ニューヨークのモーテルを舞台に、毎週趣向を変えた密室劇が展開する米HBOの『Room 104(原題)』。2017年の7月から10月にかけて、突飛もないエピソードで視聴者に笑いと困惑を届けたコメディ・アンソロジーが帰ってきた。先月上旬から本国アメリカでシーズン2の放送が始まっている。
本作は、エピソードごとに多種多様な人間模様を描くアンソロジーシリーズ。ありふれたモーテルの104号室に連夜様々な宿泊客が訪れ、忘れられない体験をしては次の目的地へと旅立ってゆく。
シーズン2第1話「FOMO(原題)」では、誕生日を迎えた若い女性が104号室のゲストに。友人たちを招いてパーティーを楽しむはずが、姉の突然の登場で事態は思わぬ方向へ...。第2話「Mr. Mulvahill(原題)」は別の夜に同室に宿泊したある男の話。彼は小学校時代の教師に食ってかかるが、何やら打ち明けたい過去がある様子。以降も、個性爆発のラッパーが登場する第3話「Swipe Right(原題)」、意気投合した男たちの奇行を警官が止めに入る第4話「Hungry(原題)」など、奇妙なエピソード12篇が詰め込まれた新シーズンとなっている。
コメディに分類される本作だが、エピソードによっては別ジャンルに転化してしまうという実験的なスタイルを採っている。放送週によって、ダークコメディやホラー、時に感動的ドラマやミュージカルなど、バラエティ豊かなジャンルに変化する、と米JoBloは紹介。同じアンソロジーシリーズの『ブラック・ミラー』と『トワイライト・ゾーン』のいいとこ取りをしたような作品だと称賛している。
シリーズに共通する唯一のルールは、くたびれたモーテルの同じ一室で物語が起こるということだけ、と米Indie Wire。そのほかの縛りは一切なく、毎週新しいキャストとストーリーを楽しむことができる。裏を返せば、シリーズを通じて同じトーンが保証されているわけではない。先週のストーリーが良ければ今週も期待できるようなシリーズものとは違う、と同メディアは注意を促す。とはいえ、毎週フタを開けるまで何が飛び出すか分からないドキドキ感は、アンソロジーならではの魅力とも言えよう。行き先の読めない各話は衝撃的であり、夢中になるような視聴体験を与えてくれ、ほかに類を見ないタイプのコメディだと強調している。
◆シーズン2ではさらにパワフルに
破天荒だったシーズン1よりもさらに個性に磨きがかかったシーズン2。新エピソード全12話を一気に観てしまったというJoBloは、前期よりもはるかに楽しむことができたと述べている。キャストにマハーシャラ・アリ(『ムーンライト』)、マイケル・シャノン(『シェイプ・オブ・ウォーター』)などのビッグネームが揃うシーズン2は、同じ104号室という縛りを頑なに守りつつも、視聴者の予想の上を行く展開を見せてくれる。笑いと恐怖と涙を与えてくれるシリーズであり、よくあるドラマに飽きた人々にはもってこいの作品だとして、同メディアは一見を勧めている。
あえて難を挙げるなら、舞台裏を知ってしまうとパターンが見えてしまうこと。 製作のデュプラス兄弟の一人であるマーク・デュプラスは、今シーズン12話中9話の脚本を執筆または共同執筆している。それだけに、ある種のパターンを感じることがある、とIndie Wireは指摘。各話の予測不能な展開で人気を博しているだけに、パターン化は作品にとって致命的だ。ただし、どのエピソードの脚本をマーク・デュプラスが執筆したかを知らずに視聴すればこの問題は回避できるようだ。
やりたい放題のエピソードが病みつきになるアンソロジー『Room 104』は、米HBOで放送中。(海外ドラマNAVI)
Photo:マハーシャラ・アリ
(C) Z18/FAMOUS