古く懐かしい1970年代、10人の大家族が織りなすコメディ『The Kids are Alright』

米ABCで放送中のコメディ『The Kids are Alright(原題)』は、貧しいけれど元気いっぱいに暮らす大家族の物語。お金の無さを赤裸々に告げる母親が、労働者階級の父とともに、わんぱくでケンカの絶えない8人兄弟を育てる。脚本のティム・ドイルが、1970年代の自身の少年期を振り返って書き起こしたという一本だ。

■8人を育てる肝っ玉母さん
愛情と元気だけは有り余っているが、いつになっても貧乏から抜け出せる兆しのないクリアリー家。ロサンゼルス郊外に暮らすこの一家では、やんちゃ盛りの8人の子どもたちが今日も賑やかに暮らしている。

脚本家のティム・ドイルが自身を投影する五男ティミー(ジャック・ゴア)は、自身に才能があると信じて疑わない野心的な少年。密かにハリウッドの子役オーディションに応募しようと目論んでいたところを、三男フランク(ソーヤー・バース)が、いつものように盗み聞き。あっけなく母のペギー(メアリー・マコーマック)にバラされ、計画はご破算になってしまう。肩を落とすティミーに、うちには特別なことをするお金なんて無いんだよ、とペギーから追い討ちが。しかもティミーの軍資金は、抜け目ない四男ジョーイ(クリストファー・ポール・リチャーズ)に盗まれていたと発覚。大家族での生活は、一瞬たりとも気を抜けないのだ。

■古く懐かしいあの時代
多くの可能性を感じた1970年代を舞台にした、ユーモアのセンスに溢れる作品、と米Hollywood Reporterは評価する。ノスタルジー感じる本作の中には、好きになる瞬間がたくさんあるだろう、と述べている。ABCでは古い時代を懐かしむドラマのヒットが続くが、本作もその路線を踏襲した一本だ。脚本のティムは当時を、少年期を過ごすには最高の時代で、開拓時代のように自由な時間だったと振り返る。自転車のヘルメットも車のシートベルトもまだ必須ではなかったこの時期、舞台となるロス郊外にはのびやかな空気がいたるところに漂っていた。

ティムは自身の少年時代を「貧乏な真ん中の子」だったと振り返っている。将来は大物になるのだと幼いながら気合十分だが、余分な出費を一切許さない子沢山の家庭にあって、その意気込みが実る気配はまだ感じられない。もし何かの才能があるのなら、私がとっくに気づいているはずだからね、と母のペギーさえ素っ気ないありさま。米Los Angeles Timesはティムについて、脚本家とプロデューサーとして30年にわたり活躍している人物だと紹介している。1990年代のTVドラマ『恐竜家族』や2000年代の『ビッグバン★セオリー~ギークなボクらの恋愛法則』など著名作の製作に参加。のちに数々の名作を世に送り出すことになるティムの、ごく普通の幼年期を覗き見ることができるのは興味深い。

■ひと癖もふた癖もある一家
幼くして野心家のティム以外にも、良くも悪くも強烈な個性を帯びたメンバーがクリアリー家には揃う。父マイクは厳格な性格の持ち主だが、子育てを通じて人間としての丸みを帯びてきた気配が。演じるマイケル・カドリッツについてHollywood Reporterは、『サウスランド』『ウォーキング・デッド』など数々のドラマに出演歴のある逸材だと紹介している。

母ペギーこそ作品の引き立て役だと評価するのはLos Angeles Times。彼女の考え方にはアクが強く、家族を戸惑わせることも。厳しいかと思えば意表を突いてきたり、軽蔑した次の瞬間には愛情を見せたりと、コロコロ変わる行動が魅力的だ。その口が発するセリフは、視聴者の期待の斜め上を疾走する。フランクの告げ口を褒めたり、ハリウッドに行くんだと言い張るティミーにバス代がもったいないと言い聞かせたりと、真顔で放つジョークが一家と視聴者を戸惑わせる。

素晴らしいキャストが愉快な家庭を繰り広げる『The Kids are Alright』は、米ABCで10月16日(火)より放送中。脚本家のティム・ドイルがコンサルティング・プロデューサーを務めた『ビッグバン★セオリー~ギークなボクらの恋愛法則』は、日本ではNetflix、Hulu、Amazon Primeなどで配信中。(海外ドラマNAVI)

Photo:『The Kids are Alright』
(C)ABC/Craig Sjodin