が不鮮明となる。そこに、この物語が持つ、兄妹の不安定さが描き出されるとする。同誌は最終話にやや不満を残しているようだが、それでも、視聴者は夢中になるだろうとしてレビューを閉じ、このミニシリーズの第2弾が作られる可能性もあるとする見解を示している。

オリジナルの小説と物語がかけ離れすぎているという批評もあるが、Netflix版はドラマ版として納得して鑑賞するならば、Netflixオリジナルシリーズの中で数本の指に入る非常に秀逸なシリーズだと言えるだろう。

『ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス』はNetflixにて独占配信中。(海外ドラマNAVI)

Photo:Netflixオリジナルシリーズ『ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス』
Steve Dietl/Netflix